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含み益は幻(まぼろし)か【完結編】


「株式の含み益は(どうせ)幻」という妻の論理

わたしの妻はいつも「株式の含み益は(どうせ)幻」といいます(それなら含み損も幻なのかと聞くと、「そうよ」と答えるので、一応、一貫しています)。ここでは、夫婦の会話ではできない、すこしロジカルな考えについて書いていきたいと思います。

投資をすべき理由はいくつかしかありません。

  1. インフレから資産を守ること

  2. 金融資本を蓄え、労働(人的資本)への依存度を減らすこと

インフレから資産を守る

インフレから資産を守るとはどういうことでしょうか。
インフレとは、モノの値段が年々上がっていくことをいいます。100万円で買えるものが、徐々に少なくなっていくということです。日本ではデフレの期間があまりにも長く、日本にはどこか無縁のものと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、長い目でみれば、日本でもインフレはもちろん起きています。
たとえば、大正時代の小学校の教員の初任給(月給)は約50円だったそうです。この50円を100年間、貯金箱に入れたらどうなるでしょう。50円はそのままですが、2024年のいま、50円で買えるものは殆ど無くなってしまっていますよね。貯金箱の中身は変わらないけれど、外の世界が変わってしまということです。

この単純な事実が、わたしたちが投資をする根拠となります。

1926年から2020年にかけて1ドルを保有していたとして、米国におけるインフレに対抗するためには、この1ドルを15ドルに増やさなければなりません。米国債や米国株にこの1ドルを投資した場合、インフレに打ち勝つことができるでしょうか。
答えは「YES」。1926年に1ドルを長期の米国債に投資した場合、2020年には、それは200ドルになっているからです。では米国株全体に投資していたらどうでしょう。この場合、2020年にはなんと、1万937ドルになっているのです(『JUST KEEP BUYING』より)。

労働(人的資本)への依存度を減らす

投資をするもう1つの目的は、時間給労働による稼ぎに頼らなくて済むような状況にすることです。

これは、若くして経済的自立を果たして早期リタイヤをしたい人だけに当て嵌まるものではありません。人はやがて老い、時間労働によって満足な稼ぎを得ることは難しくなっていくでしょう。ですから、働けるうちに、労働を提供して得た対価を投資に回し、お金がお金を稼ぐよう、シフトしていかなければなりません(人的資本から金融資本へのシフトをしていくことが必要です)。
私たちはやがて老い、働くのが難しくなる。しかし生きている時間が続く。この事実が、もう1つ、投資をする根拠となります。

株式の個別銘柄に関する含み益は幻であるとの指摘は正しい

ここまで見てきたように、少なくとも債券への投資(債券ETFを通じた投資を含む)は必要ですし、そのリターンも幻ではないことが明らかです。しかし、株式投資の場合はどうでしょうか。
上述のとおり、1926年に1ドルを米国株全体に投資すれば2020年に1万937ドルになったわけですが、この間、米短期国債を上回るリターンを生み出した銘柄は、実質的に全体の僅か4%。個別銘柄に長期投資するのであれば、この4%の銘柄を確実に選び、96%の銘柄を避けねばなりません。さらに、それら優良銘柄でさえ入れ替えが起きうることに留意が必要があります。実際、1920年にダウ平均株価の構成銘柄であった20社は100年後、1社としてこの指数に留まっている会社はありません。
そう考えると、妻の個別銘柄の含み益に対する指摘は正しいといえます。今あなたが幸運にも含み益を抱えているならば、どこかの時点で利益確定をしなければ、文字通り幻となって消えると考えるべきということです。

株式市場全体を対象としたインデックス投資の含み益ならどうか

それでは株式市場全体を対象としたインデックス投資はどうでしょうか。本当に、インデックス投資であれば含み益は幻ではないと言えるのでしょうか。それは、投資期間によります。

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