たまごパン
夢の中で馴染みのパン屋に行った
いつも相撲中継がついていて
初老のおじさんとおばさんが店番をしているその店は
住宅街の中にひっそりと佇む
その場所はいつも陽だまりの中で少し眩しく感じる場所で
焼き上がりの片面がテカテカに光ったたまごパンは30円
小銭を握って一つ買って食べたり
お使いでビニール袋入りの5個入りを買ったり
駄菓子も売ってたけど買うことは許されなくて
でもこのお店にいくことがとても楽しみで
たまごパンをかじった食感は今も思い出せる
夢の中でこの店にたどり着いた僕は
誰もいない店の前でぼんやりと立っている
夢を見た翌日にその場所を遠回りして車で通ってみたら
街並みが変わって本当にどこだかわからなかった
こうして記憶は思い出になり
もう訪れることの出来ない場所会えない人になる
近い将来僕も思い出になる
思い出してもらうときには
少しほっとできる存在になりたい