響くと悲しい夜
どうしてもっと話をしておかなかったのだろう
そう思うのは人を失ってしまった時の常だ
映像に残ったその人の姿を繰り返し見ると
その人から聞いた話が次々に蘇る
十分話したのかな
大切なことはちゃんと教わったんだな
そう思いもする
その人のサックスの響きは
たくさん残っているから
今夜も聴きながら夜が更ける
楽器を吹く息づかいは
語りかけるようでもあり
奏でられるメロディは
その時の空気を瞬間冷凍したかのように
伝わってくる
会いたいと思っても
もうどこにもいないから
その残響を聞こうとして
耳を澄ませる