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4/n アタックアングルと逃げ角 チェンソー、ソーチェーン(チェンソー用チェーン)、目立ての正しい理解
ソーチェーンサービスジャパン(略: SSJ)です。
SSJは当事業体の宣伝も兼ねて、タイトルの記事をシリーズ化してnote上に公開することにしました。本記事の内容はXアカウントのhttps://twitter.com/SSJP2023 固定ツイートで先行公開していますが、noteで公開する内容は、Xアカウントで公開中の資料 「4D Sawchain Study」の「 V.1.25」以降の内容となります。
「逃げ角」と「アタックアングル」
逃げ角とクロスカット
逃げ角というのは刃物と材の切削面の間の空間の角度です。ソーチェーンのカッターには上横で逃げ角が設定されています。ソーチェーンの逃げ角を考える場合は静止している状態とそれ以外を分けて考えなければなりません。なぜならソーチェーンはリジットな刃物ではなく、楕円周=ガイドバーの上を動くフレキシブルな刃物だからです。また、デプス(切り込む深さ)も任意で変更できるので、動作中、寿命中に渡って逃げ角は変化し続けます。
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横刃の逃げ角も動作中変化(切幅の分横ブレ)しますが、正常時は極僅かですのでここでは省略します。
クロスカット(玉切り)では上画像のように木を切る動作中に「ジャンプする」ので逃げ角が段階的に変化します。加えてカッターの消耗で逃げ角が変わっていきます。デプスとカッター頂点の距離が開いていくからです。ソーチェーン以外の刃物に取っては一大事ですが、ソーチェーンのカッターは寿命が減ると同時に上から見た時の幅=カーフが狭くなり、摩擦抵抗が減るので、逃げ角が減ること自体は大して影響がありません。逆に、逃げ角ばかりを意識するとデプスを下げ過ぎることになり、負荷が増えて頻繁にチェーンがストールします。
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逃げ角とボアカット(突っ込み切り)
反面、ボアカットではカッターはノーズのテンションとスプロケットに動きを制限されてほぼ動きません。この時はリジットな刃物と同じ動きをします。回転方向に進んではいますが、クロスカットのようにジャンプはしていないということです。クロスカットではカッターが消耗していくと材からカッターに掛かる抵抗が少なくなるのですが、反面、ボアカットではチェンソーの回転数が落ち込んで苦しくなっていきます(ピッチが小さいほどこの現象を抑えられます)。これこそ逃げ角が減っているからと思うかもしれませんが、ここでも逃げ角は大した問題ではありません(Rとカッターのジオメトリー、シーケンス、1つのカッターに注目してもR上のどこにカッターが位置しているかで切削効率が変わります)。
カッターが減るとボアカットの負荷が高くなる理由は以下の画像に示す、デプスとは異なる「嚙み込み量」が増えて行くからです。そして後ろからグイグイ押されているわけなので、カッターはデプスの設定以上に喰い込むことを強制されます。ジオメトリーによってカッターの頂点とデプスゲージの点間距離が近い程、また、バーのノーズ直径が大きい程この噛み込み量は抑えられます。ピッチが小さいと寿命期間中のボアカットの負荷の増加も少なくなります。
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青曲線(=ガイドバーと平行)が先行するカッターのカットライン
青矢印がバーを押し込む方向
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先行するカッターのカットラインのRにより、
デプス設定下に材が入り込むので、噛み込み量+で負荷が高まる
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ピコの方はデプスゲージと頂点の点間距離を詰めてボアカットの負荷対策をしています
スチールの公式情報は見る人が見れば分かる「秘密のメッセージ」が多いです
ボアカットについて更に6/nをどうぞ
アタックアングルと逃げ角の違い
アタックアングルを維持することは間接的に逃げ角を調整することになるのですが、アタックアングルを維持することはカッターの残りに見合ったデプスに調整するということにも繋がります(カッターが消耗すると上刃も横刃も梃子の負荷が減り、重量減で回転数も上がるので、ソーチェーンに対する相対的な直進の慣性は強くなります)。.025や0.64mmを維持する話をしているのではありません。そして、カッターの寿命中の変化に対して、この「アタックアングルの考え」が補ってくれるもう1つのことがあります。ある一定の寿命期間から発生する、カッターのヒットからジャンプの間のラグです。私以外誰も言葉にしたことがないと思いますので、これを「アタックアングルの考えはロックラグを補う」とします。アタックアングルは逃げ角とは異なるので混同しないでください。
アタックアングルとは
デプスを一定に維持していると、デプスゲージとカッターの頂点の間が開くごとに、ポイント同士を結ぶ直角三角形は底辺が長くなるので、斜辺が緩やかになっていきます。この斜辺が成す角度をアタックアングルと言います。
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アタックアングルとクロスカット
このアタックアングルがキーとなるカッターの動きが、カッターの頂点がヒットしてからデプスゲージが材の表面に押し付けられるアタックまでの間、ロックの動きです。
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画像内の赤点は支点です。カッターの頂点は力点です。デプスゲージのトップが作用点となります。デプスゲージがグイっと持ち上げられるのに合わせてカッターの頂点も持ち上がるのですが、これが寿命のある一定のポイントを超えると、デプスが持ち上がるのと同時に、カッターの頂点が材から抜けようとする現象が起こります。画像で示します。
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この境界線となる青十字の交点のことも、私以外誰も言葉にしたことがないと思いますので、これを「ロックラグポイント」とします。ロックラグポイントも画像の赤線あたりではデプス設定で微妙に変わります。このロックの動作が完了した後にカッターは再びジャンプし始めるのですが、人間でいうと高く飛ぶために一旦しゃがみこむような動作なので、全体のパワーとしては余裕がある状態です(後続のチェーンパーツに弛みが出ます)。カーフも減り続けてパワーが余るのだから、025以上にデプスを下げて、アタックアングルの斜辺の変化とロックラグを補おうというのが、アタックアングルを考える上で大事なポイントです。
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カッターの減りとアタックアングル、デプスの3点を、025を無視して調整する効果があります。
アタックアングルとボアカット
ボアカットではロックもアタックも無いので、アタックアングルを維持し続けることはデプスを下げることになります(屁理屈ですが、新品時はカーフによりクロスカットの負荷が高いとも言えます)。寿命のとある時点でアタックアングルベースの目立てとボアカットの組み合わせで負荷が高すぎると感じる時は、元よりアタックアングルの考えは捨ててデプスは下げないか、スライディングデプスやガレット加工、ノーズ上のカッター数が少なくなるようなバーやチェーンを選ぶ、最初からナローカーフを選ぶといったバランス取りが必要になります。残念ながらアタックアングルも万能ではありません。