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Grammy Awardsの1か月後に思い返すBTSの品格

グラミー賞から1か月、BTS『Dynamite』の公式動画がやっと出ました。やっと見返せる。あの日スマホの5.8インチのディスプレイで見つめたBTSの輝かしいパフォーマンスが。

ひと月前、3月16日の早朝。BTSがノミネートされたBest Pop Duo/Group Performanceの受賞者が発表される午前4時にはやっぱり起きれず、でもいつもより少し早い5時過ぎになぜかパッチリと開いた両目。目を覚ますと同時にスマホをつかんでTwitterのTLをチェック。結果を把握して、寝起きの半開きの口から「ハァ?!」「チッ」「〇ソッ」とするするとこぼれ出る小汚い言葉たち。あーあ、残念。いやー、残念。受賞して喜ぶメンバーの姿が見たかった。口やかましく大騒ぎしながら輪になってニコニコぐるぐる喜ぶ姿が見たかったなあ。なんでだよグラミーめ。

全く気持ちが切り替わらないまま仕事開始。こうなったら仕事用のデカいモニターでBTSのパフォーマンスを見届けてやる。右のモニターにブラウザを表示させてWOWOWの配信チャンネルをクリック。なのに画面が固まってピクリとも動かず、静止画でお届けされる第63回グラミー賞授与式。なんでだよWOWOWめ。この日のためだけに配信契約を結んだのに。なぜだかスマホではさくさく配信されていたので、モニター下にスマホを置いて、チラチラ横目で見ながら仕事のフリを続けることに。

歌ウマ星人のガーデンパーティみたいなノリで進んでいく授賞式。グラミー賞をフルで見るのなんて何年ぶりだろ。なんだかんだで楽しいもんですね(仕事中)。でも頼むからMTGと被る時間帯には出てこないでね少年団。という願いを天が聞き入れてくれたのか、待てど暮らせどBTSの皆さんは出てきません。「次はBTS!」ってコレ何回目なの。CMまたぎという伝家の宝刀を抜いては懐に戻すを繰り返すCBS。なんでだよCBSめ。宝の安売りはおやめなさいよ。どこの国のテレビマンも考えるこたあ一緒ですね。視聴率の圧は国境を越える。ブツブツ言いながらもアンダーソン・パークとブルーノ・マーズの歌にうっとり聴き惚れたり、WAP再現ステージを「やりおった」とガン見したりしながら待つこと3時間。登場しました我らが少年団、BTSが!

まばゆい。まぶしい。みんな輝いている。なんてかっこいいんだ。歌がうまくて、ダンスがうまくて、そしてなんとチャーミングな魅力にあふれていることか。華やかなのに飾ってない。人懐っこくて清潔感があって。ひとり一人の伸び伸びとした個性がはじける。メンバーの嬉しい!楽しい!という空気がぱんぱんに膨らんでいる。大舞台でもやんちゃ感とユーモアがこぼれ出ているのが愛しい。このステージを見て笑顔にならない人がいるだろうか。世界の皆さん、こんばんは。こちらがBTSです。


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遂に来た!たった一人で登場したジョングクの背中を見たとき、言葉にしがたいような嬉しさと誇らしさがこみ上げました。片足2回転をキメて軽々と階段をおりてくるジョングク。なんで声がぴくりともブレないの。この夜は絶対に成功する、ここで確信。

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rasp声も絶好調なJ-HOPEさん。全員コンディションばっちりで、顎クイッの止めもシャープ。気合入ってるな…!

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いつもより余計に回っておりますジミン氏。残した首を音に合わせて後からグイッと持ってくる首使いの神。

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よっ顔天才。大一番でも忘れない遊び心、余裕たっぷり。シャツとピアスをお花モチーフで合わせてるのかな?

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よっスタイル超人。この日のLet’s go!はいつもより重量感があったな。

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ミン!ユン!ギ!踊るSUGA大復活。RMが一礼した後に、ここの背景で登場するButter色のSUGAの画がとても好き。

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ジンも今日はひときわ声がクリア。全員声の出が素晴らしくて、音だけで何度も聴き返してます。映像だとどうしてもダンスを追ってしまうけど、歌だけ聴いても十分楽しめるクオリティ。前列3名の右足の角度がコワイくらいに揃っている。どれだけ練習を重ねたのか。

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移動だ移動。ここワクワク高まりましたね。どこに連れていってくれるのかな?って。非常階段を上って着いた先は、

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屋上!夜景!風が吹いてる!

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うわ、かっこいい!Shining through the city with a little funk and soulを都市レベルで再現してる。心が躍るってこういうことなんですね。いつものように仕事セットの前に座っていたけど、この瞬間だけは彼らと一緒にソウルの夜空を旅していた。

メンバーと一緒にいくつもの幕をあけてたどりついたフィナーレは、ソウルの夜景がきらめく屋上。目も耳も楽しませて、夜空に吹く風さえ運んで感じさせてくれる最高級のエンターテインメント。この日のこの瞬間のために『Dynamite』が作られたんじゃないのか、そんな気持ちになるくらい完璧。グラミー賞パフォーマンスにこれほどふさわしい舞台はないですね。心にはりついていた小汚い不満をいとも簡単に吹き飛ばしてくれました。


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スタジオではCBSのセットを完璧に再現。天井を埋め尽くすお花が美しくてため息が出ました。韓国の国花「ムクゲ」だそう。藤の花も混ざってるみたい。演出は非常にシンプルで、お花とDynamiteイメージの火柱と色控えめのライティングのみ。シンプルさがかえって、伝統ある音楽番組のステージらしい重厚感を生んでいました。メンバーが着ていたジャガードのスーツも、色はポップだけどスタンダードな重みがあって式典らしい雰囲気。ヘアもかっちりめにセットして、ハンドマイクでのパフォーマンスも雰囲気づくりに一役も二役も買ってましたね。

BTSは事前撮影した映像での登場だったので、いわば制約なしで何でもできちゃう状況。BTSチームのクリエイティビティと技術力をもってすれば、世界を驚かせるような仕掛けや斬新な映像も見せられたはず。でも奇をてらわず場を壊さず、権威あるイベントへの敬意を忘れずに、視聴者が違和感なく授賞式を楽しめるように。でも最後にはあっと驚くような展開も見せてくれて。彼らのこういう姿勢が大好きです。

BTSのパフォーマンス後、司会者トレバー・ノアは「賞をあげたいくらい素晴らしいステージ」と絶賛。


授賞式の後には、発表の瞬間をとらえた動画がシェアされました。良い時でも悪い時でも、こうやって全部共有してくれるんですね。

前列左端の若頭の貫禄よ。緊張、期待、落胆、色んな想いや大きな感情が去来しただろうけど、すぐに笑顔でお互いをたたえ合うメンバー。彼らの品格ある姿を見て、小汚くぼやいていた自分が少し恥ずかしくなりました。少しだけね。

グラミーのノミネートや選考結果には色んな意見がありますが、賞レースってまあこんなもんかな、という感想。アカデミー賞でも同じような議論は度々起きてますしね。人間の行動って「予想どおりに不合理」なもの、時や場所が違ってもだいたい似たようなもんです。

グラミーのミッションは授賞式を通した音楽業界の活性化と継続的な発展というところだろうと思います。クリエイターに功績を称える栄誉ある機会を提供し、リスナーに新しい音楽と出会う機会を提供する。グラミーの命綱ははミュージックシーンへの影響力と権威性の維持なので、賞を単なる人気投票やセールスランキングにはしたくない。かといってマーケットから離れすぎると実態を伴わなくなって、世間の関心が得られなくなる。基本的には「俺たちのお眼鏡にかなった子に賞をあげる」大会、そことマーケットとのバランスをとりながら今に至る歴史があるんだろうと思います。

BTSが2年前にプレゼンターとして登場したのも、去年ノミネートがないにも関わらずステージに立ったのも、どちらも急に決まった話だと聞きます。これ、大きな「数字」を持つBTSを無視できなくなっていることの表れじゃないかとにらんでいます。数字=影響力なので。特に若年層の支持とワールドワイドのファンベースは、視聴者数減少という課題を持つグラミーが開拓を強化したい層なんじゃないかと。

グラミーは2020年最も売れたアーティストの一人The Weekndを完全スルーするくらいなので、アジアのボーイバンドを無視するのは簡単なこと。そうできなくさせるだけの影響力をBTSが持っていて、実際に彼らを動かしていること、シンプルにすごくないですか。私はグラミー賞はもう全然追っていなくて、毎年「フーン」と結果を見ては気になるアーティストを聴いてみるくらい。だけどBTSが「グラミー賞がほしい」と思うなら応援するし、何より彼らが喜ぶ姿が見たい。まあグラミーが彼らに敬意を払わないようなことをしでかしたら、思う存分、小汚くブツブツ言いますけど。


Screenshot_2021-04-22 BTS、テイラー・スウィフトetc 、グラミー賞2021のレッドカーペット・ルックをチェック。

レッドカーペット、RMは高級そうなパジャマで登場。寂しくならないようにクマちゃんがついてます。(※注:ヴィトンの秋冬コレクションです)

WOWOWに長年加入しているサブスク貴族の友人から「グラミー賞見たよ」と連絡があって。特に音楽好きという訳でもない友人が「BTSはちゃんと最後まで見た」と言うので「ありがとう」と誰目線か分からないお礼を述べつつ「でもなんで?」と尋ねたら「だって良い曲だったから」と。『Dynamite』については、もうこの言葉に尽きるなと。

新曲『Butter』が今月リリースされることが発表されたばかり。今年は『Dynamite』、来年は『Butter』でメンバーやARMYの皆さんともう一度グラミーを楽しみたいですね。音楽界の重鎮やセレブリティ、メディアでいっぱいになった会場でBTSがパフォーマンスをして、ステージで受賞する姿を見守って、「去年は壮大な前フリだったんだな、グラミーめ!」ってキレイな言葉で喜べたら最高です。



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