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がん患者のうつにとある漢方薬が効いた本当の話

最初にお断りするが、これは怪しい民間療法についての記事ではない。
かなり正統派。普通に正統派。私、正統派。
正統派にしか生きられない乳がん女が正当派漢方薬を飲んで、ストライクゾーンにがっつりはまった正当な話である。

そう、私は乳がんサバイバーである。

2017年、年の瀬も迫り、ついでに長男のセンター試験も目前に迫ったある土曜の朝、近所の古い病院の古い診察室で古い医者…じゃなくて初老のドクターに「あなたは乳がんステージ3のCです」と告げられた。

頭真っ白、お顔真っ青、お財布真っ赤(検査、検査で)。

その後の闘病については、またいずれ語ることにして、今日はいきなり、
「あれから5年」。
薬の副作用に苦しんでいることを、ちょっと語っちゃおうと思う。

結論だけ知りたい人は、いきなり最後の見出しへどうぞ。
乳がんとホルモンの関係や、うつで泣いた話をちょこっと知りたい方は、このまま読み続けてください。

【女性ホルモンは乳がんのエサである…って聞いてないよ、それ】

乳がんにはいくつかタイプがあって、私のがんはルミナールA。
このタイプのがんは、エストロゲンなる女性ホルモンが大好きだ。
エストロゲンは通常、更年期になると減る。
減るとめまいとかのぼせとかだるさとかの症状が出る。
特にのぼせが辛かった私は、婦人科のドクターにエストロゲン補充の処方をもらい、数年使っていた。

そして、その数年のあいだにがんはこのエストロゲンを喰って増殖していたのである。
私はがん細胞の好物を毎日毎日与えていたのだ。
がんにとってはありがたい飼い主だったことだろう。

しかし乳がん発覚後、エストロゲンの補充はすぐに中止になった。
そして手術後は逆にエストロゲンを抑える薬が処方された。
「タモキシフェン」という。
これは、極端な言い方をすると「女らしさ」を終わらせる薬である。

もっとめっちゃ痛い言い方をすれば

「早く婆さんになる薬」だ。

そうなのよ、私だけじゃないのよ。
乳がん女の多くは、この「がっつりエイジング薬」を飲んで乳がん再発防止に挑むのよ。

乳がんは二重にも三重にも、女の戦いなのよ。

典型的な副作用は関節の痛み(老化だ)
目や口の中など粘膜の渇き(老化だ)
肌がくすんで、かさかさ(老化だ)
記憶力・集中力の低下(老化すぎて深いため息)

しかし幸いなことに私は関節の痛みも粘膜の渇きもそれほどではなかった。
一番困った副作用は、実は他にある。それは….



「うつ」だった。


【がんの治療はうつとの戦いだって…聞いてないよ!】

…やる気がでない。
考えがまとまらない。
仕事がスローになる。
「私は何もできない!」と嘆いてしまう。

何を見ても感動しない。
うれしくない。
おいしくない。
ハッピーじゃない。
心の中で「笑え!」と号令かけないと、笑えない。

いつも両肩両胸に重苦しい鎧をつけられ、首に鎖をつけられているかのよう。
胸が潰れて息が苦しいよ〜〜〜…
そんな状態がタモキシフェン服用して3年目(去年の春)に現れた。

さらに、私は悲劇の人なのだ。
実は「元気じゃない」って言っても誰にも信じてもらえないのである。
悲しいかな、私は人の3倍くらいパワーを感じさせるタイプであるため、うつになっても普通の人の2倍くらい「イキイキ」している、
人に言っても、「誰でも愚痴りたくなることあるよね」で優しく済まされてしまう。
「もうだめだ」と何度思ったことか。
この「かくれ鬱」と独りで戦い続けてはみたものの、そんな状態は1年が限界だった。

この春、乳がんの転移をチェックするPET検査をドキャンして、私は電車に飛び乗った。
三浦半島を赤い車両で、ひたすら下っていった。

だって、転移が見つかったって治療なんかする気ないもん。
転移があったらきっと私は言うだろう
「このまま死なせてください」と。

だったら検査は無駄。そんな無駄な検査に4万円も出すくらいなら死んだ方がましだ。だから…

海だ。
海へ行くしかない。

どんより曇ったYKSK市のあまり綺麗とはいえない海(YKSK市の人、ごめんなさい)
ババアが、海見て泣いてる。
あまりに汚くて飛び込めません。っていうか、今日は飛び込む気はないんだよね。ただ泣きに来たかっただけ。

しかし、50代の小太りのババアが、海見て泣いてても映えないのよ。
もうちょっと若くてスリムならよかったのになぁ…
あまりに映えなさすぎるから、仕方ないので、カレーうどん食べて帰ってきた。

一週間後、本来ならPET検査の結果を聞くはずだった診察で主治医に言ってみる。
「あのさ、なんか薬出してくんない?元気になるやつ」

そして処方されたのが、ある漢方薬である。


【漢方ってうつにも効くって。それも聞いてないよ!!】

この漢方、前にも飲んだことがある気がするぞ。
いつだ?
ホントに元気になるのか?
期待はしてないが、せっかく手に入れたので、飲み始めてみる。

そして、2週間。

えっ?


え?


ええっ?


私、元気くない?
なんか、肩が軽くない?
鎧が消えてない?
ラクに息してない?

私、軽いよ(気持ちが。体重ではない)。


驚いてその漢方の効能を調べてみた。

製薬メーカーのサイトには、
「効能・効果
体力虚弱で、元気がなく、胃腸のはたらきが衰えて、疲れやすいものの次の諸症:
虚弱体質、疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、ねあせ、感冒」

と、しか書いていない。

しかし、さらに「うつ、漢方薬」とググると、出てくる、出てくる。
なんと、心療内科などで処方されている代表格らしいのだ。

その名は


補中益気湯。


ほちゅうえっきとう、と読む。

西洋医学的な抗うつ薬は避けたかった私は漢方薬でうつが消えたことに、とても満足した。
「超イイネ」と「大切だね」を10個くらいずつ押してもいい。
いや、もっとか?
私、せこいか?

数週間後、主治医に言った
「補中益気湯、効いてる。すごいわ」
彼女は答えた
「確かに元気になってるね。補中益気湯って本当に抗うつ、効くんだ」
「なに?ってことは、補中益気湯に抗うつ効果あるって、知ってたの?」
「知ってたよ」
「だったら、さっさと出してくれればよかったでしょ!」
「だって、個人差あるしさ〜〜。でも、漢方がぴったりはまったのは、よかったよ〜〜〜」
「よかったよ、じゃないわ!1年も苦しんだのに!!怒」

と、まあ、私は主治医と丁々発止できるくらいに回復した。

Thank you、補中益気湯。
Thank you、漢方薬。

タモキシフェンでうつっぽくなった場合に限らず、元気のない人は試してみてもいいかもしれない。
だが、必ず医療機関で相談をしてからにしてほしい。

だって、補中益気湯にも副作用はあるのだ。

もう、私、補中益気湯なしにはいられない、という依存症。

これも、また、立派な副作用である。




*文中の「効能・効果〜」はツムラさんのサイトから引用しています。





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