見出し画像

BTSはButterのようにスムーズに「グラミーの主役」をさらっていった

BTSが大好きだ。なんてかっこいいんだ。BTSを知らない人は恋に落ち、すでに恋している人は底なしの沼に落ちる。彼らのパフォーマンスはいつも、計算しつくされた演出を背景に、体ひとつで歌って踊って音楽の喜びをふりまく。ジャスティン・ビーバーだって立ち上がらずにはいられない、エンターテインメントのすべてを目いっぱいつめこんだキラキラしたステージ。そう、BTSはいつだって最高にかっこいい

今を代表する音楽界のスターの面前で、グラミー受賞を待つノミニーとしてステージに立ち、BTSの音楽を世界に届ける。彼らの目標のひとつであっただろう瞬間が、2022年4月4日ラスベガスのMGMグランド・ガーデン・アリーナで現実のものとなりました。

やりたいことを限りなく自由に表現できるホームタウンと違って、様々な制約が課されるだろう授賞式。私たちを驚かせ続けるBTSはいったいどんなステージを見せてくれるんだろう。前夜からワクワクが止まりませんでした。っていうのは真っ赤なウソで、受賞できるかどうかの緊張のドキドキに襲われて、パフォーマンスのことまで全く気が回ってませんでした笑。

当日の進行表を見てやっと、どんなステージになるんだろう。どんな風に登場するんだろう。と現実味がわいてきたところの、

これ

グラミー賞のステージで真剣な面持ちでゲームに勤しむジン。じゃなくて明らかになにかを企んでますね。そしてこれ。

降りてきた。天井からJKが降りてきた。この役目を果たすのに、これほどぴったりな人を私は知らない。高いとこ大好き!って目が語ってます。口角がワクワクを隠せてない。こんなに宙づりが似合うアーティストいます?BTSのやんちゃ大将はグラミーでも顕在です。

からの

ラスベガスに現れた正装の窃盗少年団。『レインマン』や『カジノ』など数々の映画の舞台になっているドラマティックな街・ラスベガスにぴったりのスーパークールなコンセプト。オーシャンズ11ならぬオーシャンズ7ってとこでしょうか。

そして

2022年度ベストカップルが早くも決定。強い顔面の対決。初ノミネートのグラミーで3部門を受賞、2021年を代表するアーティストのオリヴィア・ロドリゴも、テヒョン氏と並ぶと華奢で可憐なティーンネイジャー、とってもかわいらしいですね。

テヒョンが投げたカードを「飛んできたものはなんでもキャッチする」JKが見事に受けとり、いよいよショーがスタート。観客にまぎれたクリミナル集団がそっと動き出す・・・って、曲想を3D化したようなオープニングです。

話題騒然とはこのこと。この日のダンスブレイクは、まちがいなく伝説級でした。007クラシックっぽい音楽を背負って、美術館にはりめぐらされたレーザーの上下を、飛んだり跳ねたりスライディングしたりと複雑極まりないステップでかいくぐる少年団。ぶっちゃけほふく前進した方が簡単・安全なのでは?という邪念はさておき、このジャケット芸。いやこれどうなってんの?スーツが合体してギターになってまた分解。意味が分からない。BTSはラスベガスでマジックまで習得したのでしょうか。

美術館(想定)のセンサーを解除した後、背後の壁がBTSの歌詞や落書きでどんどん塗りつぶされていくのが気持ちよかったですね。お堅い風情の絵画を盗んで、代わりに自分たちの作品を残していくのって、痛快じゃないですか?保守的なグラミーに風穴を開けてるみたいにも感じます。

やろうと思えばもっとラスベガスっぽいあしらいにできるところを、韓国語の歌詞を投影したり、過去の作品を映し出したりするところもBTSらしい。常にARMYへの思いを盛り込む姿勢は、どんなビッグな場に出てきても一切ブレないですね

見るからに難度が高そうなダンスブレイク、リハーサルでは4回に1回しか成功しなかったとか。レーザーのパートまで含めると一度も成功してなかったらしい。しかもメンバーの1人はケガ、2人は前日まで合流できずって、想像だけでプレッシャーで死ねる。自分だったら一晩で総白髪になること確実なシチュエーション。そこを本番でビシッときめてくるメンバー、賞賛に値する言葉がみつかりません。

全員「すごく緊張した」と口をそろえていたけれど、ダンスも手や足のさばきがキレッキレで本当にかっこよかった。演出とパフォーマンスのバランスもベストでしたね。演出は凝っていたけど、BTSの身体性ありきのものだった。自分たちで歌も踊りもできて、体ひとつで音楽を表現しきれるところがBTSの真骨頂。それが際立つステージングでした。

ミッション用の黒ジャケットを脱ぎ捨てたら、一般客(セレブ)に紛れるための華やかなジャケットに着替えて再登場。脱いだり着たり忙しいのはスターの証拠。ここでジンも合流できてホッ。

ジンがステージにいないことに、最初すごくショックを受けてしまって。指を骨折していたのは知っていたけど、突き指的なものをイメージしてしまっていたのか、ジンが踊れない状態だってことを全く想像できていませんでした。ジンの悔しい気持ちを想像するとみぞおちのあたりがキューッとなるのですが、これもきっとグラミーの忘れもののひとつ。いずれ回収のときが訪れるのだろうとポジティブにとらえなおしました。

最後は円形のお立ち台に集まってクライマックス。セレブも総立ちですよ。そりゃそうですよ。これが世界のBTSですよ、皆さん。司会トレバー・ノアの「Are you kidding me, what was that?! 」というコメントがすべてを物語っている。これは最大の賛辞と受け止めていいですね。

いまこのステージを見せられるアーティストって他にいないんじゃないですか。思いつかない。ひきの映像でパフォーマンスを見てしみじみと感じたのは、シュッとした大人の男性が並んで歌って踊るのって、それだけでめちゃくちゃかっこいいっていうこと。アメリカの偉大な文化ミュージカルは「歌って踊る」の最たるものだし、古くはテンプテーションズやジャクソン・ファイブなどのモータウンのグループも、歌って踊るかっこいい人たちの集まりです。

BTS以外のパフォーマンスでは、敬愛するGAGA様のステージが圧巻でした。あの歌唱力と愛にあふれるたたずまい。大きなリボンのドレスもGAGAっぽいくてかわいかった。ジャズが好きなテヒョンさんはGAGA様の生歌を聴けて喜んでるだろうな~と思いながら見てたところ、

なんと

こんなことに!好きと好きの邂逅。率直にいって嬉しい。なんならその場所を代わってくれよテヒョンさん。いや代わらなくていい昇天してしまうから。女神のようなGAGAと人の形をしているピュアソウルのテヒョンさん。来年のグラミーのBest Pop Duoノミネートされたい組み合わせです。

ひとりでGAGAのところに歩いていって、胸に手をあてて少し首を傾けながら気持ちを伝えるテヒョン氏の愛らしさたるや。彼しか持ちえない天性の間合い。この人を好きにならない人って人間界にいます?オーシャンズ11ならきっと人たらし担当です。開かない門も彼のためならきっと開く。

見てくださいGAGA様の慈愛に満ちたまなざし。歌姫の姿をした女神ですよ。

眉尻も目尻も下がっているのは、テヒョン氏が最上級に幸せなときのしるし。

受賞に関しての自分の気持ちは去年とまったく変わらずで、メンバーが欲しいと言っているから、獲ってほしかった。喜ぶ姿が見たかった。ただそれだけです。今年の方がメンバーの期待も大きかったのではないかな。去年は初めてのノミネートで期待半分、とれたらラッキーくらいの気持ちだったかもしれない。今年は2年連続ノミネートで、これはちょっといけるかもって思うじゃないですか。ジミンも「落選して初めて、自分が賞を欲しかったという気持ちに気づいた」と。ちょっとは空気読んでよ、グラミーよ。

しかしアーティストとファンの数だけ、空気って存在するんですよね。それぞれの文脈があり、それぞれの価値観の中にグラミー賞がある。ジャスティン・ビーバーだってPeachesっていう特大ヒットをひっさげて8部門にノミネートされたけど、無冠に終わった。きっとファンもグラミー空気読めよオイって思ってたはず。

BTSがノミネートされた「Best Pop Duo/Group Performance」の勝者となったドージャ・キャットにいたってはパフォーマンスなし。ドージャのファンからすれば「歌わせろよオイ!」ですよね。アーティストにとって、グラミーの記録に残る受賞と、人の記憶に残るパフォーマンスはどちらも大切。もしBTSが「パフォーマンスなしで受賞」だったら、きっと「嬉しいけどステージで自分たちの音楽を見せたかった」って思ったんじゃないかな。

受賞の喜びを涙ながらに語るドージャを見つめるるSUGAの表情には、なんとも表現しがたい温かさがありました。目の色が柔らかくて、口がちょっと半開きになっていて、「ああ、いいな」ってつぶやいているような表情。受賞していいなの気持ちと、ドージャが喜んでいて良かったなと、いろいろ混じっているように感じました。音楽仲間を見守る、同志のまなざしですよね。ジミンが「ドージャがとってくれてよかった。感動した」と話していたのも本心じゃないかな。賞を獲れなくて残念な気持ちと、ドージャが喜ぶ姿を見て感動したの気持ち。どっちも存在してるんじゃないのかなと。

BTSとグラミーの関係は、最初はプレゼンターとして、次はコラボレートで。初めてのパフォーマンスは韓国から。2度目のパフォーマンスはステージで。心残りがまたできたグラミーだけど、毎年ひとつずつステップアップしてきたように、きっと来年回収するんでしょうね。今回獲れなかったらいつ獲るのくらいの気持ちでいたけど、音楽活動を続ける限り挑戦できるチャンスは終わらない。むしろ何度も挑戦し続けられる状況にいてくれる方が嬉しいかも。

レッドカーペットのスーツ姿もすてきでしたね。短ラン・ボンタンの学生が1名混じってますけども。RMとテヒョンはこれしかない!って決まり具合だし、SUGAがやや意外な白スーツなのもよい。すごく似合ってます。白スーツの二人の足元がスニーカーでカジュアルなのも粋ですね。ジンがキャメルっぽいスーツにサックスブルーのネクタイを合わせてるのも品格があって素敵だった。

セレモニー全体を通してBTSはきちんと敬意を払われて迎えられていたように見えたし、たくさんのアーティストのライブを見たり、メガンと再会したりと、メンバーも授賞式を楽しめたんじゃないかなと思います。

余談ですが、グラミー後にRMがvliveで話したこと「もっと曲作りやアルバム制作に関与しないと」に対して思ったこと。「それが自分たちのゴールのひとつ」というポジティブな意味ではあると思うんですけど、私は、彼らがどこかの誰かに対して、何かを証明する必要はないと思ってます。なぜならBTSはすでに素晴らしいから。そのままで十二分に素晴らしい存在だからです。

ポップミュージック界の一部で、アーティスト性を楽曲制作の軸で測ろうとする風潮がありますけど、あれなんなんですかね。そもそも曲作り=アーティストって感覚、単眼的すぎませんか?曲を作りたい人は作ればいいし、優れたソングライターやプロデューサーとコラボしながら音楽活動するのもよい。

曲作りとデリバリーを両方やりたい人はやればいいし、どっちかに専念する人がいてもいいんです。自分の個性と才能を発揮できる方法を自由に選べばいい。大切なことは良い音楽が日の目を見て、人々の生活を豊かにすること。そこに一線ひくのってなにか意味があるのかな?って思います。

逆に、BTSのようなアーティストは、優れたソングライターやプロデューサーの音楽を世界に届けられる役割も担ってるといえる訳です。いわばプラットフォームとなってくれるアーティストがいることによって、音楽に携わる多くの人にスポットライトが当たるし、お金も回る。音楽業界が厚く豊かになっていくわけですよね。

トニー・ベネットは「I Left My Heart in San Francisco」でグラミー受賞してますが、作曲してません。アレサ・フランクリンの「I Never Loved a Man the Way I Love You」だってソングライターは別にいる。彼らを「曲作りに関与してないから一流じゃない」って評する人います?

もっというなら、クラシック音楽のピアニストだって300年前に作られた曲を演奏してるし、有名バレエ団のトップダンサーだってコレオグラファーが振り付けた作品を踊っている。ポップミュージックの一部ファンが「作家性が重要」みたいな理屈を持ち込んでくるのって謎すぎます。そんなこと主張してる人に限ってなんのクリエイターでもない気がするし。

BTSが自作曲・自作プロデュースアルバムを作りたいなら、どんどんやって欲しい。だけどそれは自分たちのためであってほしい。自分たちの喜びのため、自分たちの音楽のため、自分たちの人生のために。何かを証明する必要はない。あなたたちはすでに素晴らしいんです(3回目)。

なんか鼻息荒くなっちゃいましたけど、言いたいことはひとつ。Let the haters hate, let the lovers love. グラミー早よ公式の動画あげて。です。

みんな大好きSilk Sonic兄さんでも見て落ち着こう…


いいなと思ったら応援しよう!