オウム返しは、悲観すること勿れ
オウム返しはなぜ起こる?
オウム返しにも、単語を繰り返す、文章を繰り返すなど、色々なレベルがあります。発達に関する検査の中には、文の復唱と言って、相手が言ったことをそのまま繰り返すテストがありますが、お話が上手になるとそのテストを間違えるという現象が起こります。それは、お話しできないときには、そっくりそのまま繰り返して言えるのですが、話の内容が意味が分かると、自分の言葉で喋るので間違えが起こる時期があるということです。
つまり、オウム返しは、意味が分かって繰り返しているのではなく、音をそのままコピーしているということになります。自分でどういう言葉を言ったら良いか分からない時に、相手の言ってることをそのまま繰り返す現象が出るということです。
そもそもオウム返しが出来る子と言うのは、耳で聞いたことを正確に再現できる力があるのです。しかし、言葉での理解力または表現力が伴ってないので、オウム返しが出てきます。
あれもこれも。オウム返しは幅広い
記憶された物を再現するという意味での、広い意味でのオウム返しでは、テレビのセリフやフレーズをそのまま覚えていて、いろんな場面で後から出てくるものも含まれます。
中には、凄く巧妙なオウム返しもあります。「〇〇します。」と大人が指示を出した後に、「〇〇します!」とそのまま繰り返えすので、てっきり分かっていると思われることがあります。その子の行動をよく観察すると、指示通りに行動できていない場合があり、初めて「分かっていなかったんだ」と周囲が気づくのです。
また、注意された場面で、大人が「ごめんなさいは?」と言うことに対し、「ごめんなさい。」と繰り返す形も、きちんと理解して言っている時と、単純に繰り返しているだけの時があります。保育者から、毎回ごめんなさいと謝れるのに、何度注意しても行動がなおらないんです!という訴えは、本当は理解が伴っていないのかもしれません。
そうすると、オウム返しは、言語発達の初期に起こるものだけではなく、学年が上がっても、相手の言っていることに対しての理解が不十分だったり、どうやって表現すれば良いか分からない時に、繰り返し出てくるものだと考えられます。
言葉の意味を理解して、話す時には言葉を頭のなかで探って、思いついたものを言葉にできるようになってくると、オウム返しは減ってくると思います。
オウム返しの未来
割合、耳が良いタイプの子がよくオウム返しを使います。言葉の意味は分かっていなくても、音は記憶できるような子ですね。
そういうタイプは、パターンの蓄積であったとしても、本人に「この言葉しか使わない」といった頑なさがなく、聞いた言葉を純粋に取り込んだり自分の言葉を修正していけるタイプだと、最終的には自分の表現に変化していくと思います。
例えば、「今日はあつあつだったね。」と子どもが言ったとして、大人が「そうだね、今日はとても暑い日だったね。」と伝えた時に、「うん、暑い日だったね。」のように取り込めるかどうかです。ポイントは、周囲にこういった修正をしてくれる人がどれだけいるか、です。
オウム返しは、悲観せず、上手く活用する
オウム返しが出るのは、子どもががまだ言葉を自分で考えて出すことが出来ない状態と考えられるので、言ってもらいたいセリフがあるときには、オウム返しを上手く使えばいいと思います。あまり圧が無い感じで、横でささやくとか。例えば、「かして」とか「入れて」などです。オウム返しを使ってその場、使って使ってほしい言葉を出せるようになっていけば良いと思います。
オウム返しができる長さも、お子さんが一度に覚えられる言葉の長さを知る目安になります。例えば、大人が単語を伝えても、繰り返すのが最初の1音だけだとすると、大人が言う言葉もあまり長いと、記憶として残りにくいかもしれない、ということがわかるので、声かけの参考になります。
また、疑問文で聞くときに、選択させる方法もあります。子どもが選びそうなバナナを疑問文の最後に置いて、「りんご、ばなな、どっちがいい?」のような形で聞きます。オウム返しができる子は、「どっちがいい?」という質問が分からなくても、最後の単語繰り返すと、それがもらえるということが、まず分かる。次の段階として、「バナナ、りんご、どっちがいい?」と反転させてみて、いつものようにオウム返ししたら「あれ?違う」と気づく経験をさせます。
オウム返しがあったら自閉症みたいな情報が多いですが、今この子は、オウム返しが一番言葉が出やすい方法なのだな、話し言葉になるスタートに立てたなとかんがえると良いと思います。