Metaに社名変更した元Facebookを支えたサンドバーグCOO退任
男性とか女性とか性別で物事をわけるのはナンセンスだという考え方は、もはや当たり前になっている。
もちろん、私も男性とか女性でなにかをわけることに意味などないと思っている。
けれども、ビジネスの世界では、まだまだ平等ではない部分があるのもまた事実である。
とはいえ、グローバル企業として名を馳せている企業は、少なからず抜きん出ているように思う。
そんな中、2022年6月1日に世間を賑わせたニュースがある。
アメリカのMeta(旧Facebook)プラットフォームのシェリル・サンドバーグ(Sheryl Sandberg)COO(最高執行責任者)が、自身のFacebookへ投稿した内容だ。
彼女が2022年の秋にMetaのCOOを退任する意向を示したことが明らかになったのである。
誰だか知らなくても勘の良い人であれば、彼女という言葉ですぐに気づいたと思うが、サンドバーグ氏は女性だ。
Facebookを支えた1人の女性シェリル・サンドバーグとは?
シェリル・サンドバーグCOOは、マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)CEO(最高経営責任者)と共に、世界最大のSNSであるFacebookを支えてきた人物だ。
クリスマスパーティで最高経営責任者であるマーク・ザッカーバーグ氏と知り合い、2008年3月にFacebookのCOOに就任し、14年間COOを務めてきた。
サンドバーグ氏のキャリアは、Googleで広告事業を立ち上げている。
初の女性取締役としてソーシャルメディア大手では、ユーザのプロフィールやユーザ活動から収集したデータを通じ、企業がユーザをターゲットにするための広告事業を監督していた。
さらに、営業、マーケティング、人事、コミュニケーションなど幅広い業務を統括しており、Facebook(Meta)での功績は計り知れないものがある。
シェリル・サンドバーグの功績
5年間。
それは、シェリル・サンドバーグがFacebook(現在のMeta)のCOOとして、そしてマーク・ザッカーバーグのパートナーとして2008年に入社した際に、彼女が過ごすと予想していた期間である。
それだけの時間があれば、上から目線の会社のカルチャーを持続可能なものへと変え、広告ビジネスを大成功へと導き、アメリカの首都で政策活動を立ち上げるには十分だろう。
それに、企業の女性幹部の模範を世界に知らしめることもできる。
その上でFacebookを去る。
あとは公職に立候補してもいいし、ディズニーのような巨大企業を指揮してもいい。
シェリル・サンドバーグがFacebookに入社したときには、そんな見られ方だった。
ところが、現実に彼女は、14年後の6月1日まで退社を宣言することはなかった。
サンドバーグのような意欲的な企業人にとって、14年もトップではない同じポストにいることはあまりにも長すぎる。
もっと早く退社するだろうというのが大勢の見方だった。
絶えることのないプライバシーやコンテンツ管理の問題で会社の評判が失墜し、退社を余儀なくされるか、そうした問題を常に弁護しなくてはならない状況にウンザリするだろうと思われていた。
そんな大方の予想を裏切り、彼女は長い間、Facebookに留まり、しまいには社名も変更されてしまった。
だから、彼女が1,529の単語からなる華やかな別れの挨拶を書いたとしても、それを否定できる人などいないはずだ。
最期のFacebookフィードへの投稿という誠意ある対応も称賛されている。
そこには同僚への感謝の言葉が溢れ、Facebookがユーザや中小企業の経営者にもたらしたあらゆる恩恵について誇らしげに語られている。
それから、サンドバーグは、ポーランドの駅でぬいぐるみを売っていた女性のことまで語っている。
今回の挨拶文も、これまで彼女が手がけてきた広報活動と同様に入念に練られていた。
その内容の素晴らしさは、Facebookが今や世界で最も評判の悪い会社の1つであることを忘れてしまいそうになるほどだ。
それでも退任のニュースが非難されているのは、サンドバーグの前向きな退任の挨拶ではなく、CEOである、マーク・ザッカーバーグ氏の別れの作法に原因があるとされている。
マーク・ザッカーバーグCEOとの取り決め
サンドバーグCOOがFacebookで過ごした時間は、入社時にザッカーバーグCEOと交わした、ある取り決めに常に縛られてきたという。
2008年の時点で23歳だったマーク・ザッカーバーグCEOは、会社の特定の部分について彼女に絶大な権限を与えていた。
それは、プロダクト以外の分野で、ザッカーバーグの関心が最も低い部分である広告の分野だ。
結果として、Facebookの評判を下げることに直結した広告の販売を担当させたことは、理にかなっていた。
取り決めに従い、広報やロビー活動、ポリシー策定をはじめとするエンジニアリング以外の分野も全てがサンドバーグCOOの担当となった。
ある時期には、CISO(最高セキュリティ責任者)が顧問弁護士に報告を上げ、その弁護士がサンドバーグ氏に報告するということもあったという。
2016年のアメリカ大統領選挙のあとに大混乱が起きると、彼女が担当していた問題が徐々にザッカーバーグ氏に伝わっていった。
その結果は悲惨なもので、ザッカーバーグ氏は後日、取り決めは間違いではなく、必要なものだったと説明していた。
彼は、そうした分野で実際の経験がなかったので、会社経営のあらゆる面を自分で吸収することは不可能だった、つまりサンドバーグCOOに一任していたと語っている。
ザッカーバーグCEOは6月1日の投稿のなかで、退任するサンドバーグCOOにしかるべき感謝と賞賛をたっぷりと述べている。
その一方で、ザッカーバーグは企業としての大幅な軌道修正について語っている。
Facebook、現在のMetaの組織改革
最初の大きな変化は、ザッカーバーグCEOが2021年にポリシー策定と広報の仕事を上級副社長のニック・クレッグに委任したことだった。
クレッグ氏は、それまでサンドバーグCOOの下にいた人物である。
CLO(最高法務責任者)のジェニファー・ニューステッドも、ザッカーバーグの直属となった。
ザッカーバーグCEOは、6月1日のコメントでサンドバーグに賛辞を送る一方で、彼女が統括していた組織を解体し、自分の管理が行き届くようにしたのである。
人事部長のロリ・ゴーラーも彼の直属となり、それによってCDO(最高多様性責任者)のマクシン・ウィリアムズもザッカーバーグの部下となっている。
ザッカーバーグCEOは、それらの大部分はサンドバーグCOOが採用した人材であり、そうした企業的責任を負えるのは彼女のような、スーパースターだけだと適切なコメントをしている。
それにも関わらず、サンドバーグCOOとの関係は持続不可能なものだったというのである。
Metaはすべての事業や経営機能をプロダクトと別々に配置するよりも、プロダクトや事業部門をより緊密に統合するほうが合理的なポイントに到達していると語っているのだ。
ここに先述した、取り決めの最期の痕跡を見てとることができる。
シェリル・サンドバーグCOOが辞められなかった理由
そもそも、2008年に入社した際、サンドバーグ氏は新規株式公開(IPO)が成功したら退社し、できれば公職に立候補するつもりだったといわれている。
そして、Facebookが真の巨大企業であると認められる頃に、夫のデイブ・ゴールドバーグ氏が突然死するという悲劇に見舞われている。
上院議員の席を狙っていた彼女だが、タイミング悪く獲得することもできず、2016年の騒動に繋がるというわけだ。
そういう意味で彼女自身は運がなかった部分があるのかもしれない。
まとめ
FacebookからMetaに変更してから、世間から否定的な意見ばかりが目立つ。
企業とは不思議なもので、立ち上げ時期や悪い時期には案外一枚岩となって進む傾向がある。
反対に上手くいっているときや、上手くいった後には大きく乱れる場合がある。
とはいえ、Metaは想像もつかないくらい巨大なグローバル企業だ。
今後も、マーク・ザッカーバーグCEOの手腕に注目していくことは間違いない。
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