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糸の直径が0.5mmあれば60kgの人間が吊れる蜘蛛の天敵とは?

横行闊歩(おうこうかっぽ)
→ 大手を振って歩くさまで、悪人が大威張りで横行するたとえ。

威張り散らすという印象を与えるのは、人によるというところが大きいだろう。

同じ行動をとったとしても、そう思われない人もいるということである。

単純に受け取る側の感情によって、威張っていると捉えられるか、そんな態度でも許容できるかということだ。

極端な話をすれば、制圧するのか、あるいは制圧されるのかの違いにも似ているように思う。

ただそれは、別に人間界に限ったことではなく生物において同様な場面もあるようだ。

頑丈な蜘蛛(クモ)のポテンシャル

「クモを薬漬けにし死ぬまで働かせるハチ」の驚嘆

(東洋経済オンライン)

クモの糸などで人が吊れるというと、不可能だという印象を持つかもしれない。

ところが、実際にクモがつくる糸は現代の化学的に合成した高強度繊維に匹敵する強靱さを備えている。

防弾チョッキなどに使われるケブラー繊維は同じ重さの鋼鉄の5倍も強いとされている。

実は、クモの糸は断面積あたりの強さでこのケブラー繊維に匹敵し、計算上、糸の直径が0.5mmあれば体重60kgの人間を吊り下げることができるのである。

クモは用途に合わせて複数の糸をつくり出す。

強靱な糸、粘着性のある糸、弾力性のある糸等々、さまざまな性質や太さの糸を巧みに使いわける。

例えば、ジョロウグモなどがつくる車輪のような形をした網を円網(えんもう)というが、放射状に張られた縦糸には巣を支える働きがあり、粘着性がなく非常に強靱だ。

一方、渦巻状に張られている横糸は、弾力がありベタベタする粘着球が無数についていて、獲物をキャッチすることができる

不運にも網にかかった獲物は、糸でぐるぐる巻きにされる。

このときの糸は直径1,000分の1ミリにも満たない極細糸で、ジョロウグモは一度に100本あまりを出して素早く獲物を包み込むのである。


なにもクモは巣をつくるだけではない。

種類によっては、軽くて長い糸を気流に巻きとらせて空を飛ぶ、バルーニングを行うクモすらいるのである。

繭をつくるチョウ目の昆虫など、一時的に糸を使う生き物はいるが、クモほどその生涯に渡って糸を使いこなすものはいない。

現在、クモはおよそ4万種が確認されていて、動物としては昆虫とダニ類に次いで3番目に多様な勢力である。

糸と網を持ったことが、クモを地球上のさまざまな環境に適応させ、しかも強力な捕食者としての地位を確立させたといえるだろう。

蜘蛛(クモ)の天敵クモヒメバチとは?

そんな糸の使い手であるクモを出し抜いて利用し、ただ死ぬよりもひどい運命にたたき落とす生物がいる。

それが、クモヒメバチの仲間だ。

クモヒメバチはクモに寄生するハチである。

寄生といっても、ほとんどが最後には宿主を殺してしまうので、その性質は捕食に近く、捕食寄生と呼ばれる。

クモヒメバチの雌は、宿主となるクモを発見すると産卵管を刺して一時的に麻酔をし、動かなくなったクモの体表に卵を産みつける。

数日後に卵からふ化した幼虫は、クモの腹部に開けた穴から体液を吸い上げて成長していくが、すぐには宿主を殺さない。

クモは幼虫を背負った状態で普段どおりに網を張り、餌を捕まえて食べる生活を続ける。

クモは自然界における強力なハンターであり、また、網という堅牢な要塞を構えているため、襲ってくる生き物はそう多くない。

クモヒメバチの幼虫は、そんなクモをボディガードとして利用し、自らもその恩恵を受ける要塞のメンテナンスをさせるために生かしておくのだ。


このように、宿主に一定程度の自由な生活を許す寄生バチは、飼い殺し寄生バチとも呼ばれる。

ただし、宿主を生かしておくのは、あくまでも自分にとって都合がいいからで、用済みになれば容赦なく殺してしまう。

クモヒメバチの場合、幼虫がいよいよ繭をつくって、さなぎになろうというタイミングで宿主の体液を吸い尽くして殺す。

しかも、命を奪う直前に最期のひと働きまでさせるものもいる。

殺す直前のクモを操って、安全にさなぎとなって羽化をするための、特製ベッドをつくらせるのである。


クモが普段張る網は飛翔昆虫などを見事に捕らえるが、そのぶん繊細で壊れやすいという欠点もある。

だから、クモは常に網のメンテナンスをしているのだが、この管理人が死んでしまった網ではハチは羽化するまでのあいだ繭の安全を維持できない。

そこで、クモヒメバチの幼虫は宿主を殺す前に操り、メンテナンスがされなくなってもしばらくは風雨などに耐えられる丈夫な網を作らせるのだ。

この寄生虫が宿主を操作してつくらせる網のことを、操作網という。

クモヒメバチが宿主につくらせる操作網の構造や機能は、種によって様々だ。

例えば、ニールセンクモヒメバチという体長7mmほどのハチが宿主のギンメッキゴミグモを操ってつくらせる網は、クモが通常脱皮する際に張る 、休息網という網と形状がよく似ている。

そして、クモ本来の休息網よりもずっと頑丈なのだという。


ちなみに、休息網にも操作網にも粘着糸はなく、本数の少ない縦糸に繊維状の装飾糸がついている。

この装飾糸には紫外線を反射する性質があり、紫外線を見ることができる鳥や昆虫などが、不用意に網に衝突しないようにする働きが期待できる。

この操作網という特製ベッドのおかげで、クモヒメバチの幼虫は宿主が死んだ後も空中にとどまり続け、アリなどの外敵を避けながら羽化までの時間を安全に過ごせるのだ。

まとめ

ベッドメイキングを強いられるクモには、クモヒメバチの幼虫からなんらかの化学物質が注入されており、その作用によってクモが特定の状況下で行う網づくりが誘発されているらしい。

研究者が操作を受けた後のクモから幼虫を取り除くと、クモは徐々に正気を取り戻し、やがて元のような円網を張るまでに回復したというのである。

おそらく体内の薬物濃度が下がったからだろう。

薬漬けの悪夢から醒めたクモということになるが、洗脳するという制圧に弱肉強食の世界を見ることができる。

生物とは本当に不思議な力を持っている。


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植田 振一郎 Twitter

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株式会社stakは機能拡張・モジュール型IoTデバイス「stak(すたっく)」の企画開発・販売・運営をしている会社。 そのCEOである植田 振一郎のハッタリと嘘の狭間にある本音を届けます。