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世界各地で記録更新している2022年夏の気温

口角飛沫(こうかくひまつ)
→ 激しく議論するさま。

どこにいっても暑いという声を耳にするようになった、2022年の夏真っ只中。

気象情報を拾いに行くと、猛暑日とか熱帯夜というワードが常に飛び交っている。

ちなみに、夏の暑い日を表現するパータンは下記のとおりだ。

  • 夏日:最高気温25℃以上の日

  • 真夏日:最高気温30℃以上の日

  • 猛暑日:最高気温35℃以上の日

  • 熱帯夜:最低気温25℃以上の日

熱帯夜だけが最低気温が基準になっており、もはや毎日どの基準もクリアしているような日が続いている印象だ。

世界各地で破られている気温の記録

2022年3月〜5月にかけて、インドとその近隣諸国は度重なる熱波に見舞われ、10億人以上が危機的な猛暑にさらされた。

インドでは、2022年に入って史上最高気温が何度も更新されている。

2022年3月の気温は同月比で100年以上振りの高い数値となり、2022年5月には首都デリーが49℃を超えた。

この次々に破られている最高気温の記録更新が起きているのは、なにもインド周辺だけではない。

イギリスでも史上最高気温を1.6℃も更新し、40℃を超える日があった。

そもそもロンドンなどの都心部には暖炉のような暖房器具はあっても、冷房といったエアコンが設置されている家がないところが多く、暑さを凌ぐのに苦労しているという。

また、ポルトガルでも2022年7月21日に47℃という7月としては記録的な暑さとなっている。

さらに、フランスでも数ヶ所で最高気温が観測されるという、ヨーロッパでも記録的な暑さが続いている状況だ。

こういった状況から、人がどこまで気温の上昇に耐えられるのかという議論が再燃しているという。

とはいえ、猛暑が人間に与える影響は、単純に気温だけでは測れない。

なぜなら、そこでは考慮されていない、湿度が、実際の暑さの感じ方に大きな影響を与えるからである。

暑さを感じる湿度という存在

暑さを感じるのに湿度という存在が大きく影響しているということは日本に住んでいる人ならなんとなく理解できるだろう。

日本は比較的湿度が高い国なので、湿度の高いときに不快な気持ちになるという経験をしたことがあるという人も多いからである。

そして、最近の研究により、世界のいくつかの場所は、人間が一定期間生存できる気温と湿度の限界値に近付いていることがわかってきたというのである。

この気温と湿度の両者を取り入れた指標を、湿球温度(WBT)と呼ぶ。

湿球温度(WBT)とは、乾燥した空気の温度、つまり一般的な温度計に表示される気温と湿度を組み合わせたものであり、高温が人体にもたらす影響を測る指標をいう。

日本では、暑さ指数とも呼ばれている。

それから、湿球温度という名称は、その測定法に由来している。

温度計の感部である球部を濡れた布で包むと、布から蒸発する水分が温度計を冷やす。

このときの低くなった温度が湿球温度であり、湿球温度は乾燥時の温度、つまり乾球温度を上回ることはない。

ところが、湿度が高く周囲の空気が水蒸気で満たされているほど、布から蒸発する水分が少なくなるため、湿球温度は乾球温度に近づくというわけだ。

人が身体を冷やすことができる基準

上述した湿球温度を測れば、その環境で汗をかくことによって、人がどれくらい身体を冷やすことができるのかがわかるという。

そう唱えるのは、気候科学者であるクリスティーナ・ダール氏である。

そして、人の体温に影響を与える要素としては、気温と湿度以外にも日射量や風速などがある。

とはいえ、熱中症で死者が出やすい室内環境の指標としては、さしあたり湿球温度が特に重要だと語っているのは、ペンシルベニア州立大学の生理学教授のW・ラリー・ケニー氏である。

それでは、湿球温度はどのくらいになると危険なのだろうか。

その答えは、一般的に健康な人が6時間しか生存できない、人間にとっての限界値は、気温40℃、相対湿度75%にほぼ相当する湿球温度35℃だと考えられている。

ちなみに、イギリスの気温がピークを記録した2022年7月19日の相対湿度は約25%、湿球温度は約25℃だった。

人間は汗をかくことで体内の温度を調節しているが、室温が湿球温度以上になるとこの方法では体を冷やせなくなり、体温がどんどん上昇する。

この状態が長く続くと、体温が生存可能なレベルを突破して臓器が機能しなくなる可能性があるという。

注目したいのは、上述したペンシルベニア州立大学の生理学教授のW・ラリー・ケニー氏の論文だ。

その内容は、人の身体が耐えられる実際の温度は、もっと低い可能性があることがわかったという衝撃的なものだ。

人間にとっての限界値である湿球温度35℃というのは、2010年に行われた理論的研究に基づくもので、全く異なる結果が出たというのである。

その研究で実際に被験者から集めたデータは、人間にとっての湿球温度の限界値が31.5℃に近いことを示しているそうだ。

となると、全く話が変わってくるという事実を知っておいた方がいいだろう。

科学者たちの湿球温度予測

となると、湿球温度が限界値を超える可能性がある地域がどのあたりなのか気になるところだろう。

世界的に見れば、イギリスは比較的リスクの低い地域で、これまで湿球温度が28℃を超えたことはほとんどないという。

とはいえ、今世紀の21世紀後半に31℃に達することは、大いにあり得るという科学者の予測が出ている。

また、2015年に発表されたある論文では、温室効果ガスの排出が抑制されなければという条件での予測が出されている。

それは、今世紀末にはアラビア湾の周辺地域で、湿球温度の最高値が35℃に近づくか、もしくは突破する可能性があるというものだ。

それから、2020年に亜熱帯地域の沿岸部では数時間とはいえ、すでに湿球温度35℃を記録していることも別の研究で明らかになっている。

さらに、世界各地で湿球温度が30℃に達した回数が、1979年〜2017年の間に倍以上になったことも明らかになっている。

パキスタン、インド、サウジアラビア、メキシコ、オーストラリアでは、湿球温度31℃が約1,000回、35℃を超えるものも10回以上発生しているのである。

住めない場所が増えていく可能性

重要な論点の1つは、気候変動による気温上昇と湿球温度の最高値の相関関係だ。

2021年の研究では、平均気温が1℃上昇するごとに、熱帯地方の湿球温度の最大値が1℃上昇することが判明している。

これは、世界の気温上昇を産業革命前から1.5℃以内に抑えれば、熱帯地域の大部分が、生存可能ラインの湿球温度35℃に達するのを防げることを意味している。

ちなみに、熱帯地域には世界人口の40%が住んでいる。

とはいえ、気候変動の影響で熱波の被害は急速に拡大している。

科学者たちは、気候変動によってインドとパキスタンでは熱波が30倍も起きやすくなったという。

今日の最悪レベルの熱波が産業革命以前の気候でも発生し得たかどうかを問うことは、もはや急速に意味を失いつつあるという指摘もある。

代わりに問うべきは、熱波の影響に対してどのような手が打てるのかということだというわけだ。

高温と高湿度が混在する危機的な現象が世界中で頻発するようになれば、暑すぎて住めない場所がいくつも出てくるからである。

まとめ

真夏日とか猛暑日といったワードは聞き慣れた人も多いと思うが、湿球温度という言葉は初めて聞いたという人も多いのではないだろうか。

単純に気温だけでなく湿度が人間が生活するに当たっての限界値を導き出すのに重要になるということが理解できただろう。

住む場所が当たり前にあることが当たり前ではなくなる可能性があるということを知っておく必要があるとは思う。

けれども、だからといって1人1人になにができるというのだろうか。

これが自然という巨大なテーマに関する私の正直な感想であったりもするのである。


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株式会社stakは機能拡張・モジュール型IoTデバイス「stak(すたっく)」の企画開発・販売・運営をしている会社。 そのCEOである植田 振一郎のハッタリと嘘の狭間にある本音を届けます。