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ある日記「工藤静香と干し芋」2024年12月7日

 お金持ちになったらどうしよう。そう考えることがある。心躍る議題というよりは、悩みの種といったところだ。まあ、持ってもいないお金の使い道について悩むなんてちゃんちゃらおかしいのだけど。
 今あるちょっとした欲を満たしたあと、それでも残ったお金を正しく使うのは難しい問題だ。自分でも気付かぬうちにお金をたくさん使うことが行動原理になって、趣味が悪くなっていきそうだ。折角だから高いモノを買わないと損するような気分、つまりは裕福ゆえの貧乏症にかかってしまう気がしてならない。
 工藤静香がVOGUE JAPANのYouTubeに出ていた。普段持ち歩いているバッグの中身を紹介する「In The Bag」という企画だ。あのキムタクのパートナーで素敵な娘さんが二人もいる人が何を大切にしているのか気になった。
 大きなブラウンのバッグからこだわりの品々が取り出され、机の上に並べられていった。Christian Diorの黒いポーチにしまわれた充電コードやイヤホン、IELUという除菌ミストとそれを散布するための卓上加湿器、そして出てきたのがChristian Diorの白い巾着袋。中には飲べ物が入っているという。
 パンパンに詰められた袋から登場したのは干し芋だった。Supremeのジップロックに入れられ、一つずつラップにくるまれていた。手がべとべとになるのを防ぐために個包装にしているのだとか。干し芋がバッグの中に入っていないと落ち着かないらしい。
 次に「ちょっと変わってるんですけど」と前置いて出てきたのは、自分で抹茶を点てるセットだった。いや、待ってくれよ。干し芋は当たり前なのかよ。かっこよすぎるだろ。なんかSupremeのジップロックに入れてたぞ。僕なんかSupremeがジップロック売ってることも知らなかったのに。当たり前みたいに出してたぞ。しかもそれがChristian Diorの巾着に入れられ、巾着は一目で良い品とわかるブラウンのバッグに入れられていた。セレブのマトリョーシカだ。その核が干し芋なのかよ。すげえよ。松濤を歩いていたら下町の商店街に着いていたような、世界がひと繋ぎであることへの嬉しさを工藤静香は体現していた。
 それから出てくる品々がいちいちかっこいい。桜の懐紙なんてのもあった。季節に合わせて柄は変えるそうで、おまんじゅうなどのお菓子をみんなで分けるために持ち歩いているという。お茶の時間を最大限楽しむために、手が汚れないようにする。そんな周りへの配慮にお金を使っているのだ。
 そして極めつけはこだわりの品々を入れる大きなブラウンのバッグだ。歳の離れた友人から譲り受けたものを二十年ほど使っているらしい。バッグにはいろんなワッペンが無造作に縫い付けられていた。貰ったものだから大切に使い、自分のものだからアレンジで遊んでみる。相反するような価値観を一つのバッグで無邪気に共存させていた。
 お金によって得られるのは選択の自由だ。自由を謳歌するには、「こうした方がいい」という強制力を持った思考に縛られず、「こうした方がいいかも」という遊びのある価値観を持ち続けることが必要なのだ。「あれもこれもやっちゃえ」という姿勢はかっこいいのだ。


ライブの主催をしていて思うこと

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