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詩歌ビオトープ026:山本友一

詩歌ビオトープ26人目は山本友一です。

そもそも詩歌ビオトープとは?
詩歌ビオトープは、詩の世界を一つの生態系ととらえ、詩人や歌人、俳人を傾向別に分類して、誰と誰が近い、この人が好きならこの人も好きかもしれないね、みたいなのを見て楽しもう、という企画です。ちなみに、傾向の分類は僕の主観です。あしからず。

この人は1910年生まれ、19歳の時に窪田空穂の創刊した「国民文学」に入会し、松村英一に師事しました。その後、香川進らと「地中海」を創刊。「国民文学」も「地中海」も、今でも続いている短歌結社なのですね。

満州鉄道に勤務していた頃に日中戦争が開戦、現地で召集されました。その頃の経験を詠んだ戦争詠が高く評価されているそうです。

さて、今回も小学館の昭和文学全集35に収められている歌を読んでいきます。

本書には、「布雲」から49首、「黄衣抄」から63首の合計112首が収められていました。

で、僕の分類ではxが20でyが4、音楽的かつ自然主義的な人になりました。

「国民文学」といえば「まひる野」と同じく窪田空穂系の歌誌なので写実重視なのかな、と思いきや、そんな感じはありませんでした。まあ、そういう歌が抜かれたのかもしれませんが。

一方で、リアリティというか、現実に根差した歌がほとんどでした。そのため、この頃の社会の情勢、あるいは戦争という目の前の現実について、一人の生活人としての気持ちが詠われている、そんな風に感じました。

おろかなる兵なりきなほ傍観に過ぎしたましひを尊しとせず

紙幣をば靴のそこひに敷き持てり子らの生死を見むと発つため

1950年の「布雲」はこのような戦争詠が多かったですが、1953年の「黄衣抄」になると比較的写実的な生活詠も増えてきて、やはりそういう歌にいいものが多いと僕は思いました。

天窓に月しらみ来る光にも覚めやすくしてひとり居の冬

あと、ねずみを詠った歌が多くて、ねずみにこの頃の貧しさや自分たちの姿を重ねていたのかな、と思いました。

襲ひ来るものの音なすねずみらを夜よひ憎む添ひ臥す妻の

ねずみの仔梁よりのぞく夜よひのこのやすらぎは沼にかも似る

あと、この歌、印象に残りました。この歌が、この人の歌い手としてのスタンスなのだと思う。

金策のほか思ひなきわれに挑むな例へば二つの世界平和論

まさに庶民派、という感じですね。

ということで、27人目に続く。

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峰庭梟
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