G-15より愛をこめて(2)
本記事は2018年6月に川内地区の東北大生協購買店にて無料頒布した冊子「G-15より愛をこめて」のウェブ再録版です。
ジャンルを築いた作家・名作~海外篇~
SF・ミステリどちらも現在の隆盛に辿り着くには多くの作家・作品の登場が必要不可欠であった。中でも特に大きな役割を果たしたと考えられるものを紹介しよう。
SF篇
「幼年期の終り」(アーサー・C・クラーク、ハヤカワ文庫SF)
東西冷戦時代、宇宙開発戦争が熾烈さを増すなか、突如「上帝」は現れた。「上帝」は宇宙開発を阻み、自らの保護と支配の下、国家を緩やかに解体し、冷戦は消滅した。出現から50年のちに異形の「上帝」は初めて人類の前に降り立ち、ともに生活を始めた。異質な「上帝」に生活を変えられるのを嫌った一部の人類は「上帝」を避け暮らしていたが、その子供たちに異変が現れはじめた。果たして「上帝」の目的とは何なのか。なにから人類を保護しているのか。人類の行く末は何か。クラークの最高傑作のひとつ。映画でも知られる「2001年宇宙の旅」と並び、人類の未来を描いた思弁的な歴史的名作。SFの手法で哲学的な思索を試みた記念碑的作品でもある。
「夏への扉」(ロバート・A・ハインライン、ハヤカワ文庫SF)
ジュヴナイルSFの不朽の名作。だれもが一度は聞いたことのある作品ではないだろうか。猫のピートは、いつでも”夏への扉”を探していた。そして主人公のダンも。自らの発明品を横取りされ、反撃叶わず無理矢理冷凍睡眠させられてしまったダンは、30年後の2000年に目覚めてしまった。元居た30年前の世界へと戻ろうとするダンの前に現れたものとは……。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と同じ時間SFに分類される本作。今でも『時をかける少女』や『STEINS;GATE』など、時間SFは根強い人気を誇る。時間SFという一大人気ジャンルの原点をぜひ。
『冷たい方程式』(トム・ゴドウィンほか、ハヤカワ文庫SF)
辺境の星に急病人が発生し、特効薬を宇宙船で急送することになった。しかし、その宇宙船にはその星にいる兄を訪ねる無邪気な密航者の少女が乗っていた。しかし、少女の質量の分宇宙船の燃費は悪くなり、このままでは目的地にたどり着けない。そして急病に侵された少女の兄は死ぬだろう。宇宙船の軌道計算の結果、下された答えは……。発表されるや否や、その冷酷なラストに救いを与えようと、世界中の作家が「方程式もの」と呼ばれる作品群を執筆した。SF史に燦然と輝く傑作「冷たい方程式」ほか、シェクリイやベスター、アシモフら巨匠の作品も含む海外SF傑作短篇集。
「一九八四年」(ジョージ・オーウェル、ハヤカワepi文庫)
トランプ政権の誕生以降、米国をはじめ全世界で記録的な売り上げとなった「1984年」。1948年にイギリスで社会主義国ソビエトを批判して書かれたこの物語は、21世紀の資本主義国アメリカにも通用する物語だった。ユートピアと正反対のディストピアを舞台にしたこの作品は、あらゆる権力が必ず腐敗することを徹底的に描き出す。「適切な言葉」だけを使うことを国民に強い、それによって「正しい」国民を形成しようとする作中の政府。物語は一般には悲劇的な結末を迎えたと解釈されているが、一方で幸福に溢れたものとも解釈出来る。先に挙げたクラーク「幼年期の終り」の結末と比較される本作。その結末を、実際に読んで確かめて欲しい。
「ソラリス」(スタニスワフ・レム、ハヤカワ文庫SF)
一面を海に覆われた惑星ソラリスは、その海こそが知性をもつ巨大な生命体だった。そしてソラリス上空の研究ステーションが壊滅したとの知らせにより、主人公の心理学者ケルビンが調査のために訪れる。するとそこには、発狂した科学者と、死んだはずの恋人の姿があった。ケルビンは自分も発狂しているのではないかと自分を試験するが、どうやらそうではないようだった。ステーションで起こる不可解な現象の原因を探り、亡き恋人と交流するうちに、この異常が知性をもつ海によるものだと気付く。海は人類になにを求めているのか。知性とはなにか。それを測る科学とはなにか。恋愛、科学、哲学の織り成す究極の物語。
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」(フィリップ・K・ディック、ハヤカワ文庫SF)
SFで最も高い知名度を誇る作品と言って過言ではない本作。サイバーパンク映画の名作『ブレードランナー』の原作としても知られ、その影響を受けた作品は『攻殻機動隊』や『マトリックス』をはじめとして数えきれない。人と見分けのつかないアンドロイド「レプリカント」を破壊するブレードランナーのデッカード。彼は植えられた偽の記憶を信じ込んでいるレプリカントたちを破壊するうちに、自らの記憶も嘘なのではないかと疑い始めた。アイデンティティの崩壊と悪夢的展開。この作品の非現実感を楽しめたら、同じディックの「流れよわが涙、と警官は言った」もおすすめ。
『たったひとつの冴えたやりかた』(ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア、ハヤカワ文庫SF)
たったひとりで外宇宙に家出した少女を待っていたのは、致命的な未知の寄生生物への感染だった。このまま地球に帰還すれば、地球は自分に寄生しているこの生物によって滅亡してしまう。この状況を解決するために少女がとった”たったひとつの冴えたやりかた”とはなにか。この作品を発表した当時、「もっとも男らしいSF作家」と言われた“女性”作家ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア。その人間を見つめる冷徹なまなざしが、かえって生命のあたたかさを明らかにする。不朽の名作「たったひとつの冴えたやりかた」を表題作に、人間の不思議な決断を描いた3作が連作形式で収められている。彼女の描いた「男らしさ」をぜひ。
「ニューロマンサー」(ウィリアム・ギブスン、ハヤカワ文庫SF)
世界一の最先端技術都市、チバシティ。そこでは日夜クローンヤクザたちの血みどろの抗争が繰り広げられ、また電脳世界ではハッカーたちの誇りと命を懸けた戦いが行われていた。独特な当て字とルビによる、唯一無二の文章によって語られる物語は必読。映像作品によって花開いたサイバーパンクはここから始まった。『ブレードランナー』『ニンジャスレイヤー』『攻殻機動隊』の世界観はこの作品によって完成されていたのだ。サイバーパンクの原点にして頂点、まごうことなき名作。サイバーパンクに興味のある方は、本作の作者ウィリアム・ギブスンと、もうひとりのサイバーパンクの中心人物ブルース・スターリングの作品や、ふたりの合作「ディファレンス・エンジン」がおすすめ。
「銀河ヒッチハイク・ガイド」(ダグラス・アダムス、河出文庫)
「パニクるな!」20XX年、地球はひとりの男を残して滅亡した! さあ、タオルを持ったら、「銀河ヒッチハイク・ガイド」と一緒に壮大な旅に出かけよう! 宇宙に飛び交うナンセンスなギャラクティック・ジョーク、種族同士の常識の相違で起こるおかしなすれ違い、登場する全てに意味がない! 馬鹿SFここに極まれり! 立ちはだかるものすべてを笑い飛ばしてしまえば何も問題はない! アダムスは伝説のコメディ番組「空飛ぶモンティ・パイソン」にも関わっていた人物。SFは難しいと思っている人が多いが、この作品は頭を空っぽにして読める。銀河スケールの馬鹿話を楽しんでほしい。
『風の十二方位』(アーシュラ・K・ル=グィン、ハヤカワ文庫SF)
本短篇集に収録されている「オメラスから歩み去る人々」はハーバード大のマイケル・サンデル教授が著書で言及した名作。オメラスの街では、だれもが不自由なく、幸福に暮らしている……たったひとり、地下に幽閉された不遇な子供を除いては。この子がこの街の不幸を一身に背負うことで、幸福が成り立っている。そのことを知ったとき、オメラスの人々は何を選択するのか。文化人類学を修めたル=グィンの魅力を存分に堪能出来る、名作ぞろいの短篇集。ながらく絶版だったものの、ファンの声もありようやく復活したこの一冊。ちなみにル=グィンの父親はアルフレッド・クローバー、文化人類学という学問そのものの創始者である。
『しあわせの理由』(グレッグ・イーガン、ハヤカワ文庫SF)
現代SF二巨頭がひとり、その高度な科学知識ゆえに非常に難解とされるグレッグ・イーガンの、入門的短篇集。表題作「しあわせの理由」は日本のSFファン投票で一位を獲得した作品。脳の手術後、「ぼく」は「しあわせ」を感じることが出来なくなった。他人の思考パターンを用いて「しあわせ」を感じられるように治療をしてもらうが、今度は何にでも「しあわせ」を感じるようになってしまう。自分で「しあわせ」を操作し、恋人と出会い、普段の生活に戻ったが、そのなかで「ぼく」はあることに気付く。 表題作以外にも、科学知識をふんだんに使った探偵もの「チェルノブイリの聖母」、量子サッカーという謎の競技が登場する「ボーダー・ガード」など全9作が収録されている。解釈で困ったらぜひ当会まで!
ミステリ篇
一般に現代の推理小説の起源はエドガー・アラン・ポーまで遡るとされている。ポーは僅か数作の短篇の中に推理小説のエッセンスを凝縮し尽くしている。名探偵デュパンが活躍する「モルグ街の殺人」「盗まれた手紙」の他、「黄金虫」含めいずれも必読の名篇である。その後、短篇ミステリはアーサー・コナン・ドイル、G・K・チェスタトンの下、様々な変化を成し高水準に達した。彼らが生み出した名探偵、シャーロック・ホームズとブラウン神父。前者では「赤毛組合」「踊る人形」「まだらの紐」、後者では「折れた剣」「見えない男」「秘密の庭」を始め、多くの傑作短篇が紡ぎ出された。「推理小説の精髄は短篇にあり」という言にも頷けるはず。
「ローマ帽子の謎」(エラリー・クイーン、創元推理文庫)
現代の本格ミステリに大きな影響を与えた作家として間違いなく挙げられる作家の一つがエラリー・クイーン。ダネイとリーの従兄弟の合作ペンネームで「ローマ帽子の謎」は彼らのデビュー作、かつ『国名シリーズ』の第一作である。初期の傾向として「読者への挑戦」を挿入したこと、探偵役に自身と同じ「エラリー・クイーン」を置いたことでも有名。国内でも、影響を受けた作家として、有栖川有栖・法月綸太郎・依井貴裕などが挙げられる。劇場内で発生した悪徳弁護士毒殺事件。持ち去られた被害者の帽子。作中与えられた情報からエラリーが極めて論理的に導き出す解決に刮目してほしい。父リチャード、召使ジューナなどキャラクター性も抜群。
「そして誰もいなくなった」(アガサ・クリスティー、クリスティー文庫)
謎の人物に招かれた見ず知らずの男女10人。嵐に閉ざされた孤島で次々と起こる殺人劇。マザー・グースの歌詞の通りに殺されていく被害者。暗躍する殺人者の影。次第に明らかになっていく登場人物の秘めたる闇。そして終章明かされる事件の真相とは…。全編を貫くサスペンスフルな語りと“クローズドサークル”“見立て殺人”といったガジェットの見事な融合。
発表から80年経った今なお色褪せず読者を魅了し続ける『ミステリの女王』アガサ・クリスティーの代表作の一つ。近年、再ドラマ化もされているが、是非原作でもその魅力を味わっていただきたい。マザー・グースを扱った作品では「ポケットにライ麦を」「五匹の子豚」、ノン・シリーズものでは「ゼロ時間へ」「終りなき夜に生れつく」が有名。
「黄色い部屋の謎」(ガストン・ルルー、創元推理文庫)
推理小説史はポー、ドイルを始め、英米を中心に語られがちであるが、同時代で外せないのがフランスミステリ、ひいては本作である。ガストン・ルルーが生み出した名探偵ルールタビーユ。若き探偵が挑むのは内部から完全に閉ざされた密室の謎。続発する怪事件。パリ警視庁の名探偵まで登場し、二大探偵の対決という魅力的な構成にもなっている。江戸川乱歩は本作をミステリ黄金時代のベスト10に選んでおり、また現在でも密室ミステリの名作として高い評価を得ている。作中ルールタビーユ自身の謎も提示されているので、興味があれば続篇「黒衣婦人の香り」も併せて読んで欲しい。仏ミステリは他にもルブラン「怪盗ルパン」、シムノン「メグレ警視」等のシリーズやジャプリゾ「シンデレラの罠」がある。
「皇帝のかぎ煙草入れ」(ジョン・ディクスン・カー、創元推理文庫)
推理小説ファンを虜にするガジェットの最たる一つが「密室殺人」を始めとする不可能犯罪の数々である。ジョン・ディクスン・カー(カーター・ディクスン)はこれらの作風を得意とし、『密室の王者』との異名を取った。本作では密室殺人こそ起こらないが、婚約者の父親が殺される場面を目撃した女性がやむを得ない事情から身の証を立てられず窮地へと追い込まれてしまう。スリルに満ちた構成で物語はテンポ良く進行していき、解決篇に至って張り巡らされた伏線がその真意を発揮する、高純度の謎解きミステリを楽しむことが出来る。密室テーマを扱った作品としては「ユダの窓」「三つの棺」「黒死荘の殺人」などがある。また、「妖魔の森の家」等の短篇においても不可能犯罪を精力的に扱っているのでこちらも是非。
「毒入りチョコレート事件」(アントニイ・バークリー、創元推理文庫)
日本ではクイーン、クリスティ、カーが広く知られているが、マニア的人気を誇る作家としてアントニイ・バークリーは外せない。本作は題名通りの毒殺事件を扱ったものであるが、主人公率いる“犯罪研究会”のメンバーが各自情報を集め独自の解決を下す「多重解決もの」となっている点が興味深い。データの取捨選択、推理の着眼点のヴァリエーションだけでなく、捻りと皮肉の効いたオチにもきっと楽しんでもらえるはず。実験小説要素を取り込んだ作品を多く発表した彼の作品は他に「試行錯誤」「第二の銃弾」、フランシス・アイルズ名義の「殺意」「レディに捧げる殺人物語」が有名。国内では同じ趣向を凝らした作品として、西澤保彦「聯愁殺」、貫井徳郎「プリズム」などが挙げられる。
「幻の女」(ウィリアム・アイリッシュ、ハヤカワ・ミステリ文庫)
妻殺害の容疑を着せられて死刑判決を受けた男。事件当夜のアリバイを証明してくれるのは一夜限りあっただけの名も知らぬ女性だけ。あらゆる状況が男に不利な方を向く中、友人は、恋人は、刑事は彼の無実を晴らせるか?「幻の女」の正体とは?そして事件は意外な展開を迎える…...。冒頭、有名な書き出しで始まる本作は『サスペンスの詩人』と評されるウィリアム・アイリッシュの代表作の一つ。戦後すぐ、原書で本作を読んだ江戸川乱歩が大いに絶賛し、翻訳を勧めたのは有名なエピソードであり、日本における翻訳ミステリの歴史を語る上でも重要な一冊である。本作の他、ヒッチコックにより映画化もされた短篇「裏窓」の他、「黒いカーテン」「暁の死線」「夜は千の目を持つ」も有名。
『九マイルは遠すぎる』(ハリイ・ケメルマン、ハヤカワ・ミステリ文庫)
ミステリ篇の始めで短編ミステリはドイル、チェスタトンにおいてすでに高水準に達したと述べたが、ロジックの面を突き詰めその極北に立った作品が本短篇集の表題作である。
「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない、ましてや雨の中となるとなおさらだ」 これだけの文章から、論理的思考によってアッと驚く結論を導いてしまう、知的遊戯の一つの到達点がここにある。ハリイ・ケメルマンは同作を着想から14年を掛けて完成させた。こうして一切の無駄が無い完璧な短篇が誕生した。安楽椅子探偵ものを全八篇収めた本短篇集はエラリー・クイーンが最も重要な短篇集とみなした『クイーンの定員』の一つにも選ばれている。同趣向の作品としてアシモフ「黒後家蜘蛛の会」シリーズなども外せない。
「女には向かない職業」(P・D・ジェイムズ、ハヤカワ・ミステリ文庫)
探偵稼業は女には向かない。パートナーを自殺で失ったコーデリア・グレイは、周囲のそんな声を気にせず、一人で依頼をこなしていく。ある科学者の息子の自殺の理由を調べる彼女であったが、調査は意外な展開に向かっていく…...。現代本格推理作家のうち、クリスティの後継者の一人と目されていた作家がP・D・ジェイムズである。女探偵のひたむきな活躍を描いた本作は、コーデリアの生き様や彼女と登場人物達との関係性が瑞々しく語られ、物語の最後まで読者を惹きつけて止まないことだろう。瀬戸川猛資の解説含め、一読を勧めたい一冊。現在初期作品の多くが絶版状態であるが、興味があれば同じくコーデリア・グレイが登場する「皮膚の下の頭蓋骨」の他、アダム・ダルグリッシュ警視が探偵役を務めるシリーズも是非。
「ウッドストック行最終バス」(コリン・デクスター、ハヤカワ・ミステリ文庫)
何度読んでも楽しめる作品。推理小説に限定すれば、選ぶのは中々難しいことだと思う。コリン・デクスターの『モース警部』シリーズはこの条件を満たす一つだろう。クロスワード・パズルのカギづくりの名手としても有名なデクスターは、物語全編を通して推理の“カギ”を散りばめており、それはデビュー作の本作でも同様である。女学生殺人事件に対して、モース警部は様々な“カギ”から論理のアクロバットを産み出し、事件に新たな側面を映し出す。終始、仮説の提示・論理の構築・検証・再構築が繰り返される流れは長編数本分に劣らない読み応えを読者にもたらす。科学捜査に頼らない作風から、論理の面白さを真っ向から感じることが出来る良質な本格ミステリシリーズで、現代英国ミステリを語る上でも欠かせない作者の一人である。
「寒い国から帰ってきたスパイ」(ジョン・ル・カレ、ハヤカワ文庫NV)
スパイ小説と聞いて思いつく作品は何だろうか?恐らく多くの人が「007」シリーズのジェイムズ・ボンドや「M.I」のイーサン・ハントを挙げるだろう。本作は“スパイ”にそのようなイメージを抱いている人の期待を裏切りこそすれ失望させることはない筈で是非一読を勧める作品である。MI6に勤務経験のある著者ジョン・ル・カレが本作で選んだ舞台は冷戦下のイギリスとドイツ。英国情報部のスパイ、リーマスが仕掛ける諜報戦。両国が抱える個人を超えた思惑。巨大な組織で生きる人間の苦悩と葛藤が鮮やかにかつ鋭く描写されている。従来の“スパイ観”が覆されるはず。気に入った方には、ジョージ・スマイリー主人公のシリーズ作品(三部作or五部作)を読んで、よりハマって欲しい。もしくは近年映画化された『裏切りのサーカス』を観るのもアリ。
編集後記
創刊号より2ヶ月。無事に第二号を発行することが出来ました。今回は『ジャンルを築いた名作』ということで、海外の有名作品をそれぞれおすすめさせていただきました。現在入手しやすい作品を中心に選びましたので、次号予定の国内篇と併せて、ブックガイドと簡単なジャンル変遷の資料としても楽しんでいただけるかと思います。今回紙面や絶版等の都合により残念ながら紹介できなかった作品も数多く、そちらにも勿論、おすすめしたい名作・傑作がまだまだありますので、興味を持った方は気軽に部室にお越しください。お待ちしています。目標は隔月刊行ですが、夏期休業もありますので、次号は8月頃もしくは10月初旬を予定しています。感想等があれば是非!!