2024年度イリナ・エレメンタリー サマースクール
どうも、TOMOTです。
noteでは「初めまして」の方も少なからずいらっしゃるかと存じますが、私は東京都府中市にあります”聖イリナ・モンテッソーリスクールこどもの家”所属、3-6歳児と6-12歳児を担当しております職員Tでございます。
2016年4月よりAmebaブログ様にて『イリナの小さな物語』を運営しておりましたが、このたびイリナ事務運営&広報を担当している事務長Haniさんご協同のもと、イリナ広報の場として一緒にnoteを活用していくことと相成りましたので移動して参りました。
noteでの記事掲載は初めてなのでまだ勝手がわかりませんが、つきましてはいち常勤職員として「イリナの子ども達に起こる日々の小さな物語」を、不定期的に投稿して参りますので何卒よろしくお願い申し上げます。
私の場合はAmebaブログ時代と同様に、ブロガースタンスで記事をつらつら綴っていくこととなるかと存じますので、お見苦しい点も多々あるかと思われます。
そのような様相でも構いません方は、どうぞ生活の遑にお目汚しいただけましたら幸甚です。
はてさて、去る8月26-28日。
私が主担しておりますイリナ・エレメンタリークラスのサマースクールを開催致しました。
その一週前より関東エリアは26-28日が台風10号の直撃日となってしまい、非常にハラハラした数日を過ごしましたが、幸いなことに開催時間だけは大きな天候不順に見舞われることなく無事催すことが叶いました。
台風停滞の影響で大きな被害がありました九州地方周辺の方々の無事を心よりお祈り申し上げますと共に、本記事を綴っております8月30日は私の居住区周辺でも警戒レベル4が発令する大雨となっておりますので、いつでも避難できる用意を足元に整えた上で本題となります「サマースクールの様子」を公開していこうと思います。
今年のサマースクールでは「植物という生命体」へのフォーカスと「地球生命としての相互共存」についてをテーマに、モンテッソーリ教育的アプローチを通してたくさんの活動を行いました。
今回のテーマを実行するにあたり、AMI友の会日本主催で行われました、植物観察家でいらっしゃる鈴木純さんの『植物の秩序を観察する』という講演会に参加させて頂き、多くのインスピレーションを頂戴しておりますことを先立って告白させて頂きます。
鈴木純さんは、イリナの子ども達も大好きなNHK番組「ダーウィンが来た!」にも出演されていた方で、私もその放送時はテレビに齧り付いて番組を閲覧させていただきました。
植物に対するご自身の「好き」を突き詰めた結果いま様々なご活動を継続されているような大変素晴らしい方で、「好き」が高じて生物学を専攻したり教育の場に参入した私としては、勝手に親近感を抱かせていただいております。笑
植物と向き合ったときの観察力と着眼点の鋭さ、普通のひとは「ふーんそうなんだ」で終わってしまうようなことに疑問を投げ掛けて探究する行動力、その結果常に深くなり続ける植物への造詣には圧倒されますね。
モンテッソーリチャイルドみたいな美しい思考の鈴木純さん、noteをされていらっしゃるようなのでこちらでもこっそり宣伝させて頂きます。
さて、初動から話が逸れましたが、軌道修正致しましてサマースクール一日目。
エレメンタリークラスのサマースクールではありますが、下は小学一年生から、上は中学二年生まで、合計17名の子ども達が参加してくださいました。
逆に言えばそれだけ知識量に差があるということに他なりませんので、幼児クラスで行う「植物の部分名称」を最初にサッと復習し、その後エレメンタリーレベルである「根・茎・葉の部分名称、機能、種類」をデフィニションブックを使ってフワッと行いました。
本来であれば「具体から抽象」の原則に従ってフィールドワークや実験活動から行いたかったのですが、これだけの人数と年齢差があるのにほぼ私一人で指導している状態だったので、子ども達が自由活動できる程度に知識水準をザックリ統一してしまうより他に致し方ありませんでした。
モンテッソーリ教育現場で一斉指導を行いましたこと、心より懺悔致します。
とはいえ、もちろんその時間は”植物学に関する詰め込み教育”ではなく、”各々が植物と向き合って疑問が湧いた時、ディフィニションブックのどこを開けばそれを解消してくれるのか”を話しました。
例えば葉っぱ一枚にしても「葉縁、葉身、葉脈、葉柄、托葉」などたくさんの部分名称がありますし、葉縁にフォーカスすれば「全縁、鋸歯縁」などなど細分化され、またそれぞれに重要な役割がありますから、どのデフィニションブックのどのページを見たら定義が載っているのかをかい摘んだ感じですね。
本当に教具様様です、イタリアのエレメンタリーディプロマコースで頂いた植物学教材を、日本語&現代版に直したディフィニションブックとしてコツコツ制作した甲斐がありました。
それが終わったら、子ども達と一緒に早速フィールドワークへ。
まずは植物の中でも最も身近と言っても過言ではない、雑草採取に出ました。
「雑草」にもそれぞれ名前や形状、繁茂の特徴がありますから、そういったものに対する分類や気付きを調査して頂きました。
記録紙は、遥か昔の大学時代に私が書いていたレポートを思い出しながら、「そういえばこういう情報を書くよう言われたっけなぁ」と懐古しつつ作成したものです。
皆それぞれ仲の良い子達と一緒に、思い思いのやり方で一生懸命調べておりました。
モンテッソーリ教育エレメンタリー課程では当然のことですが、やはりエレメンタリーの子ども達はこちらが何も言わずとも、自ずと小グループを形成して協力しながら作業を行います。
その活動における役割分担やコミュニケーションを通して、社会性が育まれて参りますね。
とはいえ子ども達は3部屋5グループに分かれて調べものを行なっておりましたので、私は悩んでいる子ども達にちょっとしたヒントを与えたりしながら、イリナ中飛び回っておりました。笑
この活動を通して植物に対する観察の仕方を深めた後、次は身近な野菜について探究致しました。
普段食べている野菜は植物の根なのか、茎なのか、葉なのか、はたまた実や花なのか。
どんな植物の仲間で、いつ収穫が行われて、どういった色味や幾何的特徴があるのか。
普段当たり前のように食卓に並び、何の気なしに食べている野菜達ですが、分類してみると大変奥深いものです。
こちらも子ども達に専用の記録紙を渡し、それに沿って思い思いのやり方で分類していただきました。
皮、棘の周り、ヘタの部分、断面、果肉、種の周辺……、野菜ひとつとっても部位によってたくさんの色が存在します。
これを区別しながら塗り分けることもまた分類であると同時に、色彩感覚の洗練に繋がりますね。
よほど重要なところを除き、子ども達が調べ分類した内容が合っていても間違っていても訂正せず、自身の発見を楽しみながら活動してもらいました。
分類学と言っても「こういう分け方もあるのか」という気付きを、子ども達が楽しんでくれていたら大成功ですね。
たくさんのご家庭から活動用お野菜をご寄付頂きましたこと心より感謝申し上げますと共に、箱いっぱいのお野菜を贈ってくださいました事務長Haniさん&Haniさんご実家様に深く御礼申し上げます。
そしてもちろん、こういった活動の最後にして最大の醍醐味は、やはり味覚分類ですよね。
殊、食品分類に関して言えば、これ無くして分類完了などあり得ません。
「キュウリって何味?」と問われた時、これに答えられる大人がどれくらい存在するでしょうか。
「キュウリ味だよ」と言ってしまえばそれまでですが、食べ分けていくと皮には意外と苦味や渋味があって、果肉には独特の甘味があって、種には酸味があったりします。
それらを同時に食べることで「キュウリ味」になるわけですね。
そしてその味に合う代表的な調味料として塩や味噌が挙げられますが、ケチャップやマヨネーズはどうか、麺つゆやワサビはどうか、様々な複合味覚を体験しながら楽しみつつ学びを深めます。
中には練乳やチョコソースを試している猛者もおりましたね。笑
食べては書いて、書いては食べて、感覚的な情報を言語化して精査することで、子ども達は自身の中に新たな発見をしていきます。
学びは楽しみが伴ってこそ、本当の意味で身になるというものですよね。
はい、では3500文字ほど綴ったところで、サマースクール二日目。
この時点で400字詰原稿用紙9枚弱ですがまだ二日目の内容ですよ、私自身久しぶりの文作ですが、あまりの文量に驚いております。
それはさておき。
二日目は、おおよそ一日目に行なった活動と同じですが、フォーカスするのは「花・実・種」になります。
「花は葉が進化したものだ」という研究結果が出ておりますが、生物の繁殖法のいち形態である「花・実・種」にも、品種によって本当に様々な特徴と特例があります。
風などの自然媒体で繁殖する裸子植物、動物や昆虫媒体で繁殖する被子植物、植物形をしていても菌糸や寄生によって繁殖する動物に近い特殊なものまで、それはそれは枚挙に遑が無いほど多種多様です。
ですので、まずは「花・実・種」の定義付け的な実験を行い、そこから視野を拡げていく分類活動を行いました。
その際たるものとして花の解剖を最初に行い、部分名称や機能に関する造詣を深めて参ります。
提供中は両手が塞がってしまいますので、こちらの写真は中学生参加者の子に記録係をお願いして、撮影して頂きました。
解剖に使用させていただいたのは、トルコキキョウです。
合弁花冠なので萼から外し易く、雄蕊や雌蕊も大きくて認識し易い、夏花としては非常に解剖が容易なお花でした。
解剖後はデフィニションブックを交えて説明し、子ども達にも一輪ずつ切ってもらって、記録紙と共にそれぞれ解剖を行なっていただきました。
トルコキキョウというこの花、名前の割にトルコ原産でもなければキキョウ科でもない花でして、子ども達は友達と一緒に調べ合いながらゲラゲラ笑っておりました。笑
生物には見た目の印象とか特徴だけで雑に名付けられているものも存外多く、こういう情報は敢えて大人が教えず、子ども達自身で発見していくのがよろしいですね。
面白い発見だからこそ子ども達は、一層に探究熱を燃やして活動に邁進して参ります。
昨今では結構有名になってきておりますが、私自身、学生時代に「トゲアリトゲナシトゲトゲ」という珍妙な名前の虫を図鑑で見た時、本当に好奇心がくすぐられたことを良く覚えています。
「どういう意味!?」という好奇心や探究心の根底には常に、「なにそれ面白い!」が存在するわけですね。
そのようにして植物の繁殖機構を学んだ後は、増殖方法である実と種へフォーカス。
子どもも大人も大好き、果物分類ですね。
調査方法は野菜の時とほぼ同じですが、ひとえに果物と言っても漿果や乾果などこれまた様々で、品種によって切断したときの果汁反応や種の見え方もまちまちです。
そして何より楽しい味覚分類。
子ども達の熱量が、野菜の時とは桁違いでした。笑
練乳やチョコソース、メイプルシロップ、粉砂糖。
甘い果物に甘い調味料を合わせると、まあ、甘くて美味しいわけですよ。
大人の目線で見ても、クレープとかパフェを鑑みれば、果物にそういった調味料を掛けている子どもがいても咎めないじゃないですか。
何となく味が想像できるし、何となく美味しさが思い浮かばれるので、大人としても「もったいない」という感情が湧かないからでしょうね。
ではリンゴに醤油、ミカンにマヨネーズ、ブドウにワサビを付けている子がいたらどうでしょう。
つい「もったいないからやめなさい」と言ってしまうのではないでしょうか。
しかしここは味覚分類調査の場、「最後まで食べ切ること」と「感謝を忘れないこと」が守れるなら、自己選択の上で何でもアリです。(※アレルギーや食べ合わせに関しては大人の配慮が必要です)
ある男の子は「甘い調味料も色々試したけど、スモモに一番合ったのは麺つゆだった」と申しておりました。
この領域になると、例え大人であっても、実際に体験した人間でなければ到達できない事実ですよね。
スイカに塩を少し振ると甘味が強く感じられる原理と同じなのでしょうか、私の口には毛ほども果物を入れられなかったので、今度個人的に試してみようと思います。
そして最後は、余った果物をみんなで分けて食しておりました。
何も言わなくても子ども達は、ちゃんと人数を把握して等分し、分け合っておりましたね。
本当に素敵な子ども達です。(大人の分は無かったけど……)
こちらに関しましても、果物のご寄付にご協力くださいました皆様方に心より感謝申し上げます。
我々大人も預かり知らぬ、特別な体験に繋がったことと存じます。笑
そしてついにサマースクール三日目、最終日。
私としてはこの日が最も重要だったのでつい熱が入ってしまい、完全に写真を撮り忘れましたが、「生物の相互共存」に関する話をしました。
太陽は地球にたくさんの温かさや光、エネルギーを送ってくれており、そのおかげで朝や夜が生まれ、その温度差によって大地や風や海が動きます。
そのような自然の流動によって動植物は呼吸ができ、休息ができ、生命活動を維持することが適います。
そして自然の力によって生きることが許されている生物達もまた、花が蜂に蜜を与え、蜂が花の受粉を行うように、互いに支え合って共存しております。
生物達はただ生活を行っているだけで、そこに「あいつを助けてやろう」という認識はないのかもしれません。
だからこそ、”生物”という存在の真髄は「調和そのもの」であり、その中に私達人類も組み込まれているはずなのです。
ただ、人類は他の生物達と大きく異なり、何処にでも移動して気温に左右されることなく生活できるし、手と知識と想像力によって道具を作ることができるし、その道具によって発展させた人類史の上に次代の人間達が新たな歴史を積み上げることもできます。
そのような能力が与えられた人類には、常に「調和」について思考と選択を行い続ける義務があります。
「うんたら主義」だの「なんたらファースト」だのと言って争いを続けている場合ではなく(※政治的な意味はありません)、宇宙も地球自然も生命も全て含めた、”調和と共存”について考えていかねばなりません。
もちろん、そこに「こうすべきだ!」という答えを見出すことは非常に難しいでしょう。
人間は10人いれば10通りの考え方が存在しますし、容易に答えを出せているなら、人類は何千年も前からとっくに平和なはずですからね。
ただ、人間もひとつの地球生命であり、自然の一部であり、宇宙生命であるということが、モンテッソーリ先生方の提示によってわかっているということは、私達にとってひとつの救いです。
だって人間が地球生命体の一部であるのなら、他の生物達と同様、生きているだけで「調和」に至ることが本来は可能だということに他なりませんからね。
とにかく思考を続けましょう。
きっかけは何でも構わないと思います。
食糧廃棄を続ける私達の隣国で紛争と飢餓の為に死を待つしかない子ども達がいる、ゴミの不法投棄によって何千何万という生物が絶滅し今も減り続けている、暴力のような物理的なものから陰口のような精神的なものまで、現代社会に蔓延っている”不和”の要素は目を開けば飛び込んでくるくらい身近に散乱しています。
どうしたらそれらを無くせるのか、どうしたらより良くできるのか。
ひとりでも多くの人々が、ひとつでも多くの生命や自然が、幸せで在り続けるため、どうか大人も子どもも思考を放棄せず「調和」について考え続けて頂きたいと存じます。
もしどうしてもきっかけが掴めない場合は、いきなり規模の大きなことから考えずに、「隣にいるひとを幸せにするにはどうしたら良いのだろうか」ということから思考を始めたら良いのかもしれません。
相手が何を望んでいるのか、相手が成したいことは何なのか、その手助けによってどの範囲の”他の人々”を一緒に幸せにできるのか。
結局のところ、「調和」の入り口って意外とその辺りなのではないかなと、私自身なんとなくそう思うのです。
ここまで言っておいてアレですが、その思考をどこまで私が実行できているかは、遥か上空まで棚上げしておりますが……苦笑
いやはや、またしても話の筋を暴投致しましたが、まあ要するに「生物って自然と調和しているすごい存在なんだよ」という話を子ども達に行いました。
「その中で自分達人間にできることは何だろうね?」という永久機関のような問題提起を子ども達に出して、早々に話を終えましたけどね。
それでもこのサマースクールを通して、私が子ども達に、1分でも1秒でも「調和」について思考する瞬間を与える機会が頂けたこと。
そこが重要なのだと思います、私より子ども達の方がずっと調和に近しい生命体なのですから。
長々と語ってしまいましたので、最後はほぼ写真で締めたいと存じます。
共存の話が終わった後は、子ども達にふたつのグループに分かれてもらいました。
便宜上、実験で使用した花の残りを無駄なく使う「押し花班」と、実験で使用した野菜の残りを無駄なく使う「お料理班」という呼び方をさせて頂きますね。
まずは「押し花班」の様子から。
電子レンジ500Wで1分ほど加熱し、水で解いたボンドを用いて容器に貼っていきます。
こちらは学研さんの「電子レンジでかんたんイキイキおし花をつくろう!」を参考にさせて頂きました。
サンプルとして私もサマースクール前に作ってみましたが、非常に簡単な上に植物もあまり色落ちせず、すごく良かったです。
そして「お料理班」の様子。
こちらはサポートにいらしてくださった先生方にほとんどお任せしてしまいましたが、野菜の味覚分類で使った調味料も総動員して、味噌汁とサラダと温野菜を作っていただきました。
作業が終わった「押し花班」の子達は、机や周りを綺麗に掃除して食卓準備。
今年のサマースクールは9:00-12:00で開催しておりましたが、全員食卓に着席したのが12時ちょうど。
少しく終了時間を過ぎてしまいましたが、子ども達の中に流れている時間をなるべく優先して活動し、感謝のうちに皆で料理を頂きました。
協力して自分達の手で作った料理の味は、12時過ぎの空腹感も相まって、格別だったかと思います。
皆にとって今年の夏の良い思い出となってくれていたならば、私としては本当に嬉しいことですね。
そんな感じで怒涛の三日間を終了致しました。
言うまでもなく、その翌日は放心状態で何も手がつけられなくなりました私です。笑
今年の夏は非常に忙殺される日々でしたので、今日日まだ台風の動向こそ気になりますが、これから残り数日間の些細な夏休みを謳歌しようかなと思います。
来週からいよいよ二学期が始まりますが、皆様どなたも体調に気をつけて、良い夏をお過ごしくださいね!
最後に少し告知だけ。
2024年9月14日(土)、イリナにて入園説明会が催されます!
詳細に関しましてはHaniさんが投稿している、ひとつ前の記事をご参照くださいませ!
リンクは下記に添付しておきますね。
以上、noteの仕様になれず14時-22時半まで費やしてしまいましたが、8,000文字にはギリギリ達しなかったのでホッとしているTOMOTからでした。