絶体絶命からのV字回復を成し遂げた企業
良いときもあれば悪いときもある。
そんなことは当たり前といえば当たり前なのだが、それはプライベートであっても企業であっても同じことがいえる。
そして、悲しいかな、いいときは多くの人がついてくるものだが、悪い状況になれば一気に人がいなくなっていくものだ。
とはいえ、もうダメだと世間から思われた絶体絶命のピンチから、踏み留まってV字回復を成し遂げることができた企業も多々ある。
ということで、どん底から見事にV字回復を成し遂げた企業事例を紹介していこう。
日産自動車の復活劇
日本経済のバブル崩壊とともに販売台数が減り始めた日産自動車は、1999年にフランスの自動車メーカーである、ルノーの傘下に入ることになった。
そこで、CEOに就任したのが、当時ルノーの副社長であったカルロス・ゴーンだ。
日本でもいろいろと話題になったことで記憶している人も多いとは思うが、カルロス・ゴーンが目標設定の明確化と徹底した現場主義などにより業績回復に導いた事実は忘れてはいけない。
1999年の日産自動車は瀕死の状態だった。
かつては人気車種もたくさんあり、売上も好調だったのが嘘のように、社員の士気もこれ以上ないというほど落ち込み、2兆円という巨額の有利子負債を抱えていた。
そして、上場企業としては史上ワースト記録となる6,844億円というとてつもない額の赤字を計上した。
そんな状況を変えたのが、カルロス・ゴーンだ。
彼は、日産自動車に入社すると早々に各セクションから若手のエース級社員200人を集め、部署を横断して日産の問題点を洗い出した。
そして、わずか3ヶ月で作り上げたのが、日産リバイバルプランだ。
その内容は、下記のとおりだ。
2000年度に連結当期利益の黒字化を達成
2002年度に連結売上高営業利益率4.5%以上を達成
2002年度末までに自動車事業の連結実質有利子負債を7,000億円以下に削減
カルロス・ゴーンは、ただただこの大胆な3つのミッションを掲げたわけではなく、強烈なトップダウンのもと、すべて1年前倒しで達成した。
その結果、日産自動車は、2002年度に連結売上高営業利益率10.8%を達成し、自動車事業実質有利子負債0も実現した。
日産180計画も、見事にその目標を達成したのである。
良品計画の復活劇
良品計画は、ファンも多い無印良品ブランドを展開する企業だが、2001年〜2003年にかけて業績が悪化したという過去を持つ。
そのスコアは、2001年は営業利益が前年同期比13.8%減、2002年は売上高は増加したものの、営業利益は52.4%減と大幅な減益というものだった。
2003年には、好調だった売上高が前年割れの4.0%減となった。
そこから、無印良品は消費者と協働して商品を開発する戦略へと舵を切った。
特に消費者のニーズにあった商品を提供すべく、消費者の声を商品開発に反映する、モノづくりコミュニティーのプロジェクトが功を奏した。
すると、売上高は2003年から2016年まで一貫して増加していて、営業利益も増加傾向を示しており、見事に低迷していた業績をV字回復するに至った。
ちなみに、良品計画の2016年3〜8月期連結決算は、売上高は9.7%増の1,617億円、営業利益は22.9%増の197億円と大幅な増収増益となっている。
また、海外の無印良品も好調で、海外ではすっかりMUJIブランドが定着しつつある。
リンガーハットの復活劇
長崎ちゃんぽんや皿うどんを主力メニューとして展開しているリンガーハットは、2009年に過去最大の24億円の赤字を計上した。
その要因は、外食産業全体の低価格競争の波に巻き込まれ、人件費を削ったことでサービスの質を落としたことにあるという。
ブランド力の低下が2009年に過去最大となる24億円の赤字を計上するという結果になったのである。
そこで、復活をすべく生み出された新メニューが、100%国産野菜をウリにした、野菜たっぷりちゃんぽんである。
野菜たっぷりちゃんぽんは、国産野菜7種類を480グラム使っており、柚子こしょうドレッシングをかけて食べる。
すると、野菜がたくさん取れると女性を中心に人気が爆発した。
カロリーを気にする女性客から、麺抜きにしてほしいとの要望を受けて、さらに新メニューの野菜たっぷり食べるスープを加えた。
健康志向の高まりも追い風となって、野菜たっぷりのメニューが女性客を中心に火がつくと、見事にV字回復を実現した。
2016年の売上高は、前期比3.5%増の395億円、営業利益は15.9%増の26億円と過去最高のスコアを達成している。
日本航空(JAL)の復活劇
記憶に新しい人も多いと思うが、日本航空(JAL)は、2010年に会社更生法を申請し、経営破綻した。
2008年のリーマンショックを契機とした不況の影響による乗客の減少、燃料費の高騰、組織の肥大化などが要因とされている。
そんな日本航空(JAL)の再建に白羽の矢が立ったのが、京セラ(現在のKDDI)の創業者である稲盛和夫会長だ。
そして、徹底的なコスト削減、大幅なリストラなどによる経営のスリム化を実施することを決断。
まず、各本部の調達部門を1ヶ所に集めて、調達本部として組織し直し、お付き合いのあった業者さんに頭を下げにいってもらったという。
日本航空(JAL)は再生に向けて今が苦しいときなので、業者の皆さんも是非我々をを助けていただきたいと言って回らせたそうだ。
それに対して、業者の方々は快く引き受けてくれて、本当に必要なものだけ購入するという当たり前のことを徹底させたことで、V字回復を達成した。
その後、2012年には東証一部に再上場を果たしている。
ジャパネットたかたの復活劇
テレビ通販番組といえば、ジャパネットたかたといっても過言ではないポジションを築いているが、2012年には2年連続で大幅減収したという過去がある。
売上の6割を占めていたテレビの販売が激減したのである。
地上デジタル放送に伴うテレビの買い替え特需の反動で、テレビの売上がピタリと止まった。
2010年のピーク時に月間200億円以上の売上があった薄型テレビが、10億円程度しか売れない月もあった。
カメラ機能を搭載したスマホに食われて、デジタルカメラやカーナビも大苦戦した。
2011年12月期の売上高は1,531億円、さらに2012年同期には1,170億円まで落ち込んだ。
2年連続の大幅減収となり、創業以来最大の危機を迎えたのである。
そこで、ジャパネットたかたは、守りではなく攻めに出た。
掃除機や調理家電、ウォーキングシューズなど、これまで扱ってこなかった商材を積極的に取り入れた。
そして、2012年8月には東京の港区に東京オフィスを開設して東京に本格進出をした。
東京を拠点にケーブルテレビやインターネット通販のテコ入れを行い、新聞折り込み、携帯電話向けサイトなども活用した。
こうして、不退転の決意で臨んだ2013年12月期は売上高は1,423億円を達成。
経常利益は153億円で過去最高益を更新した。
さらに、2014年同期の売上高は前期比8%増の1,538億円、経常利益は13%増の174億円と最高益を達成というV字回復を見せた。
ゼンショーの復活劇
すき家やなか卯などを展開し、誰もが一度は使ったことがあるであろう、日本最大手の飲食チェーングループがゼンショーだ。
記憶に新しい人もいると思うが、そんなゼンショーは深夜のワンオペレーション、人手不足問題により閉店や営業時間短縮を余儀なくされていた。
その結果、2014年4~12月期の連結決算で、25億円にものぼる巨額の純損失を出した。
ネット上でやり玉にあがり、閉店を余儀なくされる店もあったが、外国人の積極採用で人手不足を徐々に解消させた。
すき家は牛丼やカレーのバリュエーションで勝負しており、ファンの獲得もしっかりと行ってきた。
すると、2016年3月期には、純利益40億2,600万円と前年の大幅な赤字からV字回復を成し遂げた。
すき家では、New Valueをコンセプトとした牛丼の商品設計を見直し、具材をボリュームアップさせるとともに、並盛の価格を値上げ。
さらに、牛丼とサイドメニューとのセットを充実させ業績アップに繋げている。
まるか食品
ペヤングという商品名を聞けば、ピンとくる人がほとんどだろう。
そんなペヤングを展開する、まるか食品が最大の苦境に陥ったのは2014年の異物混入事件だ。
事件発覚後、9日後の2015年1月11日には全商品の販売中止と自主回収を決めるというスピード対応を見せた。
そして、社長自ら小売店へお詫び行脚を行なった。
販売中止の間、社長は自ら工場に来て仕分けを率先して行ない社員を鼓舞するほか、社員の解雇も減給も行なわないなどモチベーションの維持にも努めたのだ。
なによりも、ペヤングの工場は徹底した危機管理を行うべく超絶ハイテクに生まれ変わったのである。
こうして、2015年の販売再開後、6月時点で即席カップめん分野での国内シェア1位を獲得した。
それまで絶対王者だった日清食品のカップヌードルを抜くという、見事なV字回復を見せた。
まとめ
7社の誰もが知っているであろう企業の復活劇を紹介したが、いかがだろうか。
冒頭に書いたとおり、人生と同様に企業も当然、良いときもあれば悪いときもある。
そして、V字回復を達成したときには、必ずといっていいほど崇められる経営者も出てくる。
企業を良くするのも悪くするのも、やはり経営者と呼ばれるトップにかかっている、強烈なリーダーシップが必要だということがよく理解できる。
そして、立て直すということは、言葉にすると簡単だが、実際にはそこにいる人たちの協力がなければ成立しないということも、また然りだ。
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