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詩歌ビオトープ023:窪田章一郎

詩歌ビオトープ23人目は窪田章一郎です。

そもそも詩歌ビオトープとは?
詩歌ビオトープは、詩の世界を一つの生態系ととらえ、詩人や歌人、俳人を傾向別に分類して、誰と誰が近い、この人が好きならこの人も好きかもしれないね、みたいなのを見て楽しもう、という企画です。ちなみに、傾向の分類は僕の主観です。あしからず。

この人は、窪田空穂の息子さんですね。1908年に東京で生まれ、父である空穂に師事しました。空穂主宰の短歌雑誌「まひる野」発行の際は発行編集を務め、空穂没後は主宰となりました。この「まひる野」は現在も活発に活動されているようですね。noteもありました。

さて、今回も昭和文学全集35に収められた歌を読んでいきます。

本書には、「ちまたの響」から57首、「素心蠟梅」から55首の112首が収められていました。

で、僕の分類ではxが17、yが13で「絵画的かつ自然主義的」な人になりました。

でも本当は、xが16.4だったんですよね。ただ、それだと窪田空穂と場所が被るので、一つ上にしました。ちゃんとお父さんと場所被るってのもすごいですね。

さて。短歌の方は、身の回りのちょっとした景色を詠んだ歌が多かったです。たとえば、この歌。

学園の広場に愛でし月桂樹先づ萌えいでぬ焼木(やけぎ)が中に

月余り雨なき畑に水はこぶ人の姿のゆふおそくまで

東京の焼野を跨ぐ大虹の立ちたる脚のまさやかに見ゆ

なんかは、戦争が終わってこれから平和な日々が始まる、という街の雰囲気や自身の気持ちがよく描かれた歌だと思います。

本書の解説に、この人の作風として「温和な人間味に富んだ抒情」とありましたが、すごく分かる気がします。優しい人柄が伝わってくる歌が多いと思いました。優しい歌、温かみのある歌、穏やかな雰囲気の歌を読みたい、という人におすすめです。

あと、この歌がすごいと思いました。

ゆくを待つ四十八階高層の窓べ真白く空にけぶらふ

古歌集を読む高層ビルの窓空航くごとし白雲(しらくも)の中

この歌は昭和54年に刊行された「素心蠟梅」に収められている歌です。高層ビルの一部屋で万葉集かなんかの講義をしていたのでしょうね。そのときにふと感じたことを歌にしたのだと思うのです。なので現代的な風景なのだけれど、まるで近代の短歌のような趣きがあって僕はすごく好きです。

ということで、24人目に続く。

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峰庭梟
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