祈り

祈り
(天使と暮らして11)

食後の歯磨きは私の担当。
「マッサージ」と声掛けしながら。

歯磨きは、簡単そうに見えて、難しい。
人生のあらゆることが、
簡単そうに見えて、実は難しい。

私は頑丈な歯を親から受け継いだ。
友人の歯科医は、私の歯を
「丈夫な歯」だと言う。

しかし、不適切な磨き方を長年続けて、
かなりガタがきている。

歯ブラシの力の入れ具合、
持ち方や動かし方、
ブラッシングの細かい手法など。
歯磨きは、
自己流の思い込みでやっていると、
大きな間違いになる。
私の場合がまさにそれ。

大体、
私のすることは、自分勝手な思い込みが多く。
自分がいいと思ってすることは、
世間普通の道から外れたことがたくさんあった。
歯磨きも例外ではない。

娘の歯磨きをするようになり、
初めて、歯磨きのコツが分かった。

歯磨き上達の近道は、
他人の歯を手入れすることだった。

娘は思春期から歯医者に切れ目なく通い、
大の歯医者嫌いになっている。

ところが、
私が歯磨きするようになって、
娘は一度も歯医者に行ってない。
私の歯磨きの成果だと、自負している。

毎回、長くて4分。
この時間、私は
幸せを感じる。

幸せは当人がそう感じるときだと、
どこかで聞いたことがあるが。
歯磨きするたびに、感じる。

一体いつまでこの平穏が続くだろうかと。
寿命は神が決めることだが、
歯磨きは、私の一風変わった祈りのようなもの
かもしれない。

つづく

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