小匙の書室298 ─人魚が逃げた─ ⭐︎先読みレビュー
情報番組の街角インタビュー。
そこに映った王子が放ったのは、こんな不思議な言葉だった。
ぼくの人魚が、いなくなってしまったんです。
逃げたんです。この場所に──。
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あなたは『小説』に何を求めるだろうか。
面白さ? 怖さ? 緊張感? 感動?
「いやいや、辛い現実から逃げるための安らぎだ」
と、仰るならばこそオススメの一冊がある。
それというのが、11/14、PHP研究所さんより発売予定の──。
『人魚が逃げた』
である。
本屋大賞4年連続ノミネート、いま最も注目されている著者・青山美智子先生による最新作だ。
氏はこれまで、『木曜日にはココアを』『お探し物は図書室まで』『赤と青とエスキース』『リカバリー・カバヒコ』などで、多くの読者に温かな感動を与え続けてきた。
『人魚が逃げた』もそこに顔を並べる優しさに満ちた温かな内容となっており、
✨幸福度最大値✨
という宣伝は全くもって過言ではないことを、お伝えしておこう。
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──銀座の歩行者天国。
そこにはそれぞれの人生を歩む老若男女がいる。
どこから来てどこへ行くのかは、誰にもわからない。
だから、自由に生きているように見えてその実、悩みを抱えていることもまた知られないのだ。
ある者は自らの恋心に、ある者は家庭内における『自分』の居所に、ある者は自らの職種に──。
そんな彼らが出会うのは、街角インタビューによってSNSの話題をさらった『人魚を探す王子様』だった。
王子とのファンタジックな交流がもたらす、『人魚姫』に絡めた悩みに対する気付きと、再生。
これが至極なドラマであり、傷付いた読者の心を癒してくれるカンテラとなるに違いない。
読みながら、私はずっと思っていたことがある。
著者の脳内には、はたしてどれだけ『優しさ』と『愛』の引き出しがあるのだろうか?
と。
一つ一つの篇を吸収するたび、私は「自分でも意識していなかった心の一部がくすぐられる」感覚に身を委ねることとなった。
紙の書籍を手にしていたら、間違いなく抱きしめていたことだろう。
優しさとは連鎖していくものだと祈っている。
物語には人を救い報いてあげる力があるのだと、信じている。
だから、そう。
私はまず、大切な人に本作を贈りたい気持ちで満たされた。
まさしく、『マイ・プレゼント』『ユア・プレゼント』として──。
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※ちなみに、現在、PHP研究所さんのサイトにて、『人魚が逃げた』の第一章が試し読みできます。まずは一つ、心を温めてみませんか?
ここまでお読みくださりありがとうございました🧜