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青年海外協力隊 活動編 #8「帰国できてよかった」

 今日はタイトル通り、この世界中を巻き込んで拡大し続けるコロナウイルスの問題の中、「帰国できてよかった」と思った理由を書きたいと思います。

 まず、私は3月初旬の時点では帰国など全く予想もしていなかったし、全員帰国という知らせを受けても、せっかく職場にもスペイン語にも慣れてきた頃だったので、帰国したくないというのが正直な気持ちでした。しかも、帰国が決まった時点で、ドミニカ共和国を含めた中南米諸国よりも日本の方がウイルスは明らかに流行していたし、さらに流行しているアメリカを経由して、密室状態になる飛行機に乗って帰国するということへの不安もありました。
 しかし、国境が封鎖され当初の予定で出国できなくなったり、いまだに日本に帰国できていない隊員がいたりする中で、日本に帰国して冷静に振り返ってみると、「帰国できてよかった」と心から思っています。詳しい理由は主に3つです。

①活動の継続が難しい

 昨日の記事にも書いた通り、コロナウイルス感染防止のため、3月16日以降大統領の発表により、学校や閉鎖、集会の禁止などの措置が取られ始めました。それ以降も、国境閉鎖や都市間の移動制限、お店やレストランの営業停止、夜間の外出禁止などの対策が次々と取られるようになりました。
 このような日常生活を制限するような措置の影響で、私の職場である大学は休校になり、すぐにオンラインの授業へと切り替わりました。そうすると、同僚の先生たちも自宅で仕事をするため、大学には誰も出勤してきません。当然、私は活動を続けることができなくなり、自宅待機となりました。
 現在、ドミニカ共和国では感染が拡大し続けており、とても授業を再開できる状況にはありません。もしも、帰国せずに今もドミニカ共和国に居たとしたら、多分、活動再開の目途も立たず、終わりの見えない自宅待機を過ごす中で、間違いなくストレスを感じていただろうと思います。
 日本でも外出自粛が言われていますし、私自身も帰国後2週間は自宅待機のため、あまり変わらない状況だとも言えますが、やはり住み慣れた環境で、食べ慣れたものを食べ、再派遣に向けて準備できることをこの待機期間にできる、というだけでもかなりのストレス軽減になっていることは確かです。

② 治安の悪化

 ドミニカ共和国は、発展途上国と言われる国の中では、かなり発展していると言われます。実際、首都のサント・ドミンゴでは、高層マンションや大型のショッピングモールも多くあり、私自身が協力隊に参加する前に想像していた国の様子とはだいぶ違います。また、ドミニカ共和国の人たち自身は、自分たちの国のことを発展途上国だとは思っていませんし、スリなどはあるものの、他の中南米の国に比べると、そこまで治安の悪い国ではありません。しかし、隣国ハイチからの移民や、都市と地方の格差など社会的な問題も多く、日雇い労働者など経済的に安定しない人がいることも問題のひとつです。
 このような問題を抱える中、このコロナによる非常事態で多くのお店が閉まり、経済活動がストップしました。そうすると、日給で働いていた人が失業してしまい、バイク強盗が増えるなど、コロナの問題が治安の悪化にも繋がっていたようです。(お店が営業していないことや外出自粛により、人通りが減ったことなども理由の一つだと思われます)
 実際、私も帰国前にスーパーに歩いて行きましたが、普段なら車や人の通りが多い道路でも閑散としていて、強盗が増えているという話にも納得できる状況でした。

③脆弱な医療機関

 私たち協力隊は、基本的に病気になるとすぐに現地の病院に行けるようになっています。しかも、その病院は、国内でもかなり質の高い医療を受けることができる場所です。協力隊が派遣される国はデング熱や狂犬病など、日本ではほぼ罹ることがない病気になる可能性が大いにあり、派遣前にも病気について学んだり、たくさんの予防注射を打ったりして備えています。
 しかし、いくら質の高い医療を受けられる補償がされているとは言え、それは平時のことです。基本的に医療制度は脆弱なことが多い中での、コロナの感染拡大。先進国でも医療機関のパンクに悩まされているのだから、中南米やアフリカの国は、さらに深刻な状況になることは簡単に予想できます。
 また、私自身がもしコロナに感染したら、コロナではなくてもデング熱に感染したら、それらの病気が重症化したら、診てもらえるはずの病院が機能していなかったら、、、国境封鎖の中、国外への搬送もままならないかもしれません。このような医療に関する問題を考えただけでも、やはり帰国は免れなかった気がします。何と言っても、健康の上に成り立つ活動ですし、自分が感染して、行った先の国で外国人の私が迷惑をかけるというのは避けたい事態だとも感じるので。


 以上、3つに分けて「帰国できてよかった」と思う理由をまとめました。やはりたった2年間しかない派遣期間を中断して、このような形で帰国になるのは本意ではないし、悔しく思います。しかし、世界的に流行しているこの状況では、仕方がないこと。自分の目の前にある状況を、自分ができる範囲でどうするかが協力隊の仕事なのかなとも思うので、今は日本でできることをやりたいと思います。
 2ヵ月の活動期間で、もっと準備してくればよかった、もっとこんな知識があればよかったと感じたことを、補充して再派遣に備えたいと思います。

 最後に、帰国時にはドミニカ共和国内で130人程度だった感染者が、10日足らずで1300人近くにまで増えています。しかし、保険を持っていないために病院にいけない人が多くいること、バリオと呼ばれる貧困地区など衛生状態が良くない場所がまだまだあること、手洗い・うがい・マスクなどの予防の習慣が根付いていないことなど、感染症が一度広がればなかなか収束させにくい状況があると思います。(これは協力隊が派遣される国の多くは同じ状況でしょう)そんな中で、帰国できてよかったとは言え、ホストファミリーやお世話になった同僚のことを考えると心配です。早く感染拡大が収束し、今までの日常に戻ることを願っています。

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