ある日記「薬剤師の苦難」2024年11月17日
風邪をひいているときいつも「なんだかな」と思うことがある。それは薬局の待ち時間の長さだ。薬局に行って、お医者さんからもらった処方箋を提出してから、必ず長く待たされる。混んでる薬局ならまだしも、他のお客さんが見当たらないときでさえ、数十分待たされる。酷いときには一度家に帰ってから再び薬局に行った方が楽なこともある。
やることといえば処方箋に書いてある薬を探して持ってくるだけではないのか。ハリーがオリバンダーの店に杖を買いに行ったときのように、間違った薬を選ぶと周りの箱がゴトゴトと落ちてしまうというのか。僕は不思議でならなかった。
どうやら薬剤師の仕事は想像よりかなり面倒らしい。先日、同世代の薬剤師さんにお話を聞ける機会があった。僕より歳下なのに薬局の店長をやられている方だった。お話によると、処方箋を受け取ってから薬を出すまでに手続きが山ほどあるそうだ。正しい薬を選ぶことはもちろん、その薬が症状に対して効果があるか確かめ、飲み合わせなどの条件と照らし合わせなければいけない。間違った処方だと分かれば、お医者さんに問い合わせるのだという。
しかも、最近は高齢者の数が増え、薬の誤飲や飲み過ぎを防ぐために、いくつかの薬を飲むタイミングごとの小袋に入れなければならないこともあるという。月曜の朝はこれ、昼はこれ、といったように。本人や家族が気をつけるべきことを薬剤師が仕事としてこなさなければならないのだ。
さらには、東洋医学の見直しによって、生薬を配合した漢方の処方も増えた。複数の生薬を量って、混ぜ合わせ、小袋に入れるのも薬剤師の仕事だという。工程を完遂するのに四十分くらいかかるそうだ。一人の処方箋をさばくのに途方もない時間が必要なのだ。
薬剤師の仕事ぶりで気になることがもう一つあった。薬を渡されるときに細かく症状を聞かれることだ。風邪をひいているから早く帰りたくて仕方がないのに、病院でもやった問いと答えを繰り返すのは億劫だった。
これにももちろん理由があった。まずは間違った薬が処方されていないかの確認としての意味。もう一つは薬局の現状によるものだった。
薬局も営利団体だ。利益を出すことで経営を続けている。多くの利益を出すには多くの処方箋を処理しなければならない。しかし、一つの処方箋にかける時間は長くなる一方だ。そうすると、ただ薬を出しているだけでは経営が圧迫されてしまう。今や薬局は薬を出すこと以外の、例えば症状を詳しく聞いて誤処方を防ぐなどのサービスを実績として国に報告してお金を貰うしかないのだ。
つまり、僕を待たせているのは薬局ではなく国そのものなのだ。年金くらいしか自分には関係しないと思っていた日本の高齢化問題は、風邪をひいたときという弱りきったタイミングで僕を苦しめるのだ。
ここで書いた薬局の現状は僕が理解した内容なので正確だと保証はできない。それでもこれを読んだことで、薬局から薬をもらうのにとんでもない時間がかかったときにも、イライラせずに大人しく待てるようになったなら幸いだ。みなさんどうぞご自愛ください。
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