【ブラザーズ・ブラジャー】真剣って真面目ってそんなに大事?
議論できる人になりたいと昔から思っていました。
昔がいつなのは分かりませんが、お酒を飲みながら永遠に雑談できるという友人に、大学時代憧れを抱いていたのは確かです。
議論と雑談を一緒くたにしていいのかはさておき、とにかく一つの話題を30分も1時間も誰かと話続けられることに、一種の賢さを見出していました。
自分が会話を盛り上げられない、話を膨らませられないのは、話し下手だからだと思っていたのですが、どうも違う。
真面目な話になると、「また難しい話だ〜」と話を流してしまう癖があったのです。
暗い話が苦手なのか...
デリケートな話だからといって、真面目で重たい雰囲気で話す必要性を感じないのです。
どんな話題も「''言葉が持つイメージ''を崩さずに話し合ったり取り扱ったりしないといけない!」という正義感のようなものが存在していませんか?
特に女性や男性といった性差別的な問題や、貧しい国の経済的問題といった、守るべきマイノリティが存在する話題です。
話が真面目に難しくなってしまったがゆえに、一言意見しようものなら''正しく''という同調圧力のようなものを感じてしまいます。
政治家が議題として取り上げようと、著名人がツイッターでつぶやこうと、一般市民の一人一人が会話の中で自然に意見を交換し合わねば意味がありません。
そんな中、社会的問題も軽やかに扱っているのが、佐原ひかりさんの「ブラザーズ・ブラジャー」です。
※ネタバレ避けます
親の再婚によって弟(晴彦)ができたちぐさ。
ある日、晴彦がブラジャーをつけているところを目撃します。
彼氏ができて、いい感じのムードになってもその先に進めなかったちぐさの悩みは、いまだに自分はスポブラのようなおしゃれじゃないブラジャーをつけていたこと。
なのに晴彦は、自分のブラジャーよりも可愛らしいブラジャーをつけている...
ちぐさは「晴彦は男性が好きなのか...」と相手を傷つけないように状況判断をしますが、晴彦に「ただブラジャーそのものが好きなんだ」と告白されます。
私はこのシーンがとっても好きです。
今ある情報から必死に状況を読み取り、晴彦の悩みを理解しようとするちぐさですが、晴彦はそれを一撃するのです。
「そうやってすぐに他人を決めつけるな」と。
誰でも、相手を理解したい、相手の悩みを共有したいと思いますよね。
ただ、相手が望まない方向に思考を突き進めていくのは大迷惑。
相手の悩みに寄り添う時、居心地の悪さというものはどうやって生まれ、どう振り払って、どう分かち合っていくべきか、そんなことがこの小説には描かれています。
どんな問題も時には軽やかに扱えたら、解決できる糸口が見つかるのでは、と思わせてくれた一冊です。
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