エアメイル
遠く異国の地から僕のアパートの錆びた郵便受けに届いた手紙
便箋のザラツキが日本では無い感触
「湿気の多い風が吹いているけど、過ごし易い気候でゆったりしています」
そんな書き出しで始まったそのエアメイルは
行ったことのないその場所の想像を掻き立てる
海辺や椰子の木にサーフィンをする若者
そんなステレオタイプのイメージをつなぎ合わせて
自分なりに懸命に膨らませる風景に
夕陽に向かってなびく髪をかき上げるあなたが見えた
「あなたは私と違って、こんな場所でも仕事しちゃうのかな」
僕とあなたの間に横たわる太平洋が
とっても遠い海に変わる
僕はあなたと違うかも知れない
でも違っていてはダメなのだろうか
僕の質問は東京を吹く秋風の音で
あなたには届かない
遠くにいても通じ合う二人がいれば
近くにいても通じ合えない二人もいる
僕たちは距離も心も遠ざかってしまったみたいだ
今すぐ飛行機に飛び乗って
あなたの近くにたどり着いたとしても
遠ざかった心は戻らない
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