スタコネ Start-up's Voice|pickupon|小幡代表へインタビュー
『スタコネ』は、「スタートアップ」と「スタートアップを支援するサポーター」をつなぐプラットフォームです。
2023年8月にローンチし、たくさんの方にサービスに興味を寄せていただいております。日々『スタコネ』をご案内させていただく中で、「どんなスタートアップ企業が登録されているのか知りたい!」という声を頂戴することが多いので、『スタコネ』に掲載し、サポーターとマッチングされた企業様について、代表者様へのインタビュー形式でご紹介したいと思います。
営業の仕事は「入力」ではない!AIが通話内容を自動要約・自動入力。顧客のリアルな声を組織に展開
1.『pickupon』ってどんなサービス?
『pickupon』はAIを搭載したクラウドIP電話サービスです。企業のセールスやCSの担当者が電話で顧客と会話した内容を、AIが自動で要点を整理してシステム上に記録、社内で共有し活用することができるサービスです。担当者と顧客の電話内容がCRM・SFAなどのワークプレイスへ自動的にシェアされることにより、営業の架電シーンにおける入力漏れを防ぎ、入力コストを削減、営業活動のブラックボックス化問題を解決します。
『pickupon』は2019年9月のサービス開始以来、インサイドセールスチームを抱えたSaaS企業に多く導入いただいてきました。現在は企業のCS部門や従来型のオフラインでの営業組織を抱える企業での採用実績も増えてきています。
2.『pickupon』を開発したきっかけ
私のバックグラウンドをお話しすると、ヒューマンコンピューターインタラクションという領域の研究をしておりました。具体的に言うと、ユーザーインターフェイスはどうあるべきか、情報はどうようにやり取りされるのか、など情報やメディアの扱い方の研究です。そういった分野に携わる中で、前職では、開発者やデザイナーを集めて、サービスのディレクションを行う機会が多くあり、そのミーティングで私がファシリテーションしながら自ら議事録をとる、ということをしていたんですね。そしてふと気づいたんです。自分たちは、音声をミーティングの場に入力している、そしてまたその音声をテキストでまとめ、PCに入力している。これって、2度入力作業をしている、ムダじゃないか?と。
会話しているだけで、そのやりとりが、今までになかった形で記録できそうだ、というところまで開発は進んでいました。その頃、Open Network Labというアクセラレータープログラムに参加しまして、当初は、議事録が自動でできるサービスを検討していたのですが、様々な領域の方にインタビューする中で、一番発話のコミュニケーションの入力に困っているのは、顧客対応をしているセールスやCSだということがわかったんです。当時、何百万円ものコストをかけてSalesforceなどのSFAを導入する企業が増えていましたが、担当者の入力が滞りがちで思うように活用できていないという課題が浮上していました。
永続的にサービスを運営し、アップデートし、営業活動を行っていくうえで顧客とのやりとりは企業の資産であることは自明だと思います、しかし一方で、情報入力の苦痛もよくわかるんです。例えばインサイドセールスは、顧客のニーズを精査して商談化することが仕事だし、CSは、顧客の課題を解決することが本来の仕事ですから、情報を入力するという作業のプライオリティが下がるのは当然でしょう。電話で会話する量は膨大であり、1件終わるごとに入力する手間、過去アクセスしてないか、担当は誰かの確認など煩雑な作業がたくさんありますよね。入力・報告のために残業が生じているケースもあると聞きます。実例として、300名規模の会社で、セールスがSFAへの入力に1日1.25時間を使っていたというデータがあります。これは年間にすると330時間、つまり約41日間を入力作業に消化している計算になります。その「入力の手間・コスト」というペインを発見した時に、ここだ、と思ったんです。Open Network Labで見事に採択され、『pickupon』事業をスタートしました。
3. AI電話需要拡大の背景と『pickupon』の強み
なぜこれまで、このペインを解決するソリューションがなかったかというと、ひとつには技術的な事情があります。2017年頃に、音声認識の技術、speech to text の精度があがり、ようやく実用可能なレベルになってきたんです。私はその進化に注目しておりました。もうひとつは、組織の体制の問題で、顧客と対峙する型の変化によりニーズが顕在化したと思っています。インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスと分業してセールスするというスタイルが日本で一気に普及してきたのが2018年頃なんですよね。インサイドセールスという言葉はあっても日本ではまだ普及には時間がかかると言われていました。それがコロナ禍でリモートのセールスが広まり、分業型のセールススタイルが定着してきた。ベルフェイスさんなど日本の電話面談システムもこの頃に急成長しています。こういった時代背景の中で、企業の、顧客データ共有に関する要求というか、ペインの深みと幅が広がったのも事実だと思います。
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そもそも、電話や会議で話した内容を的確にシェアすることって難しいですよね。話した内容をチームにどうやってデータとして共有するかというと、テキスト化してシェアする方法と、録音してシェアする方法の2パタンかと思います。テキスト化してシェアするには要約や入力のコストがかかり、内容は主観的になり、二次情報としてしかシェアされません。入力を簡略化すると正しい情報が伝わらないという問題も起こります。一方、録音データは構造化されていないデータなので、最初から最後まで再生して聞く必要があり、情報を受け取る側の時間がかかります。
『pickupon』は要約されたテキストと音声で一次情報すべてが記録されデータとしてシェアすることができる。完璧な情報が入力コストゼロで実現し、共有情報の質と量を上げることができるのです。記録されたテキストにマウスオーバーすると、実際の音声を聞くことができ、顧客の発するニュアンスも含め、効率的に理解することができます。『pickupon』の一次ユーザーはセールスやCSの部門になるかと思いますが、単なるデータ管理、セールスツールの枠に留まらないチームワーキングツールとして活用いただきたいと思っています。
私自身、バックグラウンドが営業ではないので、「なんで営業のペインを解決するような電話サービスを作っているの?」と聞かれることがあるんです。私は開発サイドで働いてきて、プロダクトを良くすることが重要だと考えてきました。そのためにユーザーの声が知りたかった。開発者は営業を通じて顧客の要望を類推することも多く、正直に言えば、二次情報として受け取る顧客の要望は認識がずれていることもあり開発が非効率になることも少なくなかったんです。顧客の意図がダイレクトに共有される機能の必要性を感じていました。事業にとって一番重要な、顧客からのフィードバックをチーム内に共有できる、経営者や開発者が顧客のリアルな声をキャッチアップできる、これが『pickupon』の価値だと思っています。
ピッチから6割確約。『スタコネ』サポーターとのマッチングにより、資金調達、事業連携の両面で事業を加速
4.『スタコネ』を利用したきっかけ、期待したことは?
『pickupon』のターゲット層を大企業へシフトしていく中で資金需要もあり、資金調達と事業拡大の両面において、事業会社や経営者の方々との直接の繋がりを持つことが早道ではないかと考えていました。しかし、自社の事業に興味を示して支援していただける方を既存の繋がりから効率的に探すというのは難しいんですよね。投資型クラウドクラウドファンディングで募り、そこから顧客開拓することも検討しましたが、株主が200名、300名規模で増えることは事業運営上、次のファイナンスに影響が出る懸念もあり躊躇しておりました。その時に『スタコネ』の存在を知り、会員さんは事業会社の経営者の方も多いと聞き参画を決めました。
5.『スタコネ』を利用した印象は?
『スタコネ』に登録し、期待以上のスピードで当社ビジネスモデルと親和性があり、当社事業に興味を持ってくださる事業会社の経営者様とマッチングすることができました。ご自身も事業運営に関して課題を持たれていて、事業会社の目線で当社の事業に共感し伴走してくれるような方が多かった印象です。みなさま私たちと同様のペインを持たれていたり、事業への理解が深い方ばかりで非常に相性が良い方々と面談させていただくことができました。
スタートアップ支援は社会を良くするスピードを加速するという意味で、意義のある取り組みだと思っています。その中でも『スタコネ』は、事業会社の代表を務めるサポーターも多く、事業シナジーを創出しつつ一定規模で支援を実現できる点で、スタートアップ、サポーター双方のニーズを捉えた価値のあるサービスだと感じています。
6.『スタコネ』を利用して得られた成果
『スタコネ』でつながり、事業シナジーが見込める企業様とは既に当社プロダクトの採用に向けPoCを進めています。またピッチを行ったうちの6割の方が当社事業に賛同し出資いただく結果となりました。『pickupon』に可能性と面白みを感じご決定いただきましたが、わたしの感覚では、6割という数字はとても高い確率です。一般的にスタートアップ投資では、企業のバリュエーションの妥当性を判断することは難しいと思いますし、契約に関してもテクニカルな要素があるので、良いなと思っても投資に踏み切れないケースも多いのではないかと思うんですよね。当社が『スタコネ』に参画していること、『スタコネ』側で事前に当社事業概要をご案内いただいていることで、サポーターの皆様が一定の信頼の基で企業に歩み寄りやすい土壌を作っているのだと思います。
CTI新機能実装。エンタープライズへ販路を拡げ、前年比売上6倍を目指す
7.『pickupon』今後の展望
当社の事業領域は広義ではCTI市場、コミュニケーション/コラボレーティブワークスペース市場、音声認識システム市場を総合して、約1兆円以上の市場規模が見込まれており、これはモバイルゲーム市場の1.2兆円に匹敵する規模です。そのうち、CTI市場のSaaS化だけで1,500億円市場になると予想されます。当社は2024年末までに登録 ID数、売上ともに前年比6倍への拡大を目標としています。今は電話ツールとして営業活動をしていますが、新たにWEB会議連携機能の開発を進めており、CTI売上を拡大していく予定です。また従来のSaaS系スタートアップ企業に加え、大手企業へのアプローチを進めることで、顧客基盤を強化しMRRの拡大を加速します。
(2023.12.27 インタビュー)
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