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報告が遅い人のメンタルモデル3パターンと対策
Engineering Manager Advent Calendar 2023の19日目の記事です。
こんにちは、HRBrainの川田です。
社内のテックリードとの1on1で期待値について話をしていて、気付きがあったので記載します。
期待値とは
まず期待値という言葉の定義を確認します。
1 A1,A2,…,Anの起こる確率がp1,p2,…,pnであり、それらが起こった場合にx1,x2,…,xnの値をとるとき、x1p1+x2p2+…+xnpnの値をいう。例えば、くじ引きで、1本のくじに期待しうる賞金の平均化した値。
2 《1から転じて》物事に対する期待の度合い。「次の政権に対する—が高い」
今回は物事に対する期待の度合いの2を対象とします。
AさんがBさんにあるタスクを依頼したときに、Aさんには「Bさんはこれくらいの品質/コスト/時間でタスクを実行してくれるだろう」という期待の度合いを、期待値と呼ぶことにします。
よく言われるベストプラクティス
仕事ではよく、こまめに報告することが良しとされます。
仕事だけでなく、誰か他の人と関わるゴールのあるタスクの場合は全て共通しているかもしれません。
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タスクを依頼したAさんの期待値と、Bさんの実際のタスク進捗にギャップがあるのであれば、ギャップが小さいうちに埋めておくことで最終的な成果は最大化します。
しかし実際には報告が遅かったり、タスクを依頼する側の人がこまめに確認しないと報告が出てこないというケースをよく見かけます。
このような場合、どう働きかけるとより早く報告をしてもらえるのでしょうか。より良く働きかけるために、まずは報告が遅い人のメンタルモデルを考えてみます。
報告が遅い人のメンタルモデル3パターン
報告を早くすることが良いと理解していれば、早く報告するはずです。
そのため報告が遅い人は遅く報告することが良いと考えていると仮定し、報告を遅くすることによるメリットがあるケースを考えてみます。
パターン1: Bさんが自分の実力を過信している場合
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Aさんの期待値よりもBさんの実際の成果の方が大きくなるとき、時間の経過と共にポジティブなギャップが大きくなります。Bさんがこのように考えているときは、できるだけ遅く報告する方が良いということになります。サプライズプレゼントを届けるような気持ちでしょう。
パターン2: 期待値と成果が一致している場合
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Aさんの期待値と、Bさんの実際の成果が全くズレていないケースを考えます。この場合は、いつ報告してもギャップが無いので早く報告するメリットはありません。もしかしたら最後まで報告することが無いかもしれません。
タスクが完了してもずっと報告が無いときは、自分の実力は周囲の人から完璧に理解されており、実力=期待値と考えている可能性がありそうです。
パターン3: Aさんの期待値が時間に依らず一定の場合
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最後に、Aさんの期待値が一定のケースを考えます。Bさんがタスクを振られた際、最初から最終成果物の品質を求められていると思い込んだ場合にパターン3のような思考になります。この場合は時間の経過と共に徐々にギャップが小さくなるため、報告を遅くしようという発想になりそうです。
ジュニアなメンバーは自分自身が他の人へタスクを依頼した経験が少なく、タスクを依頼する側がどのような期待をしているかを想像することが難しいでしょう。そのような場合に時間軸に依らない一定の期待値と思い込んでしまうことがありそうです。
ちなみに、この3のパターンが案外多いんじゃないかという話でTLと盛り上がったのがきっかけで本記事を記載することにしました。
タスクを依頼する人ができる対策
タスクを依頼する人がいずれのパターンだと考えていたとしても、タスクを依頼する人が以下の行動を取ることで期待値と実際の成果のギャップを最小化させることができます。
1.時点ごとの期待値を伝える
タスクを依頼する際に、いつ時点でどういった成果を期待しているかを伝えることで、期待値の時系列の推移を齟齬なく伝えることができます。
例えば「来週までにどのように進めるかを計画して、再来週から実装開始して、その次の週くらいには完了できることを期待しています」とあらかじめいくつかのポイントでの期待を伝えると、最初の週は立てた計画の内容を報告してくれる可能性が高まります。
最終成果物の期待値だけを伝えると、パターン3に陥る可能性があるため時点ごとで伝える方がより良さそうです。
2. ギャップを伝える
実際にタスクを進めると、完全に期待通りということは起こりにくく、ほとんどの場合は期待値とのズレが生じます。
ギャップに気付くのが遅くなればなるほど修正は困難です。もしかしたらギャップに気付きさえせず、次のタスクを着手するケースもあるかもしれません。そのためギャップに気付いてもらうことが重要です。
現状とのズレを検知した時点で即座にギャップがある旨を伝えることで、タスクを進めている人はギャップに気付くことができるようになります。
3. その上で、早く報告してほしいと伝える
ギャップが伝われば、そのギャップを埋めるための方法を理解するステップに進めます。
どのように進めたらお互いの認識のギャップに早く気付けるかをディスカッションすることで、早く報告することがより良いよねという着地点に持っていきやすいと思います。
あらゆる行動変容に共通していることですが、上司からの指示になるよりも行動者側の発想で導き出した方がより前向きに行動できるので、できるだけ本人から引き出せるように会話を進めるとより良さそうです。
まとめ
以上、報告が遅い人のメンタルモデル3パターンと対策でした。
仕事ではもちろん、夫婦間や子育てや友人とのやりとりでも活用できるはずです。日々の生活の中でもっと早く報告がほしいなと感じた際に解決のきっかけになれば幸いです。
おしまい。