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AIスタートアップのPMが製造業の変革を志した話 〜 PFN to CADDi 〜

初めまして、猿田貴之と申します。CADDi(キャディ)で(テクニカル)プロダクトマネージャーをやっています。前職はプリファードネットワークス(Preferred Networks、以下PFN)というAIスタートアップ所属で、CADDiには2021年10月にジョインしました。現在主にCADDiの新規事業である図面活用SaaSの立ち上げに携わっています。twitterはこちらです。

前職では主に企業との共同開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーをやっていました。プロジェクトの運営、共同開発先との折衝、エンジニアリングチームのマネジメントまで幅広く経験させていただきました。以下は自分が携わっていた建築現場向けの自律移動ロボットの開発の様子です。

このnoteでは私の今までのキャリアを中心に述べさせていただき、CADDiで何を成し遂げたいのかについてお話しできればと思っています。

想定読者:コンピュータビジョンエンジニア、AIエンジニア、プロジェクトマネージャー、プロダクトマネージャー、エンジニアリングマネージャー、これらのいずれかになりたい人・興味がある人、もちろんCADDiに興味がある人

キャリアの変遷

最初にざっと私のキャリアの変遷について述べさせていただければと思います。

2007-  キヤノン本社R&D部門 コンピュータビジョン/機械学習エンジニア
2018-  Preferred Networks   AI開発プロジェクト プロジェクトマネージャー(エンジニアリングマネージャー兼務)
2021-  CADDi  図面活用SaaS (テクニカル)プロダクトマネージャー

note 背景 (3)

上記キャリアのようにいわゆるエンジニア出身のPDMです。CADDiでは技術力(特に画像処理技術の1つであるコンピュータビジョン、Deep Learning含む機械学習)を活かしてプロダクトマネジメントを行うテクニカルプロダクトマネージャーを務めています。

キヤノン時代

キヤノン時代は本社R&D組織に所属していてコンピュータビジョン(CV)、機械学習のエンジニアを行なっていました。キヤノンの既存事業や新規事業に貢献することをゴールに研究開発を行なっていました。キヤノン時代の主な功績は以下の2つです。公知となっている範囲で以下記載していますので一部分かりにくい記述になっているかもしれません。もし、疑問などあれば直接聞いてください。

ロボットによる部品自動ピッキングのための部品の概略位置姿勢推定アルゴリズムの開発
カメラのオートフォーカス機能のための物体検出・領域分割を実現する軽量CNN学習

ロボットによる部品自動ピッキングのための部品の概略位置姿勢推定アルゴリズムの開発

山積みされた部品から自動的にロボットにより自動ピッキングするためのビジョンシステムの開発です。ピッキングするためには各部品の三次元位置姿勢を取得する必要があり、それを部品のCADから得られるモデルを用いてモデルフィッティングを行って取得します。それには初期値となる三次元位置姿勢が必要になり、私はそれを認識アルゴリズムを用いて推定するアルゴリズムの開発を行なっていました。当時はDeep Learningが隆盛の頃ではなかったため、各姿勢で撮影された部品の部分画像を高速にマッチングすることで初期位置姿勢を推定する手法を開発しました。現在から振り返るとあまり特徴のない部品画像をどうやって識別するか、CADから学習するといった現在のDeep Learningではようやく結果が出始めたCG学習を導入していたりとかなり通じるところがあると感じています。

カメラのオートフォーカス機能のための物体検出・領域分割を実現する軽量CNN学習

カメラのオートフォーカス機能のためにユーザがフォーカスしたい物体や絵作りのために検出すべき領域をCNN(Convolutional Neural Network)で検出するために、軽量なCNNを学習するという研究開発です。あらかじめ学習したCNNを量子化などで軽量化するのではなく、回路に搭載可能な軽量なCNNを直接学習するものです。物体検出と領域分割のマルチタスク学習もしていました。Deep Learningの可能性、製品に技術を搭載する難しさややりがいを感じることができました。

キヤノンからPFNへ

キヤノンでも他のメーカーと変わらずAI技術による付加価値を検討しておりました。その中で先述したように自分達が検討していた技術がキヤノンの製品に搭載される経験をいくつかさせていただきました。

その中で既存製品にAI技術で付加価値を足すという仕事ではなく、純粋に世の中に価値を届ける仕事がしたいと思うようになりました。ただそれを行うためには技術者として一段レベルアップすること、市場価値を高めることが必要と考え、PFNへジョインしました。

※キャリアについての考え方は人それぞれだと思いますし、所属していた組織・会社を批判するようなものではありません。その時の自分の実力・立場なども含め難しいと判断しています。以下の記述もそのように読んでいただけると幸いです。

PFNでの仕事

PFNでは主にプロジェクトマネージャーをしていました。PFNでも非常に多くの経験をさせていただいたと思っています。ほとんどのことが初めてだったのでめちゃくちゃ大変でしたし多くの失敗もしました(これは別noteで)

その中の1つの仕事として冒頭にあげた鹿島建設様との共同開発プロジェクトがあり、自律移動ロボットの開発プロジェクトマネジメント、SLAMチームのエンジニアリングマネジメントを行っていました。

ロボットというとハードウェア開発のイメージが強い人もおられるかもしれませんが、実際にはハードウェアだけじゃなくソフトウェアも含めた多くの技術の統合技術開発になっています。我々は主に自律移動システム部分を担当していましたが、それでもロボットが置かれる環境の障害物を認識したり、ロボットの自己位置を推定するために複数のセンサの情報を統合する必要がありました。また、複数のモジュールを利用してロボットを稼働する必要があるため、単体テストや統合テストを十分に行なっていても、現場で起きうるほとんどのパターンを網羅できないので建築現場でのテストや改善をすることが求められ、プロジェクトマネジメントとしても難しいタスクでした。

40代のキャリアに向けて

PFNでは多くの企業様とお会いして共同開発の提案をさせていただきました。その中で徐々に下記のようなことを思うことがありました。

顧客との共同開発であるため、顧客の課題を解決する、顧客の将来のレベニューを大きくすることが主である。事業領域全体へインパクトを残す(変革する)ことに関して必ずしもダイレクトでない場合がある
(提案側の提案力が必要であるのはもちろん)中長期的に価値があることであっても顧客から投資が止まればプロジェクト終了
(基本的に)技術的な不確実性解消のための研究開発からスタートするため、新規サービスを立ち上げ、そこで貯まったデータやノウハウを使って改善しサービスの利益や価値を改善するというサイクルが回しにくい・投資回収が遅れる

私は来年40歳になるのですが、以前より40代が一つ自分の集大成かなと思っています。もちろん50代、60代以上の方で活躍されている方は多くいらっしゃいますが、30代、40代できちんと成果を残されていると思っています。そのため40代の間に

事業領域にインパクトを残すような仕事をすること
プラットフォーマーで働く(会社がそれになることに貢献する)
グローバルに活躍できる人材になること

が目標であり、ステップだと思っています。

PFNに残っても上記は達成できると思いましたが、新規サービスを立ち上げ、そこで貯まったデータやノウハウを使って改善しサービスの利益や価値を改善するというサイクル

をどうしても自分でマネジメントするという経験をしておかなければならないという思いがあり転職を決意しました。

Why CADDi?

ここの章ではなぜCADDiを選択したのかについて述べたいのですが、端的にいうと先に述べた

事業領域にインパクトを残すような仕事をすること
プラットフォーマーで働く(会社がそれになることに貢献する)
グローバルに活躍できる人材になること

が達成できると思ったからです。

CADDiは製造業における調達プラットフォームサービスを手がけている会社です。ユニークなのはサプライパートナーのマッチングサービスだけを提供しているような会社ではなく、自分達で受発注を受けて実際に納品をしています。事業領域の中にどっぷり入り込んでいる所が面白いと思いました。

CADDiは製造業の受発注業務を行なっているため、製造業で携わる方と同様のペインも抱えています。そのため、事業への解像度も外から業務改善提案する、サービスのみを提供する会社に比べれば相対的には高くなります。私もPFN所属時に数多く建築現場に通っていましたが、やはり建設業を実際にやっておられる人との解像度の差はあったと思います。また自社の技術開発が自社のオペレーションの改善にも繋がります。

また、カジュアル面談をさせていただく中で

製造業の調達分野というイノベーションが起きにくい領域に切り込み、製造業のアップデートを行おうと考えている点
マーケットサイズがかなり大きく、トップラインが上がり続けておりまだまだ可能性がある点
CADDiの受発注プラットフォームサービスが一定のPMFをしており、周辺プロダクト(Whole Product)と合わせてプラットフォーマーになる可能性がある点
グローバルに進出する点

これらが今回私がCADDiを選んだ理由です。

また、ちょうどCADDiが新たに始める図面管理SaaSのテクニカルプロダクトマネージャーを探していたタイミングが重なったことも理由の一つです。

CADDiに入ってどうだったのか

この章ではCADDiに入って約1ヶ月で感じていることを中心に記載したいと思います。

データがたくさんある

キャディは顧客から図面を受け取り、見積もりを行い、受注、最適なサプライパートナーを選定、発注後は生産管理し受注し、検品して顧客に納品までを行っています。つまり、サプライチェーンの最初から最後までに携わっています。そのためにできること、持っていて意味があるデータがたくさんあります。

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ただ、それらは十分に活用されているとは言えないし、活用した時の価値はまだ誰にもわかっていません

例えば、サプライチェーン全体をデジタル上に再現し突発的な変化(仕様変更、発注内容変更、NG品が出てしまう)に対して最適なオペレーションをシミュレーションするみたいなことができるんじゃないかと妄想しています

コンピュータビジョン・機械学習の技術を総動員する

今私は図面活用SaaSのテクニカルプロダクトマネージャーをやっています。さらにいうと、その中の図面解析機能のプロダクトオーナーをやっています。図面内に書かれている情報(手書き文字なども含む)をいかに汎用的に抽出してくるのか、上手に活用するかという機能です。

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現在図面の特徴抽出の検討を行う中で、コンピュータビジョンや機械学習の知識をフル活用しています。今は深層学習から始められる方も多いかと思いますが、エッジ抽出やテンプレートマッチングなどコンピュータビジョンの基礎技術を久しぶりに使いました(キヤノン時代の知識・経験を活かすような場面もあったりします)。

最新AIを諦めたわけじゃない

実際最新のAI技術開発は今やっていないです。どちらかというとアルゴリズムを地道に構築している方が近いです。ただ中長期的に機械学習をやろうとは思っていてアノテーション作業などは並行して実施しています。

例えば、図面transformerとかできるんじゃないかと妄想していたりします。transformerは最近Deep Learningの分野において注目されている技術です。もともとは自然言語処理(NLP)の分野で多く使われていた技術ですが近年画像認識の分野でも多く使われています。CADDiでは図面から自動見積もりを行う技術開発なども行なっており、図面から自動的に多くの情報を抽出する技術開発は行なっていく必要があります。そのあたりも進めていければと考えております。

興味がある方は下記リンクなどが分かりやすくまとまっています。体系的にCV x Transformerの研究の流れがわかる素晴らしい資料です。最近のCNNの特徴をうまくTransformerに取り込む研究が面白いなと思います。

最後に

もちろんエンジニア採用をめちゃくちゃしています。今までCVやAIエンジニアのかたにとって必ずしも魅力的なキャリアじゃなかったかもしれません。ただ必ず魅力的なキャリアになると確信していますし、そうすることが私の責務の1つだと思っています。

もし少しでも興味を持たれた方は私までDMをいただければと思います。twitterはこちらです。

こちらのウェビナーでも話しますのでぜひご参加を検討ください

最後までこのnoteをお読みいただきありがとうございました。思いの外大作となってしまったので当分書かないかも。



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