見出し画像

加賀美ハヤトの3D配信はひとつの到達点

いきなりですがみなさん、コレ見ました?

見ていない方は是非ご覧ください。ほとんどライブ生歌なので初見の方でも楽しめます。




みました? 



いやめっちゃよくないですか!!?????いやっめちゃよくないですか!!!!!!!?????


すみません、取り乱しました。
デビュー当時から応援している身としては本当に感無量です。
彼の才能と努力が結実し、こんなに話題になるほどのエンタメを提供してくれる…現在進行形のコンテンツならではのよさがありました。
ハヤト、本当にありがとう…(誰?)


本当はこのまま一コマ一コマ良さをひたすら挙げていきたいのですが、そんなことやっていたらとても読める分量ではなくなりそうなので(あとそれはTwitterでファンの皆さんが十二分にやってるし)ここはひとつ別の切り口で考えてみようと思います。
と思って書き始めたのですが、普通にまあまあの分量になりました。
5000字とかレポートだったら絶対書けません。好きのパワーってすごいね。


いけ好かない目線ではありますが、コンテンツのあり方、的な部分で自分が感じたことをまとめます。
ただの一ファンであり、考察に求められるべき知識も浅薄であるとは思いますが、もしよければお付き合いください。
後半、都合上中の人にかかわるお話が出てきます。苦手な方はお気を付けを。


技術的側面

なんといっても六人のバンド演奏をフルトラッキングしたことが一番わかりやすく、すごいことだと思います。
指先の動き一つ一つをトラッキングし、生演奏と同期させる。おそらくかなりの手間であると思います。
しかし、それによってライバーひとりだけでなく、バンド全員でライブを行っている、そしてそれを画面越しに見つめている、というライブ体験の没入感が得られたことは間違いないでしょう。バーチャル空間であるのにライブに参加している感覚、なかなか簡単に得られるものではないはず。

バーチャルライブ自体はいくつか先行例(cf.TUBEOUT)がありますので、ライブとトラッキングというのをポイントにしてみます。

指先の細かい動きをバーチャル空間で再現する。例としてまず挙げられるのはときのそらちゃんのピアノ配信でしょう。
余談ですが、これもう二年前なんですね…時は早い

これは今回の配信とは厳密には違っていて、「3DモデルとMIDIキーボードを同期させてまるで実際にピアノを弾いているかのように見せる」手法をとっています。
MIDIデータを利用している都合上、この手法では基本ピアノしか再現できません。(ギターやベースのMIDIコンってあんまり聞きません)
それに今見るとぎこちなさや不自然さは目立ちますが、それでも彼女がバーチャル空間で弾き語る姿に当時「新たな表現のトビラが開いた」的な盛り上がりがあったと記憶しています。
それまでのライブ感といえばコメントを読んだり、リプライしたりぐらいしかなかったと思います。ここで音楽、というかライブとVtuberが出会うことは大いに意味がありました。
冒頭に述べた「バーチャルのライブ感」の創出ですね。


もう一つは、同じにじさんじの社築による弐寺配信です。

こちらは今回同様、トラッカーを指に装着してその動きを3Dモデルと対応させる手法と思われます。
というか、この配信で得られた知見をもとに今回の配信があった、といったほうが適切かもしれません。
指とトラッカーと3Dモデルを対応させてライブ配信を行うにはかなりの技術的障壁があるはずです。素人でもわかります。

でも、それを形にしたのがすごい。やしきずのガチプロ運指と相まって、こちらも「ライブ感」たっぷりの配信でした。特に筐体の内側からのぞき込む視点などはバーチャル特有の表現で、「ありえないこと」が簡単に行えるバーチャルの良さが感じられますね。


そして今回のライブです。先述のように「細かい動きを再現すること」は没入感を倍増させます。
それが6人分、しかもバンド演奏の再現、加えて急速に手元によったり、引いたり、間を縫ったりといった「ありえない」カメラワーク。引き込まれないはずがありません。


技術の進展と融合、そして蓄積された知見の活用による新たなライブ感。このスピードはVtuberならではでしょう。

このライブ感は生半可なものではお遊び感が出て終わりです。モデル、技術、演奏、演出。どれもが素晴らしいものだったからこその配信でした。

バーチャルのライブ感」はここで一つの到達点を見た、といってもいいと思います。

僕はこの配信を見ながら、God knows...を思い出しました。
あれも確か予算やスケジュールを度外視して緻密に演奏を再現していました。それにより、ハルヒが実際にステージに立って歌っているのをキョンと見ている、という感覚があったと思います。言うなら「アニメのライブ感」ですね。この系譜はけいおんで爆発し、今ではバンドリなんかが線上にいるのかな?
社長が「本気の道楽」と形容したこの配信、通ずる部分はあるでしょう。




まあ道楽の本質部分はおそらくこっちです。B・W・Dさんです。

画像1

改めてみてもすげえ絵面ですねこれ

これに関してはもう本当に「男の子の夢!!!」って感じがします。僕も元少年でデュエマキッズだったのでわかります。
幼いころにアニメで見た、クリーチャーとともに戦うあの感覚の再現。
めちゃくちゃかっこよすぎる。出てきたとき鳥肌立ちました。かっけえ。

ちゃんとした話をすると、今回のこれのおかげで今後「商業用3DCG」とVtuberのコラボ障壁がぐっと下がりました。
当然社長が元からDMが好きで、その熱意と努力あっての賜物だとは理解しています。
けど、こうして先例、しかも大成功の先例ができたことで企画の立案や進行が今後かなりスムーズになるでしょう。3Dモデルデータがあれば「同じ画角に映る」ことは簡単です。いろんなコラボが予想されます。
もしかしたらVRchatで展示、なんてこともあるかもしれません。今後に期待ですね。

コンテンツとして

ここからいけ好かない度が加速度的に上昇します。あとさっきいった中の人ネタ頻出です。
嫌いな人は飛ばしてください。
声の在り方を重ねて名付けてしまうご無礼、お許し願いたい。

まずは配信そのものについて。
やはり演者がライブに慣れているだけあって、かなり見栄えする配信でしたね。歌声ももちろんそうですが、ライブでリクを受けたり、寄ってきたカメラに映えるようなポーズを取ったり。リク受けるのって楽器隊が相当プロってないとできない気がします。完全感覚Dreamerのイントロとかはその場1発感ありましたしね。

前回の3Dライブを踏まえたりと、ファンサービス旺盛でした。これは普段からいえることですし、何ならこの配信そのものがファンサービスですけど…
とにかく、加賀美ハヤトは魅せ方が上手い。他のライバーじゃこうは行かないんじゃないかな。

んで、ここからが話したかったことなんですけど、こういう風にVtuberとして、バーチャル空間でやれることを模索するってのは初期のVtuberの目的に近いんですよね。いわゆる四天王のころです。

3Dモデルがあって、背景はなくて、アニメキャラとしてではなく、Vtuberとしてできること、Vtuberの在り方を視聴者と模索する。そんな感じでした。

こちらは2016年。マジで????そんな前??


けど今の環境は全く違います。
(あくまでにじホロだけなんですが、現状新人ライバーでにじホロ以外で台頭している人間は楠栞桜しかいないんでその前提で進めます)

Live2Dのキャラとちょっとした設定をもって生まれてきて、ライブ配信を主とするスタイルが大多数です。
一部の人からは絵と萌え声があるだけ、みたいな揶揄も受けていますね。

こんな記事が大バズりして賛否両論巻き起こる程度には変わりました。
というか、多かれ少なかれこの記事はこれに影響を受けています。

どこで変わったか。
まぎれもなく「にじさんじ」の「月乃美兎」です。


彼女が明確なキャラクター性とそれを裏切るトーク内容、そして彼女本人のコンテンツ力とトーク力で人気を得てから、徐々に変化していきました。「何をするか」ではなく「なにであるか」が重要視され、デビュー後かけられる期待は裏切られるのがお約束となっていきました。


今では「やっぱりにじさんじだった」というコメントに代表されるように、リスナー側が「設定の崩壊」を望んでいるまであります。

具体的には委員長のムカデ人間話のようなキャラクターの不整合や、今では随所に見られるRPの放棄などです。

本来であれば(アニメであれば)徹底して守られるべき設定を初配信で裏切る。そのギャップを面白いと感じる。
この感覚は「建前」で半分成り立っているVtuberならではです。

この感覚が大衆にウケるからこそ、上記ブログにあるように「日常の切り売り」「人間性の切り売り」「関係性の消費」みたいなものが一般化して、しかもそれで数字が取れるようになりました。

どちらが良い、悪いというのは難しいです。個々人に面白さのアンテナがあり、またエンタメである以上、面白いと思う人が多い方が生き残ります。リアリティショーの残虐性については確かに考慮すべき点がありますが、それに触れるともう一本記事が出来てしまうのでここでは触れません。


そういった(設定をあらかじめ持つという意味での)アニメキャラ的配信が主になっていった極地が黛灰の3D配信だと考えています。ただ、彼の配信は問題を提起されている「切り売り」的な配信とは少し異なります。

黛灰はにじさんじ所属のハッカーで、ゲーム実況やら雑談のライブ配信がメインのライバーです。独自の世界観とストーリーを持っています。それゆえ時折世界観に沿ったストーリーを展開していきます。

それが大きく進んだのが3Dお披露目でした。


Cパートで倒れ込む黛。感覚のズレ、及び自分が別視点から観測されていることに気づいていく……

ストーリー自体も面白いなとは思うんですが、このストーリーは「中の人」「ガワ」と言ったメタ的な要素をストーリーに落とし込んだものである事が重要だと考えます。


Vtuberである以上、お互い潜在的に意識しているが誰も触れてこなかった要素について触れつつ、それをキャラの一部として昇華する。

その一環で、RPにおけるライバー間の意識の違いも「そういう設定」にしてしまいました。
月乃美兎以降のVtuberの特ににじさんじの潮流を踏まえたストーリー。
うーん、よく考えられてる。



アニメキャラのようにかっちりとした設定があり、かつストーリーの展開にはリスナーが干渉できる。(Twitterのアンケート機能で黛灰の行動が決まる、というものがありました)

明かされる部分と明かされない部分があり、それについて考察することが出来る。そりゃ面白いわ。オタクは考察が好きだからね(偏見)

これも、ある種アニメキャラ化したVtuberならではのエンタメではないでしょうか。リスナーと何ができるか模索するのではなく、リスナーをストーリーの一部に組み込んで展開する。互いの距離が近く、相互に干渉できるからこそです。


当然これも演者の才能、努力による部分が大きいです。普通なら設定やRPに綻びが出て終わりです。(先程も述べましたが、今やそれが望まれている不可思議な逆転はありますが)
こうして一年近く設定を守り続けているのはかえって異質なまでありますが、すべては彼のエンタメ魂で成立しています。すごいね。


この対になる様な2つの配信を、同じにじさんじの男性ライバーが行った、というのが面白いなと思う点です。

ご存知の通り、Vtuberは圧倒的に女性が強いです。理由は簡単、男オタクばっか見てるから。
けど、そんな中で自身の持つ魅力を発揮し、頭1つ抜きでるほど視聴者を集めた男性ライバーがこういう配信をした。
箱の力もありますが、2人ともお互いの信念に基づいて活動した結果です。

男性ライバーの可能性を示せたのではないでしょうか


とはいえ現状、業界はにじホロの寡占です。もちろん他にも面白いVtuberはいるし、オススメしたい気持ちもあるんですけど…

新しくその存在を知った人は、ほぼ必ずにじホロのどちらかからです。そしてそのふたつの箱は、規模が大きいためにその箱の中だけで関係性が完結してしまっています。
観るべきものを限定され、かつその中身は(同じ箱の連帯感もあり)濃密で膨大なものですから、新規参入者は滅多なことがない限りそのコミュニティの外側に目を向けることはありません。内側だけで充分楽しいからね。

でも、その内側で「リアリティショー的でない」初期のVの方向性と今のVの方向性をもったふたつの配信が男性ライバーによって行われた。
今後のVtuberの在り方について大きなふたつの道が見えます。
さらに、ライバーとしての「何をエンタメとして見せるか」という部分はもちろん、受け手側の「何を面白いと感じるか」という部分に訴えかけるものがあります。

彼らの配信は今後の業界のターニングポイントとなるのでは無いでしょうか。

今後も、方向性が大きく変わることはないでしょうが、こういったVtuberならではの試みが今後更に増えていくと、Vtuberを好きであること、応援することにしっかりとした重みが着いてくるかなと思います。

終わりに


色々書きましたが、要は「加賀美ハヤトのお披露目配信はめちゃめちゃかっこよくていろんな点で今後の可能性を拓くものだった」ってことです。
ここ最近は目新しさがなくVtuberからは距離を置いていましたが、また少しずつ興味が再燃してきました。
これらの配信を起点として、にじホロだけでなく、業界全体が更に面白くなっていくことを願うばかりです。


最後に好きな社長の配信を置いておきます。

ここまでお読みくださりありがとうございました。

いいなと思ったら応援しよう!