考えるときの脳のメカニズム
人間は考えることができる。
これは生物の中でも唯一無二の特徴なのだが、なぜ考えるということができるのだろうか。
その脳のメカニズムについて考えてみよう。
考えるときの脳のメカニズム
まず、人間の脳は、思考や意思決定、感情、行動などを制御するための中枢神経系の一部だ。
脳は複雑なネットワークで構成されており、神経細胞が相互に接続して情報を伝達する。
考えるときに脳がどのように働くのかを理解するために、脳の構造と機能についての基本的な知識が必要になる。
脳は大きく分けて3つの主要な部分に分かれる。
その3つとは、大脳、小脳、脳幹だ。
そして、大脳が感覚情報の処理、言語の理解や生成、思考、決定、そして自我などの高次の認知機能を担当している。
また、大脳は左右2つの半球に分かれ、各半球は前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉の4つの葉状の脳区域に分かれている。
これらの脳区域は、神経細胞の層の厚さや構造の違いによって特徴付けられる。
思考が生じる場所は、大脳の前頭葉にある、前頭前野と呼ばれる部分だ。
前頭前野は情報の受け入れ、処理、そして判断に関与する。
この領域が問題解決、意思決定、判断、そして計画の作成に重要な役割を果たしているのである。
脳は、神経細胞間の電気信号と化学物質によって情報を伝達する。
神経細胞の電気信号は、シナプスと呼ばれる接合部を介して他の神経細胞に伝わる。
それから、神経細胞はこの情報の伝達を制御するために、神経伝達物質と呼ばれる化学物質を使用している。
思考が生じるプロセスは、多くの神経細胞の相互作用によって生じる。
そんな神経細胞は、複数のシナプスを介して相互に接続されており、1つの神経細胞が刺激を受けると、その神経細胞から別の神経細胞に信号が伝達される。
このように、多くの神経細胞が相互作用することによって、神経回路が形成される。
神経回路は、情報の処理と蓄積を可能にするために、脳内で非常に複雑なパターンを形成する。
なお、思考が生じる際には、脳内の神経回路が活発になり、脳の特定の領域で特定の神経活動が生じる。
神経活動の観察により、脳内での思考や判断に関与する特定の神経回路が特定されているのである。
例えば、前頭前野の活動は、意思決定や判断、そして計画の形成に関与している。
側頭葉の活動は、言語や視覚的情報の処理に関与し、視覚的情報を記憶するための一時的な領域であるワーキングメモリを制御する。
後頭葉は、視覚的刺激の処理と認識に関与している。
さらに、脳内での神経回路の活動は、神経伝達物質によって調節される。
神経伝達物質は、神経細胞から放出され、他の神経細胞に影響を与える。
神経伝達物質は、脳内の神経回路の機能を調整することによって、思考や判断に影響を与える。
最近の研究では、脳内での思考や判断は、神経回路の動的な変化によって調整されることが示唆されていることも併せて知っておくといいだろう。
特に、脳内の神経回路は、環境の変化やタスクの要求に応じて変化する。
総合すると、思考が生じる際には、多数の神経細胞が相互に作用し、神経回路が形成される。
この神経回路は、脳内で情報の処理と蓄積を可能にするために非常に複雑なパターンを形成する。
思考や判断に関与する特定の神経回路は、神経伝達物質によって調節され、脳内の神経回路は、環境の変化やタスクの要求に応じて変化する。
つまり、脳内の神経回路は、思考や判断に必要な情報処理の柔軟性を維持するために、非常に動的で柔軟なものであることが示唆されているというわけだ。
なぜ記憶できるのか?
それでは、思考した後になぜ記憶できるのか、不思議に思ったことはないだろうか。
結論から言うと、脳が情報を記憶する仕組みは、まだ完全には解明されていない。
とはいえ、いくつかの理論が提唱されている。
まず、長期記憶の形成には、脳内での神経回路の変化が必要だ。
長期記憶は、情報が一時的に保持されるワーキングメモリとは異なり、脳内の神経回路が永続的に変化することで形成される。
この神経回路の変化には、神経伝達物質や神経成長因子などの分子が関与している。
また、情報が長期記憶に保存されるためには、その情報が脳内で再度アクセスされることが必要になる。
この過程には、情報の再活性化や再活性化に関与する神経伝達物質が関与すると考えられている。
さらに、記憶の形成には、脳内でのシナプス可塑性と呼ばれる現象が重要な役割を果たしている。
シナプス可塑性は、脳内の神経回路の変化を誘導する機構であり、情報の取り込みや保存、再生に重要な役割を果たしている。
具体的には、長期記憶の形成には、神経細胞間のシナプスの結合強度が変化することが必要なのだ。
そして、この変化には、神経活動や神経伝達物質が関与している。
さらに、新しい情報が古い情報と関連づけられることで、記憶が強化されることもある。
総合すると、脳が情報を長期記憶に保存するためには、神経回路の変化やシナプス可塑性、神経伝達物質などの多様な要素が複雑に絡み合っているこということだ。
ただし、脳内での記憶の形成に関する研究はまだ進んでおり、今後の研究によってそのメカニズムがより詳細に解明されることが期待されているのが現状だ。
記憶力を高める方法
記憶のメカニズムについては上述したとおりだが、人間の記憶力は人によって異なるとはいえ、驚くべき容量があるといわれている。
記憶には、短期記憶と長期記憶があり、短期記憶は限られた容量しか持たず、長期記憶に移行することで、より多くの情報を保持できる。
また、短期記憶には、約7個前後のアイテムを保持できるという、ミラーの法則という心理学の理論がある。
例えば、電話番号や住所を覚えるときには、この法則を超えないようにしなければいけない。
一方、長期記憶には、ほとんどの人が数百から数千の情報を保持することができる。
また、特定の分野で専門家となった人々は、数万から数十万の情報を保持することができることが知られている。
それでは、記憶力を高めるにはどうすればいいのか。
その一部を紹介していこう。
運動は脳に酸素や栄養素を供給するために必要な血流を増加させ、脳の神経細胞の成長や結合を促進する。
運動をすることで、脳の機能を改善し、記憶力を高めることができる。
睡眠は脳の回復や再構築に必要な時間だ。
睡眠中には、脳が記憶を整理し、長期記憶に保存するために重要な役割を果たす。
十分な睡眠をとることで、記憶力を高めることができる。
新しいことを学ぶことで、脳の活性化を促し、神経細胞の結合やシナプスの形成を促進する。
新しいことを学ぶことで、脳が柔軟性を維持し、記憶力を高めることができるというわけだ。
記憶のヒントを利用することで、記憶を効果的にアクセスし、復元することができる。
例えば、単語を覚えるときには、その単語に関連するイメージを思い浮かべることで、より長期的に覚えることができる。
絵を描いたり、マインドマップを作成することで、脳の視覚的な情報処理能力が活用されると、記憶を整理しやすくなる。
また、視覚的なアプローチは、脳の想像力を刺激し、長期的な記憶を促進することができる。
ストレスは、脳の神経細胞の成長や結合を妨げることがある。
ストレスを軽減することで、脳の機能を改善し、記憶力を高めることができる。
まとめ
かつては、人間の脳のほとんどが使用されていないという俗説があったが、これは誤りだといわれている。
現代の研究によれば、人間の脳はあらゆるタスクや課題を処理するために、様々な部位を活性化させているというのが通説だ。
一方で、特定のタスクにおいて、特定の部位がより強く活性化することが知られている。
例えば、視覚情報を処理するためには、視覚野と呼ばれる部位が活性化する。
言語処理においては、ブローカ野とウェルニッケ野と呼ばれる領域が重要な役割を果たしている。
ただし、脳の活動は様々なタスクや課題において、複数の部位が同時に活性化されることが多く複雑な相互作用がある。
つまり、人間の脳が実際に使用している部分の比率は一概にはどのくらいという表現が難しい。
このことから、脳のほとんどが使われていないという言われ方をしてきたところがあると言うわけだ。
いずれにせよ、この考えるという特性は人間に与えられた唯一無二のところであることに変わりはない。
せっかくならば、考えるだけでなく行動することも同時にしていきたいところだ。
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