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うつくしいものたちに救われて

仕事が急に忙しくなった。

耳鼻科で働いているから今が繁忙期だということはわかっていたけれど、耳鼻科に転職したのはちょうど一年前のことで、転職してすぐ新型コロナが流行りだして外出自粛となったので去年の今頃は閑散としていた。開院したての病院で右も左も分からない所からなんとかこの一年頑張ってきて自信もそれなりについていたつもりだったけど、急な患者数の増加にその自信も砕けて、てんてこ舞いで目が回りそうな日々に突入している。次から次へと来院される患者さんの受付とどんどん溜まる会計待ちの患者さんの診察券に月曜日は胃がキリキリして手が震えた。そうやって追い込まれて苦しくなってしまった時は、なるべくうつくしいものを思い出して心に凪を取り戻すようにしている。

千と千尋の映像がとにかく好きなので、千と千尋に出てくる美しい花々と広大で深い海と線路のことは何度も思い出す。あとはいつか見た海。防波堤に打ち付ける大きな波と水飛沫が夕焼けにキラキラと反射しているところ。一人暮らししていた時の近所にあった桜並木と川にはためく鯉のぼり。あとはついこの間先輩と見た梅の花。月が既にうっすらと出ていて、陽が傾き始めた景色と咲き始めたばかりの梅の花がとてもうつくしかった。梅の花の香りは柔らかくて甘いバナナみたいに香った。さくらの香水が発売されるように梅の花の香水も出たらいいのに、と思った。

日曜日は友人と海を見に行く。きっと思い出す風景の一つに加わると思う。

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