平常心是道
お稽古に訪れたら、前の時間のお弟子さんがお水屋で後片付けをされていた。弟子同士で会ったときは「ごきげんよろしゅう」とご挨拶するのが慣わしである。
さて、私もお水屋での準備を済ませ、お稽古を始める。本日のお菓子は「秋茜」。オレンジと紺の2色を浸かったお菓子で、上にトンボが描いてある。トンボは秋の風物詩である。すっかり秋になってしまった。
そろそろ盆略点前も仕上げの時期である。一度目は先生に教わりながら、二度目は何も言われずにどこまで出来るかやってみる。お盆と建水を用意し襖の前に控える。
「お薄を差し上げます」そう言ってお盆を両手で持ち部屋に入る。お軸へ向かうときは右足で畳の縁を越え、風炉の前に座りお盆を置く。お軸から離れるときは左足で起きて左足で縁を越える。続いて建水を持ち入る。お盆を斜めに向けて建水を膝の位置まで上げ、姿勢を正してお点前開始。
帛紗を捌いて棗を清める。帛紗を捌いて茶杓を清める。銀瓶を持って茶碗にお湯を注ぐ。茶筅通しを行い、茶巾を入れ、茶碗を拭く。
茶杓を持ち、「お菓子をどうぞ」。茶杓を握り込んで棗を持ち、蓋を立てかけて、抹茶を2杯すくう。帛紗を持ってお湯を注ぎ、点てる。2回回して差し上げる。
相手が一口飲んで落ち着いたタイミングで「お熱うございませんでしょうか」。よかったよかったとなって待っておけばよい。
茶碗が返ってきたら、まずお湯で濯ぐ。「どうぞおしまいください」の挨拶がかかったら、左手に茶碗を持ったまま右手で軽く受ける。その後茶碗を置き、両手をついて、「それではおしまいにいたします」。
再びお湯を注ぎ、茶筅通しを行う。お湯を捨てたら、左手に茶碗を持った状態で茶巾を入れ、茶碗を置く。茶筅を入れる。最後は、茶杓を持ち、建水を下げ、茶杓を持ち込み3本の指で帛紗を持ちそのまま捌く。茶杓を清め、その手で棗を12時の位置に戻し、帛紗に付いた抹茶を払う。帛紗を腰に付けお盆を元の位置に戻す。建水を建水回りで退出させ、お盆も退出させる。「失礼いたしました」と挨拶して、襖を閉める。
これが盆略点前の一連の流れである。頭では全て理解しているのである。しかし、実際にやってみると躓く。思うように体が動かず停止する。10回ほどやれば自然とできるようになるよと言われたが、15回かかってしまっている。
何かを意識すると何かが抜け落ちてしまう。これは茶道に限らず私の本性そのものである。不器用な私の性格がこんなところにも現れるのか。だが焦らない。お点前は禅と同じである。とにかく集中すること。お軸にあった「平常心是道」を胸に刻むこととしよう。
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