あなたの箱
分かりたいのに分からない
知りたいのに教えてもらえない
見ようとしても見えてこない
その箱の中を覗こうとして鍵を探す
あなたが無くしたはずの鍵を探す
僕が見つけた鍵は全て試してみたけれど
その箱は開かない
本当はあなたが隠しているのだと僕が言っても
あなたは無くしたことさえ記憶にない
それでも繰り返し鍵を鍵穴に刺して回し続けていた僕は
ある時気づいた
その箱は鍵では開かない
知恵の輪を解くようにして開くのだと
探さなくても答えは目の前にある
箱を開けるのに鍵はいらなかったのだ
でも僕はその知恵の輪を解くことができず
あなたの前で立ち尽くしている
鍵など最初からないのだと あなたは僕に微笑み返す
そう答えは僕の内側にあった
その事に気づいたヒグラシ鳴く夏の夕暮れ