写真の中身がマジで出てくるゲーム『Viewfinder』は楽しいけれどもあまり言うことがない
スコットランドのSad Owl Studiosが開発した認知を歪ませる一人称アドベンチャーゲーム『Viewfinder』をクリアしました(なお、クリア時間は3.2時間)。
このゲーム、とにかく映像を見たら驚きますよ。なんたって、写真を掲げてボタンを押したら、風景を上書きするようにその写真の中身が顕現するのですから。
足場がなければ橋を作れるし、ゴールとなるテレポーターがなければ撮影して作り出せばいいじゃない、というゲームです。コンセプト自体にインパクトがあり、話題になった作品ですね。
ただ、プレイする前は「出オチになるのではないか」と不安に思っていました。類似作品として、錯視を利用する『Superliminal』というゲームがありまして、これは遠近感の錯覚を利用して物を大きくしたり小さくしたりできる内容だったんですね。
これも非常にインパクトがあったんですが、まあパズルとしてゲームにうまく組み込めていたかというと……。そういうパズルも確かに序盤にはあったんですが、そのうちよくわからないストーリーで煙に巻いた感じでした。
『Viewfinder』も同じことになるのではないかと思っていましたが、幸いにも出オチにならないような努力が用意されていました。
写真に映らない建物、写真を撮ると対象が消えるなどいろいろギミックがあり、パズルの難易度もほどほど。いくつか難しいのがあるけれども、悩んでいるとヒントが出るというカジュアルでほどよい塩梅でした(スイカは頭ひとつ抜けて難易度が高いですが)。
ただ、やはり写真を利用したギミックには限界があるようで、すごくおもしろい何かが隠されているかというと別にそうでもなく。いえ、もちろん期待したものはあったのでいい体験だったんですが、プレイ後に特に思うところがないんですよね。
というわけで、いくつか気になったところだけ書いておきます。
あ、そうそう。カメラを取得するところでファインダーを覗けない状態になって困っていたんですが、取得後はその場に留まってCAITとの会話を聞かなければフラグが立たず使えないようです。
※以下、『Viewfinder』のネタバレが含まれます。
◆また「外の世界」
この手の一人称視点アドベンチャーは、いまいる世界の「外の世界」を描きたがります。『Portal』は実験場の外に不気味なオフィスがありますし、『The Stanley Parable』もそれに近いものがある。このあたりはかなりうまくいっている部類だと思います。
しかし、『Superliminal』も同じようなことをしてメタ的な、かつ読み解く気にならないストーリーを展開します。『Viewfinder』でも同様に「この世界はシミュレーターである」と描写されるのですが、このとき正直「またかよ」と思いました。
ただ、『Viewfinder』に関しては序盤でネタバラシされるだけマシではありますし、メタ要素は特になさそうです。シミュレーターである理由もストーリーで描写されるんですが、そもそも物語の解釈が面倒なうえにあまり大したものではないので、意味不明な空間でパズルをやるだけでもよかったのではと思います。
◆とりあえず猫
本作にはAI猫「CAIT」が登場します。撫でることもできますし、渋いボイスでプレイヤーを褒めてくれます。いやー、かわいいですね。
ただ、「最近はどのゲームでも猫ばかりだな……」とも感じます。
◆もはや錯視ではなくただのパズル
本作では写真パズルのみならず、錯視を利用したパズルも存在します。それ自体はまあいいのですが、「パズルを解くことによって錯視っぽい足場が出てくる」という仕掛けがあり、これには納得がいきませんでした。
「パズルを解いて足場が出る」というのは錯視とはまったく関係ないでしょう。ふつうに橋が出るのと何が違うの……? と思ってしまうわけですね。
幸いなことに、錯視パズル自体は数がそんなにないですし、理不尽に思える場所もここひとつだけでした。
◆終わりに
というわけで『Viewfinder』はおもしろかったしいいゲームだと思うのですが、最初のインパクトが強すぎてそれを越えることはなかったという感想になります。
これで引っかかりを感じるのは自分でも意外だなと思います。ゲームに限らずエンターテインメントは「おもしろそう(予測)」と「おもしろい(感触)」が別物で、前者より後者が強いほうが(少なくとも自分にとっては)理想なのかもしれません。
逆にゲームを遊ばない人(実況動画を見たり、話題のものをチェックする感じに楽しむタイプ)には、予測が魅力的なほうがいいのかも。
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