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Affinity Designerで同人誌の表紙を作る

Affinity Designerで同人誌の表紙を作ろうと思って調べてみたところ、なかなかコレ!というオタク向けの記事が見つからなかったので、備忘録も兼ねて記事にしました。
前段がそこそこ長いため、「実際どうやって入稿用ファイルを作ってるんじゃ!」という方は「Affinity Designerで同人誌の表紙を作る」から先だけ読んでください。
ちなみに結論から先に言うと、表紙を自作したいタイプの字書きオタクにとってAffinity Designerはめちゃくちゃ「あり」なソフトです。ご参考まで。

※この記事では作業画面の例として二次創作同人誌の表紙画像が出てきます。何卒ご了承ください。

グッバイAd●be、ハローAffinity

※本項目は読み飛ばしていただいても大丈夫です。

同人誌作りを嗜む者にとって、切っても切れない存在といえる画像編集ツール。
メジャーなところではやはりフォトショやイラレといったAdobe製品(印刷所も大抵この2つを前提にしていますね)、それからクリスタやメディバンペイント、最近ではCanvaや、同人誌表紙メーカーみたいなオンラインツールを使う方もいるでしょうか。
中でもやはり多くの印刷所でフォローされており安心感があるのはフォトショ・イラレのAdobe勢。
……がしかし、同人誌の表紙を作る目的で手を出すには、価格面でも機能面でも大変ハードルが高いツールであることは確か。

またCanvaや同人誌表紙メーカーは基本無償で使え、しかもデザインセンスやスキルがなくても何となくいい感じの表紙ができるのですが、そもそも完成された素材ありきの部分が大きく、手軽な反面ジャンルや作風によっては使いづらい場面もあります(たとえばCanvaは素材の方向性がわりと今風&お洒落に特化しているため、現代物のラブストーリー等だと一発でいい感じに決まるメリットはあるものの、時代物やミステリー、ホラー、その他恋愛・青春要素を含まない同人誌等には使いづらい印象を受けました)。
なおクリスタとメディバンペイントは使ったことがないため、コメントを控えております。ごめんなさい……。

いずれにせよ画像編集ツールといえばやはりAdobe製品が第一選択であり、私も長らくフォトショと格闘しながらどうにか同人誌の表紙を作ってきました。
しかしながら毎月のサブスク料金がなかなか高額であること、更に生成AI機能が追加されたあたりから洒落にならないぐらい重くて使いづらくなってきたため、この際別のツールに乗り換えようと、Adobe CCを解約しAffinity Designerの試用版をインストールして使ってみた次第です。まぁAdobe税自体は今もAcrobatのために払い続けているのですが。

ちなみにAffinityは試用版といっても機能制限なく使え、また202410月現在も6ヶ月間無料トライアル開催中のため、気になる場合はダウンロードしてじっくり試すことができます。

Affinity Designerとは?

さて、Affinity DesignerはSerifというイギリスの会社の画像編集ソフトで、一般的にはイラレの代替候補だと言われています。もうだいぶ有名になってきているので、名前を聞いたことがある方も結構いらっしゃることでしょう。
2ヶ月ぐらい触ってみた主観でざっくりいうと、『イラレとフォトショの機能を絞っていいとこ取りしたソフト』という印象です。
UIはイラレっぽいので、おそらくAdobe製品からの乗り換えユーザーは直感で何となく使えるのではないかと思います。そして更に言うと、私のようにAdobe製品を中途半端にしか使えなかった人にこそ『ちょうどいい塩梅』のソフトなのではないかとも感じています。
個人的には、かなり推せるソフトだなという感触。
Canvaでは物足りない(あるいは作風に合わない)という方は、選択肢としてちょっと試してみると良いかもしれません。
大事なことなのでもう一度言いますが、202410月現在も6ヶ月間無料トライアルキャンペーンは継続中です

Affinity Designerの強み

  1. サブスクではなく買い切りである
    →まあこれですよ最大のメリットは。おい聞いてるかA社。
    破格の50%オフ(やってたんです、2024年夏頃に)は残念ながら終わってしまいましたが、過去の状況を鑑みるに、ブラックフライデーを狙うとかなりお得に購入できると思います。というかこんな記事書いてるくせに私もまだ買っていないのでブラックフライデー狙いです。いやセール来なくても買うけど。

  2. 動作が軽い
    →2017年製surface pro4(Intel core i5、メモリ8G)、OSはWindows10という作業環境ですが、今のところほとんどストレスなく使えています。いや何かするたびにフリーズしていたフォトショとは大違いだ……おい聞いてるかA社……

  3. ソフト内で画像のレタッチができる
    →メインはイラレ系の機能(ベクター画像の編集)なのですが、「ピクセルペルソナ」というモードに切り替えることで、フォトショっぽい機能(画像のレタッチなど)も使えます。
    これを同人誌の表紙を作るオタク的に言い換えると、ベクターデータでタイトルロゴを作りつつ、別の画像編集ソフトを開くことなく背景の画像素材(PNGやJPEG)の明るさや色合いなどを変えることが可能です。
    あとペルソナついでに言うと、書き出しペルソナ(プレビューと書き出し専用のモード)に切り替えることでワンクリックで随時プレビューが可能なのも、個人的には結構便利だなと感じました。切り替えても都度固まったりしないしね……!

Affinity Designerの弱点

  1. 日本語縦書きに対応していない
    →こと同人誌の表紙を作るにあたって、一番の弱点がこれです。まだまだ新進気鋭の海外製ソフトなので、その辺りは仕方ないといえば仕方ないのですが……。
    ソフトとして対応していないため、縦書きをしたい場合、現状では力技で解決するしかありません。まあ薄い本のタイトルぐらいなら、横に打った文字を1文字ごとに改行 or 1文字ずつ別のオブジェクトとして打ち込んで自力で縦に並べちゃうのが手っ取り早い方法かなーと思います。
    あとはもう少し長い文章なら、Wordで入力したものをPDF化→Affinity Designerで開いてカーブに変換して調整する方法も取れそうです。ご参考まで。(※参考:Wordを使ってAffinity Designerの「縦書きテキスト」の作成を楽にする方法

  2. 生成AI機能がない
    →現在のところ、Affinityのソフトにはいわゆる生成AI機能がありません。そのため生成AI機能(例:生成塗り潰しで不要な背景を消す、足りない背景を自動で描き足す)をよく使っている方は不便に感じるかもしれません。

とはいえ魅力的な画像編集ソフトだと思いますので、私のように同人活動をしているオタク層でも、これからますますユーザーは増えるのではないかと期待しています。
そして日本語圏のオタクユーザーが増えれば、縦書き機能の追加や、あとユーザーからのTipsの発信もどんどん盛んになっていくのではないかなと……!

それではここから、実際どのように同人誌の表紙を作って入稿したかをご紹介します。

Affinity Designerで同人誌の表紙を作る

※以降は面倒なのでAffinity Designer=Affinityと記載します。

ようやく本題です。前段が長くてすみません。
いざAffinityで同人誌の表紙を作ろうと思っても、おそらく最初のドキュメントの設定で戸惑う方は結構いるのではないかと存じます。
何しろ同人誌印刷所でAffinityでのデータ作成方法を記載しているところは(少なくとも私の観測範囲では)現状まだなく、またAffinityの固有ファイル形式でのテンプレートも用意されていません。

……が、実はこのソフト、イラレっぽいと言いつつPSDファイルも全然普通に開けるため、印刷所のサイトからダウンロードしたPSDテンプレートをそのまま編集することが可能です(トンボレイヤーや注意書きレイヤー、ガイドなどもきちんと表示されます)。
ならばこれを利用しない手はありません。
というわけでAffinityで同人誌の表紙を作るなら、個人的に以下の方法を推奨します。

① 利用したい印刷所のテンプレート(PSD形式)をダウンロード
② Affinityで開いて編集
③ 完成したデータをPDFに書き出して入稿

実際の作業手順は以下で説明します。

①印刷所テンプレートをDLして基本の設定をする

まずは任意の印刷所の表紙テンプレートをPSD形式でダウンロードしてAffinityで開きます。その後、『ドキュメント設定』(表示されていない場合はファイル>ドキュメント設定)を下記のように変更します。
・タイプ:印刷
・ドキュメント単位:ミリメートル
・カラーフォーマット:CMYK/8
・カラープロファイル:Japan Color 2001 Coated

表紙作成前に印刷用の基本設定をしておきます

②表紙を作成する

上記の設定が完了したら、後はもう自由に表紙をデザインしていきましょう!
新規レイヤーを追加→お好きな素材を配置&タイトルの文字を入れて完成!でも良いですし、もちろん作れる方は思うままにベクターデータを1から作るも良し。ちなみにAffinityは.psd形式だけではなく.ai形式も読み込めるので、イラレ用のベクター素材を用いることも可能です。
レイヤーの追加や文字入力などは、(ラフなスクショで恐縮ですが)以下の画像をご参照ください。

Affinityの編集画面(※初期設定のままです)

詳しい使い方を知りたい場合はこちらの動画シリーズがわかりやすかったので、併せてご紹介いたします。

またこれは余談ですが、Affinityにはベクターデータ(カーブ/イラレでいうパス)にテクスチャブラシを適用する機能があり、たとえば作ったカーブ(パス)を簡単に手書きっぽくすることができます。これも表紙作る時に結構使える機能ではないかなと思いましたので、併せてご紹介いたします。

Affinityのブラシ機能の使用例

③入稿用データの作成

表紙データが完成したら『書き出しペルソナ』というモードに切り替えて、ファイル>エクスポートを選択し、PDF形式で書き出します。
一応AffinityからPSD形式での書き出すことも可能ではあるのですが、フォトショ以外で作ったPSDデータが印刷所側で上手く開けるかはわからないため、PDF入稿の方が安全だと思い、当記事では上記の方法を提案いたします(ちなみにプリントオン、ホープツーワン、コミックモールでは問題なく受け付けてもらえました)。

以下、実際の入稿データのスクショで失礼します(画像上の黒1色のレイヤーは空押しレイヤーです)

③-1 書き出しペルソナへ画面を切り替えます
③-2 メニューからファイル>エクスポートを選択

エクスポート時は下記設定になっていることを確認してください。
・書き出し形式:PDF
・プリセット:PDF/X-1a:2003
ラスターPDFは300以上あれば印刷時も問題ないため、その他の項目は変更不要です。

ちなみにグラフィックやプリンパといった印刷通販系の会社では、入稿マニュアルを読む限り、プリセットは『PDF/X-4』に設定することを推奨しているようです。
※PDF入稿用のプリセットも配布されているのですが、Adobe用のためAffinityでは適用することが(おそらく)できません。

上記の印刷所を使用する際はお気をつけください(なおグラフィックはPDF/X-4で不具合なく入稿できました)。

③-3 書き出し形式とプリセットを確認してエクスポートします

箔押しデータ(画像例では空押しですが)が発生する場合は、印刷所のトンボと背景に箔押しレイヤーのみ表示させた状態にしてエクスポートします。

③-4 箔押しや空押しデータは、該当レイヤーのみの状態にしてエクスポート

これで入稿データの完成です。
Canvaなどもおそらく同じ方法での入稿になるため、PDF入稿が可能な印刷所であれば問題なく受け付けてもらえると思います(フォントの埋め込みは確認してから入稿するのがベターです)。

※参考:PDFのフォントの埋め込みを確認する

以上、私もまだまだ使い始めたばかりのため、取り急ぎ「印刷所のテンプレートを使って入稿用の表紙データを作る方法」に限定して記事にしてみました。
Affinity導入を検討されている方の参考になれば幸いです。
それでは良い同人誌ライフを!

参考資料

一般向けの参考書籍です。私も購入しましたが、DesignerをメインにAffinityソフト3種の基本が網羅されているので、イラレ使ったことない人は持っていて損はないと思います!

Affinity公式クイックスタートガイド。UI上の各アイコンの説明などが確認できます。(チュートリアル動画は英語なのでまだ見てません……)

上の方でも紹介していますが、操作方法についてはふらっと建築さんの動画が一番くせもなくてわかりやすいなと感じます(基本操作動画はVer.2ではなくVer.1ですが、そんなに違いはありません)。

以上、ご参考まで!