「ヤクザと家族」とは時代の変化を見事に表した傑作
いつもは邦画と洋画を交互に見たりするんだけども、コロナの影響で洋画の上映が遅れている影響もあるが、最近見た邦画が傑作ばかりなので、今回も気になる邦画を見てきました。
第43回日本アカデミーで最優秀作品賞に選ばれた「新聞記者」の藤井道人監督の最新作「ヤクザと家族」。
ヤクザの道を選んだ山本賢治(綾野剛)の
1990年、2005年、2019年の3つの時代を生き抜く物語。変化している世界ので生きるヤクザとは。。。
見終わった直後、まるで2本分の映画見た後のような満足感。思わず拍手したくなるほど素晴らしかった。
それぞれ3つの時代で大きく物語の節目を描いており、2時間強あるけどだれることなく、全てが印象強い。
特に、2019年の時代では、今まであまりフォーカスされなかった新しいヤクザの姿を突きつけられた。ヤクザと形は、もはや日本の歴史となりつつあるかもしれない。
どこか「すばらしき世界」とリンクする部分もあり、1990年時代を大きく生き抜いた人間にとっては今の時代はあまりに変わり過ぎたのかもしれないことを知らされた。
そして、各時代それぞれで鳥肌が立つくらい強烈なシーンがあったのも魅力の一つである。
まずは、第一章(1990年)の終焉が最高にかっこいい。山本と柴咲の契りを結ぶシーン。まるで、ゲーム龍が如くでありそうなシーン。
まるで、観客にここからがこの映画の始まりと言わんばかりの演出がとにかく最高。
次に二章(2005年)の車の移動中に起きる出来事の緊張感ある撮り方が凄い。あえて途中からわざとカット割をせず、現場をできるだけ映さないことによる緊張感。何が起きているかは何となく予想がつくも、現場をを見せず綾野剛の顔だけを映す撮り方が凄かった。
そして、第三章(2019年)のラストシーン。これほど悲しいラストは久しぶりに見たと思う。こんな残酷なことがあるのかって心で叫ばずにはいられなかった。
「アウトレイジ」「虎狼の血」など、ヤクザ抗争ではなく、ヤクザと時代をテーマにしているため、正直、ヤクザについて悪事・社会的に危険な存在であるがあまり、描かれておらず、美化され過ぎている印象もある。思っていた映画と違ったと思う人も少なくないと思うが、それを置いてといても傑作には違いない。
ヤクザという生き物を完全に除外しようとする社会とその中でも他の生き方がわからず懸命に生きるヤクザ。そして、ヤクザを辞めたとしてもその呪縛からも容易に逃れられない。一度、社会の枠からはみ出たものが社会が生き抜くとはを描いた傑作。
時代は人間の想像をはるかに超えたスピードで変化していく。その変化についていけない者は取り残されてしまうのかもしれない。そんなことを教えてくれる映画でもあった。
主演の綾野剛はもちろん、圧倒的オーラをもつ舘ひろし、そして、市原隼人、磯村勇斗の存在感に圧倒的されてしまった。
また、すばらしき世界では、福祉事業所のケースワーカー、ヤクザの家族ではヤクザを演じた北村有起哉さんのバイプレーヤー感が凄い。
今だからこそ、作れた映画だも思う。
新聞記者に続き、難しい現代の問題を見ている人にここまで分かりやすく、心刺さる圧倒的な作品を作り出した藤井道人監督のファンになった。