思い

テーブルの上の水の入ったコップを
メニューを広げて倒してしまった
静かに倒れるコップ
水浸しになるテーブル
床に溢れる水
大人が倒したと言われる
ナプキンを取り広げて水を吸わせながら
ブザーでお店の人を呼ぶ
なかなか来ない
席に座ると溢れた水を踏んでしまうから
立ち尽くして店員を待つ
こんな風にして終わりはやってくる
飲まれるという目的を果たせず
溢れた水の無念など
誰にも気づかれることなく
空気に消えていく
昨日の朝に逝った人がいる
消えても昨日は終わり今日は始まる
僕もいつかはコップが倒れて水が失われるように
大切な思いを
空気に溶かしていくのだろう
人間が繰り返してきた営みだ
水の思いを感じてる
でもそれは消えていくしかないんだ
少し切なくなる

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