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2023年TDL、大谷選手のトレードバリューを考察する
2022年オフに少ないアセットを元に巧く補強をしたLAAですが、トラウト、レンドンの怪我離脱等もあり、2023年7月15日時点で勝率は5割を割り込んでいる状況です。大谷選手の放出は不透明ながら、LAAはオファーを聞く姿勢は示しているところです。今回は大谷選手のトレードの見返りについて考察したいと思います。
〇前提
まず、第一の前提として大谷選手の保有期間はレギュラーシーズン2か月+プレーオフであるということです。したがって比較対象は主にレンタル選手となります。トレード時点で2年半コントロールできたフアン・ソト選手のような見返りはありえないというのが当noteの認識です。
次に投打で計算できる戦力という意味で前代未聞であるということです。前段とは逆にはなりますが、過去のレンタル選手トレードを基準としながらも、少なくともそれを上回るレベルの見返りは見込めるのは間違いないということです。
〇過去のレンタル選手トレード一覧
まずは過去の主なレンタルトレードを並べます。
2008年
LAA獲得 マーク・テシェイラ 当該年移籍前のfWAR 3.4
⇅
ATL獲得 ケイシー・コッチマン 当該年のfWAR 1.2
2005年 BA全体6位
ステファン・マレク
当時プロスペクトを卒業して若手主力として及第点のスタッツをあげていたケイシー・コッチマンが将来的な成長も込みでメインピースとなりました。コッチマン自身はプロスペクトとしては全体TOP20クラスでしたが、デビュー後のパフォーマンスで評価を落としていました。なお、+1人のマレクはLAA傘下トップ10内のリリーバープロスペクトでした。
2008年
MIL獲得
CC.サバシア 当該年移籍前のfWAR 2.7
⇅
CLE獲得
マット・ラポータ 2012年 BA全体23位
ザック・ジャクソン
ロブ・ブライソン
マイケル・ブラントリー
サバシアの見返りのメインはラポータでしたが開花せず、この中でPTBNLだったブラントリーだけが大きく開花しました。なお、他の2人は当時のMIL傘下ではブラントリーより上でした。サバシアは移籍後、11勝2敗のERA1.65でMILは26年ぶりにプレーオフ進出しました。
2010年
TEX獲得
クリフ・リー 当該年移籍前のfWAR 4.2
マーク・ロウ 当該年移籍前のfWAR 0.0
⇅
SEA獲得
ジャスティン・スモーク 2010年 BA全体13位
ブレイク・ベバン
マット・ロウソン
ジョシュ・ルーク
クリフ・リーの見返りのメインはジャスティン・スモーク。こちらもBA全体TOP13と評価の高い選手でした。キャリアはSEA出てから開花した印象ですが。。。ベバン、ロウソンも当時のTEX傘下では上位でかなりのパッケージでした。なお、NYYが当時ヘスス・モンテロをメインとしたパッケージを提示して決まりかけたところ、TEXがスモークを提示して逆転しました。そのモンテロもその後、ピネダとのトレードでSEA入りしましたが残念なキャリアに終わっています。
2012年
LAA獲得
ザック・グレインキー 当該年のfWAR 3.4
⇅
MIL獲得
ジーン・セグラ 2012年 BA全体55位
ジョニー・ヘルウェグ
アリエル・ペーニャ
グレインキーにはLAAが傘下TOP10内の3人を放出しました。メインは当時全体55位だったジーン・セグラです。レンタルと言えども傘下TOP10内3人は驚きです。セグラはその後、ARIで開花し、昨年までソリッドな内野手として活躍しました。
2014年
OAK獲得
ジョン・レスター 当該年のfWAR 3.8
ジョニー・ゴームズ 当該年のfWAR 0.5
⇅
BOS獲得
ヨエニス・セスペデス 当該年のfWAR 2.5 残り3.5年
コンペティティブバランスラウンド B
ジョン・レスターの見返りはFAまで3年以上あるバリバリ主力だったセスペデスとドラフト指名権でした。TOP100プロスペクト+2~3人のプロスペクトパッケージと3年以上残るMLB主力が概ね同じくらいと考えるとMLBでレギュラーを張ることの価値の大きさが分かります。
2015年
KC獲得
ジョニー・クエト 当該年のfWAR 3.1
金銭
⇅
CIN獲得
ブランドン・フィネガン 2015年 BA全体55位
ジョン・ラム
コディ・リード 2015年 BA全体34位 ※移籍後
クエトのトレードもTOP100レベル1人を含む3人。ジョン・ラムとリードも傘下TOP30でしたが、リードはギリギリTOP30に入っていたレベルで移籍後に大きく伸びました。ただ、いずれもMLBではイマイチなキャリアに終わっています。
2015年
TOR獲得
デビッド・プライス 当該年のfWAR 4.1
⇅
DET獲得
ダニエル・ノリス 2015年 BA全体18位
マシュー・ボイド
ハイロ・レイバート
プライスの見返りは当時トッププロスペクトのノリス+2人。ノリスがいるために残り2人はそこまで上位のプロスペクトではありませんでした。しかし、実際にはノリスが鳴かず飛ばずでボイドがプチブレイクしたにとどまりました。個人的にはTBファンとして1年経ってノリスが手に入るのかと地団太を踏みましたが、今思えば、スマイリー・フランクリンの2人の若手MLB選手+アダメスという将来のトッププロスペクトは正解でしたね。
2017年
LAD獲得
ダルビッシュ有 当該年のfWAR 2.7
⇅
TEX獲得
ウィリー・カルフーン 2017年 BA全体92位
A.J. アレクシー
ブレンドン・デービス
ダルビッシュのトレードは当時TEXフロントが苦戦してデッドライン過ぎてから報道が流れたと記憶しています。苦戦しただけあってかなり値切られた印象のパッケージです。カルフーンは控え選手としてジャーニーマンとなっています。残り2人は当時10代のA以下のマイナー選手でしたのでパッケージの2~3番手も相当妥協を強いられたことがうかがわれます。
2018年
LAD獲得
マニー・マチャド 当該年のfWAR 4.4
⇅
BAL獲得
ユスニエル・ディアス 2019年 BA全体37位 ※移籍後
ディーン・クレマー
ブレイビック・バレラ
ライラン・バノン
ザック・ポップ
マチャドのトレードもまた見返りが小さいという批判を受けていた記憶があります。2010年代半ばからプロスペクトを守るスタンスが強まった印象です。ディアスは2018年シーズン中に評価を上げましたが開花しませんでした。この中ではクレマーがBALのローテに成長しています。
2021年
LAD獲得
マックス・シャーザー 当該年のfWAR 2.5
トレア・ターナー 当該年のfWAR 4.0 ※残り1年半
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WSH獲得
キーバート・ルイーズ 2021年 BA全体53位
ジョサイア・グレイ 2021年 BA全体68位
ドノバン・ケーシー
ヘラルド・カリーヨ
最後にターナー付ではありますが、シャーザーのトレードです。2人セットということもあり、全体TOP100クラスが2人もいました。2人とも苦戦していますが、グレイは今季やや成長が見られます。実は大谷トレードの見返りのヒントはこのトレードにあると考えています。
〇結論
大物選手のレンタルトレードの一覧ですが、個人的には2012年までと2014年以降でプロスペクトパッケージのメインが小粒になった印象があります。メインが全体TOP100でも50位には届かないか、セスペデスのようにMLB主力1人に切り替えるなど売り手が妥協を強いられている印象です。
また、レンタルに限らないトレードも合わせてみると、レンタル選手にはプロスペクトを出し惜しみする一方、翌年以降もコントロールできる選手にはプロスペクトを出し惜しみしないというのが最近のトレンドのようにも見えます。
個人的にはシャーザーとターナーが合わせてfWAR6.5だったところ、シーズン前TOP100以内だったが、TOP50には入らなかった2人というのが印象的です。大谷の今季のfWARが6.2である点を考慮すると、シャーザー+ターナーと同水準かやや劣るパッケージになるのではないかと推察します。もちろん、大谷は1人で6.2のWARを稼ぎ、ロスター枠も1つしか消費しないのですが、ターナーがトレード翌年もコントロールできたメリットの方がさすがに大きいと思います。
このように考えると、大谷の見返りは以下のようになると思います。
2023年
チームX獲得
大谷 当該年のfWAR 打者4.3 投手1.9
⇅
LAA獲得
元全体TOP50以内でデビュー後、ソリッドな若手 1人
※ケイシー・コッチマン、ニック・マドリガルのようなタイプ
全体TOP50~100以内プロスペクト 1人
上記以外で傘下TOP10内プロスペクト 1人
上記以外で傘下TOP30内プロスペクト 0~1人
上記以外で傘下TOP30外プロスペクト 0~1人
いずれにしても既にMLBデビューしてある程度計算できる選手1人は必須のように見えるので、その選手の水準がどの程度であるかがポイントのように感じます。もちろん、既にCY争いだったり、SS獲得が期待できるような選手は無理にしても、野手ならOPS.700台後半~800台前半、投手ならERA3.50~4.50のレベルで頑張っている若手は手に入るのではないでしょうか?2012年以前もパッケージのメインだったトッププロスペクトのほとんどは戦力になりませんでしたが、既にMLB主力だったセスペデスは一応戦力となり、転売にも成功していますので、大谷トレードを失敗させないためには、メインの若手の質が一番重要になるでしょう。
※画像はMLB公式