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転校生は13年後
ここ1週間は痺れるほど忙しかったので、起きてからもあまり脳が働いていない感覚があった。この現象を脳の揺り戻しと呼んでいて、酷使した後は頭がボヤボヤになってしまう。こういう日はもう諦めるしかない。
ただ今日は小学校からの友達と会うナイスな予定があるので、しゃっきりするために雪見だいふくをキメて脳を起こした。金曜に飲み会の予定があったが、どうしてもどんぐり拾いが終わらなくて泣く泣く諦めたので、今日は絶対楽しみたい。本当に。その覚悟のアイス。
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今日会う友達たちは小学校からの仲で、僕が中学2年生の頃に転校して以降はまったくかかわりがなかったのだけど、むしろ大人になってから会うようになった。不思議だ。
不思議だけどこれは本当に嬉しくて、転校した身としては「記憶の中の顔も思い出せないあの人」にされず、いまだに会ってくれることがありがたい。
そういった背景もあって、ニヤニヤしつつ待ち合わせの居酒屋にスキップで向かったが、道に迷って結局遅刻した。池袋は魔境。
加えて店に向かうために店名で検索して地図を開いたら「まもなく営業終了」の文字があり、盛大なドッキリかと思った。転校生はこういうのに敏感だからさ......。
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滞在30分で叩き出されるかと思った
駆け足でお店が入るビルに辿り着き、エレベーターボタンを連打。5階か〜。息を押さえつつ荒れた髪の毛をささっと直していたら、背後から強烈な視線を受けていることに気付く。(待ちの列を抜かしちゃったかな?)と思って振り向いたら社長がいた。等身大像を雑居ビルの奥底に置くのはやめた方がいい。
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無事合流したあとは昔話から人生の話などたくさんした。日記を読んでくれている人もいて本当に嬉しかった。照れくさくて「アッス」みたいな感じになってしまったので、また会えたら菓子折りとか贈ろうかな。
みんな大人になっているけど、僕の記憶で一番色濃く残っている友人たちの印象は転校前の小中の頃の様子なので、そこのギャップがいつも面白い。
これについては、足の速さで競っていたところから「社会」に突然ワープしてきたような感覚が近いかも。みんなの人生のタイムラインから一度離脱して、十数年の時を経てまた合流した側の人間だからこそ感じられるのかもな。みんな元気に居てくれて本当に良かったよ。いろいろあっただろうに。
でも、テーブルに汁をこぼした際に「私に拭かせるなよな〜」と軽口叩きながらササっと綺麗にしてくれていて、周りを見てるところとか、優しいところとかはみんな子供の頃と何にも変わってなくて、そこにすごく安心した。
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1個しかなくて笑った
あと友達の1人が「おぱんちゅうさぎ」の時計を着けててかなりカッコよかった。Apple Watchとかはもう古くて、今一番イケてるのは間違いなくこれだ。絵の掠れ具合が常用していることを示していて、友人ながら誇らしい気持ちになった。
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さらに直近旅行に行ったということでお土産を小分けにして配ってくれた。「社会人」として出来上がりすぎていて戦慄する。これくらい出来る人間なら職場に「おぱんちゅうさぎWatch」を着けていっても怒られないだろう。一方で僕と言えば人のお土産を貰うだけ貰って一切配らないことで有名なので、本当に爪の垢を煎じて飲んだほうがいい。
(慣用句としての「爪の垢を煎じて飲む」は、現代のコンプライアンス感覚としてはややキショさが勝つ表現かもしれない)。
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会の中ではオーラの話も出て(スピ系の集まりとかではなく完全に「勘」での話)、お互いのことを黄色だのオレンジだの腕利き占い師のように当てあった。本当は「アンタたちは全員金色だなァ」と言いたかったけど、感情が重くて追放されたら勘弁なのでやめておいた。みんなから見た自分のオーラは白、黄緑らしい。その意図をもう少し聞いてみれば良かったな。
個人的に「黄色」だな思っていた友人は、実際過去にオーラが見える(こっちは「勘」ではない)人に見てもらったことがあるらしく、その際は「プール掃除のときに見る底に残ったヘドロの色」と言われたらしい。それは占いとかではなく悪口なんじゃないかなと思ったけど、黙っておいた。
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帰り際はいつも寂しい。帰るか、帰らないか、その中間を小さな会話で繋げて見ないふりをする。ゆっくりゆっくり歩いて、全員を見送って帰った。政治家くらい全員と固い握手をするべきだったかも。
帰宅途中は不思議といろいろなことが思いついて、メモ帳にカリカリ書きながら電車に揺られた。飲み会の帰り道はアイデアが湧きやすいのってみんなも同じなのかな。さっきまでの喧騒と楽しさを反芻しながら、寂しくない孤独を感じているときが一番うまく言葉を組み立てられるのかもしれない。