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【スター】あぁもぉ、こんな世の中嫌になっちゃう!

とにかく疲れる。
情報社会に生きる私たちは、常に情報収集と情報の見極めと情報の選択...仕事が多い。多すぎる。

だけど、何もない状態を恐れて、自ら''疲れる''方向へ行きたがるのも事実。
簡単に言えば、私は、アンハサウェイ主演の「プラダを着た悪魔」の世界に憧れています。
我ながら分かりやすい例えだ。

こんな風に、外と内とのバランスをどううまく保っていくかが、今世紀の課題なのではないでしょうか。

自分が''発する言葉''と''考えている事''が違うことだってザラにあるのに、さらには外側にある情報とうまく付き合って生きていかなくちゃゃいけないなんて、毎日忙し過ぎますね。

この世の中に生まれて日々生活しているだけで、人間大したものだ!と誰か褒めていただきたい。

ただ、そんな子供みたいなことも言ってられませんよね。この世界で生きていくなら、自分が納得するものを自分で選び、最後は「あぁ幸せな人生だったー」ってなりたい。いや、ならねば困ります。

私たちがしていること、たとえば、仕事にしろ家事にしろ子育てにしろ、全て自分以外の人や情報との関わりがあってこそ成り立っているものばかりです。

そういったごちゃまぜ世界で生活することに四苦八苦しているのは、私だけではないようです。
この作品に出てくる2人も、同じように''仕事''という面で、自分と自分以外というピースが上手くはまらず、パズルが完成しない状況に苦労しています。

朝井リョウさんの「スター」

主人公は、尚吾と紘の2人。彼らが大学時代に作った映画が、ある映画祭でグランプリを受賞。ふたりは大学卒業後、名監督への弟子入りとYouTubeでの発信という真逆の道を選ぶことになります。

2人とも手段は違えど、''ものづくり''を通して人々の反応を受け取る仕事には変わりありません。

それぞれ仕事に励む日々が続く中、お店の口コミや商品レビューなどのような、嘘か本当か分からない''評価''だけで作品の良し悪しが左右されることに2人は違和感を感じています。

もちろんそれは、中身ではなく、作品の上澄だけを掬い取って評価されることも。

映像という世界で、古き良きものと表現される映画界と現代風と表現されるYouTube界。

2人は卒業後連絡を取ることもなくなり、間接的に相手の活躍を耳にするわけですが、それがまた''視聴者''側ではある読み手は、彼らがすれ違う月日の長さを少し寂しく感じるのです。

2人がそれぞれ抱える悩みや思いは、現代に生きる私たちと通ずるものがあり、
「世の中の変化に違和感を感じたり上手くいかなかったりするときは、その中で変わらない自分の軸を持つことが大切」
というメッセージに力強さを感じます。

ただ、そんな教訓めいた言葉で物語を締めないのが朝井リョウ

「だからこの世の中は大変なんだ!」の、この''だから''を悲しいほど、けれど清々しいほど言い切ってくれています。

それが、こちら。

「ただ、その軸が生まれるまで待ってあげる、そばで見守ってあげることができないのが現代」

スピードや時短、効率といった世の中とうまくつきあって行くための術が、結局さらに自分と社会を遠ざけてしまっていたとは....

結局自分のことさえ待って、認めてあげることができなくなり、認めて欲しかったもの以外のところで認められようとしてしまう彼らは、迷いの中で何を選択するのか。

「2人を行く末を見届けたい」という気持ちと、「私(読者)はこんな世の中で生きてきたのか」といった、小説と自分の世界がごちゃごちゃに混じり合ったような体験ができる一冊です。

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