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「顧客との共創」で成長し続けるGronG、成功の秘訣に迫る

フィットネス人口の拡大から、健康食品や24時間ジムを生活の中で目にする事が増えてきた昨今。市場が大きくなればなるほどその環境下での競争は激しくなるものですが、そんな中、関西から躍進を続けているのがGronGやDELICIOUS FITというブランドを有するUltimate Lifeという会社です。

「より挑戦者の多い世界の実現」をGronGのブランドパーパスに掲げ、プロテイン・サプリメントやトレーニング用品を企画してはオンラインでヒットを産み出し続ける同社が注力しているものは何なのか?
成功の要因となっている「サプライチェーンの内製化」や「お客様との関係構築」について詳しく聞いてみました。

株式会社Ultimate Life 取締役CMO 田中さん(左)
同 ECマーケティング部 清水さん(右)

ー 田中さん、清水さんの自己紹介をお願いします。

田中:和歌山県出身で、医療系の専門学校を卒業後、治療家として従事していました。2013年にUltimate Lifeを設立し、会社設立後は、独学でマーケティングを学び、これまで広告・販促プロモーションなどの狭義のマーケティングからブランドマーケティングまで幅広く担当しています。

清水:大学卒業後、食品系メーカーに入社しマーケティング業務に従事していました。2021年からUltimate Lifeに参画し、メーカー事業における自社ECサイトの運営&広告管理運用業務に携わっています。2024年からECモールでの販促施策を含め、EC周りの業務を広く担当しています。

事業紹介

ー ありがとうございます。続いて、簡単にメーカー事業の概要を教えてください。

田中:Ultimate Lifeは、プロテインやアミノ酸などのサプリメント製品(ニュートリションプロダクツ事業)、フィットネス・コンディショニング製品(ウェルネスプロダクツ事業)など、健康に関わるプロダクトを扱っています。

販売チャネルはAmazonや楽天市場といったECモール、自社ECサイトを中心に、マルチチャネルでの販売をおこなっています。毎年右肩上がりに成長しており、YOY20%増(2023年9月期(前期/10期目)実績:約62億円)で売上成長しています。なおECでの売上が大半を占めており、90%以上がECの売上です。

GronG 公式オンラインショップ

これまでは「より挑戦者の多い世界の実現」をブランド・パーパスとして掲げるスポーツニュートリションブランド「GronG」のみを展開しておりましたが、多様化する消費者ニーズに対応するためにマルチブランド戦略に舵切をおこないました。

2024年2月にローンチした美味しさ特化のプロテインブランド「DELICIOUS FIT」はその内の一つで、発売から5か月で約11tを売り上げるなど、好調なスタートを切っています。

GronG:https://grong.jp/
DELICIOUS FIT:https://delicious-fit.jp/

ー メーカー事業において、サプライチェーンを内製化している点が貴社の特長であると理解しておりますが、この選択をした理由があれば教えてください。

田中:ビジネスモデルの収益構造を分解していったときに、「コストをいかに抑えられるかが当事業のキモ」であるとであると判断しました。
元々、販売や物流機能を自社で保有していたこともありますが、本気で「モノ作り」をしてビジネスを成功させるには、コスト削減はもちろんのこと、品質管理や技術力の向上、ナレッジの蓄積など、今後Ultimate Lifeが爆発的に成長するための糧が必要であると考え、内製化を選択しました。
無駄なところにお金を使いたくない、という関西ならではの思想もやや反映されているかもしれません(笑)
結果として事業を大きく成長させる要因となり、内製化を選択して良かったと考えています。

株式会社Ultimate Life 取締役CMO 田中さん

GronGの成長を支える顧客接点

ー 現在、顧客との接点で最も有効なのは何でしょうか?また、集客施策はどのように実行しているのでしょうか?

田中:売上への貢献度は、モール内の広告が最も強いですね。特にAmazonが強く、リピート購入してくださるお客様も数多くいらっしゃいます。

一方で、ECモールのみでは顧客と深い接点を持つことは難しいです。ECモール以外の、限られた接点の中で有効だと感じている施策は、「アンバサダー制度(アドボケイト・プログラム)」です。

D2Cモデルを採用していると言えど、これまではお客様の声を直に聞く機会が乏しく、ファンの獲得に課題を抱えていました。そこで、お客様と密な関係を築くため、本施策の実施にいたりました。
名称には、一般的に使われる「アンバサダー」という言葉は使用せず、「アドボケイト(Advocate)」を選びました。「Advocate」には「自発的に情報発信をするファン」の意味があり、広告施策としてのアンバサダー制度とは異なることを示す狙いがあります。

GronGは、ローンチ以降売上が好調だったにも関わらず、SNSに声が上がらない・UGCが少ない点が課題の一つでした。とは言え、よくあるインフルエンサーマーケティングのように誰彼構わず拡散して欲しい訳ではないので、すでにグロング製品が好きで、積極的に情報発信をしている方に私たちから直接お声がけしています。

アドボケイト導入後、SNS上の発信量は20〜30%程度伸びており、その効果を実感しています。また、ECサイトへ訪問する指名検索の流入数も伸びており、着実に成果へ繋がっていると考えています。

ー ジムも運営されていますが、こちらも顧客接点として機能しているのでしょうか?

田中:ジムは和歌山県に2店舗、大阪府に1店舗あります。大阪府の店舗は本社と同エリアにて運営しており、商品開発やマーケティングに関わるスタッフが気軽に店舗に出向ける距離(徒歩5分程度)にあります。また、24時間ジムの中では珍しい「お客様へのサポートを重視したジム(例:無料のサポートプログラム)」であり、一般的な24時間ジムと比べて店舗スタッフと顧客の信頼関係が構築できています。そのため、新商品や企画途中のサンプル品、既存品などのレビュー(ここでのレビューはEC等のレビューではなく、商品自体の評価)やコンセプト調査などにも積極的に協力していただける方が多いです。

GronG GYM 24 緑橋店の内観

プロテインの味が「美味しいか・美味しくないか」のレビューをはじめ、VOCを上手く活用することで新規プロダクトの開発や既存プロダクトの改善が可能だと考えており、他にも前述の「グロング・アドボケイトの育成」や「グロングへの愛着がある求職者の発掘」など、プラスとなることが多いと考えています。

VIP - 会員プログラムの導入について

ー このタイミングでプログラムの導入を検討した背景について教えてください。

清水:自社ECで購入するメリットの拡充による「購入店舗として公式ECを選択する方の増加」「お客様一人当たりのLTV向上」にあります。
元々、自社ECでは通常価格より15%OFFで購入できるという利点はあるのですが、それ以外のメリットが少ない状態でした。かねてより、ポイントプログラムの実装を検討していたのですが、VIPであれば理想の形での実装が可能であることが導入の決め手となりました。

ー ポイント・ランク特典の内容について、顧客ニーズをどのように調査・分析しましたか?

清水公式ECの既存会員様と、SNSのフォロワーに向けてのアンケートがメインですね。「普段購入している商品」や「どこの店舗で購入しているか?」など、セグメントごとにクロス集計して分析しました。

選択式項目の定量的な結果はもちろんですが、特に参考になったのはフリーアンサーです。お客様がGronGのサービスに対してお考えになられている事を忌憚なく回答いただききました。中には、「15%OFFの時点で十分にメリットがあるので、それ以上特典を増やさなくても良いのでは?」というお声も複数あったことが印象に残っています。

ー プログラムの運用や設計で苦労した点・工夫した点はありますか?

清水:顧客ニーズの分析結果を踏まえ、「特典交換」の設計に注力しました。所謂、リワードプログラムですね。

GronG ポイントプログラム

1ポイント=1円として注文に利用できる機能も備えましたが、特典交換として利用する方がおトクになる設計にしました。特典の内容も、調査結果を踏まえて実際に販売している商品で揃えています。Tシャツなど非売品ノベルティも用意しているのですが、交換される割合としては商品のほうが圧倒的に多いですね。

もし特典の内容がノベルティばかり(求められていないモノ)であった場合、利用率は低くなりプログラムの満足度低下につながっていたかもしれません。特典の内容は扱う商材や、ユーザーの特性によって大きく異なると思うので、事前に顧客ニーズの調査をおこなってよかったと感じています。

Stack社の導入サポートも手厚く、導入に際して苦労する点はほとんどありませんでした。

株式会社Ultimate Life ECマーケティング部 清水さん

ー 好評だった点や改善点として、具体的にどのようなものがありますか?

清水:今のところ、順調に特典の利用者数は増えています。過去1年間購入履歴の無かったお客様が再度購入してくださるケースも出てきており、体感としても高い効果を感じています。具体的な数字としては、新規会員登録者数が実装前の期間と比較して31%増加。また、ポイントプログラム(特典交換利用者)の利用者をアクティブユーザー全体の傾向と比較すると、LTVが約3倍高く、リテンション率も非常に高い結果となっています。

一方で、改善点としては「ポイント利用率」が挙げられます。特典交換利用者を増やすことができれば、自ずと平均LTVの向上にもつながるため、先ずは利用率を上げていく施策に注力したいと考えています。

ー 新規特典の追加やプログラムの改編など、今後検討していることはありますか?

清水:先述しました通り、短期的にはポイントプログラムの利用率を上げる事が当面の目標ですね。具体的には、メルマガ会員やLINE友だちの方へアプローチする環境をShopify Flowを活用して整えている最中です。今後は、同梱物の活用も含めて、ポイントプログラムの利用率を底上げしていきたいですね。

中長期では、オフラインとの連携をより強化するため、公式ECとGronG GYM24の会員情報・ポイントの一元化と相互利用も進めたいと考えています。

当社ではYouTubeチャンネルを運用しており、チャンネル登録者数が約25万人(2024年8月時点)です。チャンネルに特定のファンがついている状態なので、ファンの方に公式ECで商品を購入していただき、特典としてオフラインでのイベントに参加する機会を提供するなども検討しています。余談ですが、ファンが増えすぎたせい(おかげ)で、元々GronG GYM24のマネージャーを兼任していた前田の業務はYouTuberがメインになってしまいました(笑)

ー Stackに対するフィードバック、意見などがあれば教えてください!

清水:Stackさんはパートナー会社との連携が柔軟で、必要なサービスとの互換性が高い点が魅力の一つだと感じています。直近ですと、CRM施策を進めるための顧客分析ツールとしてEC Powerを活用していますが、こちらはStackさんのサービスと提携されていることが導入の決め手となりました。技術面でもこれから要望はどんどん出てくると思いますが、引き続き手厚いサポートをお願いしたいです!

編集後記

情報過多となった現代において、インターネット上には真偽不明の情報が多く出回り、その取捨選択を消費者が求められるようになりました。特に健康領域はYMYLと呼ばれ、Google検索でもコンテンツの品質が強く求められます。

「情報の正誤を判定するコストが上がった」昨今、「誰が勧めるか?」の重要性は高くなったと感じます。そんな中、Ultimate Life社の取り組みはとりわけ真摯であり、

・サービス導入前は事前に顧客にヒアリング
・導入の基準は顧客のメリットになるか否かで判断
・コラムをはじめとしたコンテンツは専門家監修の元で執筆

など、顧客視点と誠実な姿勢を貫いています。インタビューを通して、このような”顧客に寄り添ったUltimate Life社だから”市場の信用を勝ち得ているのだと確信しました。売上規模が拡大した現在でも「まだ道半ば」「挑戦者」の姿勢を崩さない同社の今後の更なる躍進が期待されますね。

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Stackについて

Stack Inc.は、SaaS型小売基幹システム「SQ」と、Shopify機能拡張の提供を行っております。2021年4月にブランドがモバイルアプリを構築・運用できる「Appify」を、2021年10月にブランドがロイヤリティープログラムを展開できる「VIP」を正式にサービス公開し、機能の改善・拡大を続けてきました。今ではStackが提供するサービスは200以上のマーチャントで導入されています。

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