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【同志少女よ、敵を撃て】独ソ戦を女性兵士目線で描く(ヴァルキリーとエインフェリアみたい)

人気の本をようやく読むことができました。

表紙の絵が美しい。

第二次世界大戦下、ソ連赤軍で狙撃兵として戦う少女たちのお話です。

苛烈極めたスターリングラード攻防戦をメインに、
主人公セラフィマが、平凡な生活、訓練、実戦投入をへて、徐々に一流の狙撃兵としての自我に目覚めていく姿が描かれます。

作品の感想

月並みの感想ですが、どちらにも言い分があり、どちらの兵士にも家族があり、どちらも悪行が横行し、どちらも人を助けようとする。
そのジレンマから、どちらが正しいなんてことはない、ということを強く感じます。
視点が変わればあちらが悪。
こちらがしていることは置いておき、相手を責める。戦争の姿なんだな、と思います。
♦︎
淡々としているからか、登場人物に感情移入はあまりしません。
凄惨な描写も内容的に多いのですが、あまり気持ちが引っ張られることはなかったです。
ずーーーんと数日引きずる……というトラウマ読書体験にならなくてよかったです。

♦︎

地の文では、時期や戦局、ロシアとドイツの双方の作戦概要を説明していますが、ちょっと難しい……
偶然、本の発売と重なってはじまった現代のウクライナ侵攻。
あとがきで作者が動揺、苦悩されていたことがつらい。

「戦後、ソ連は連邦内にあった最激戦地の二カ国、ベラルーシとウクライナの二カ国を優遇した。国際連合でもこの二カ国は独自の議席を得ていた。半ば独立国家のような扱いは、ソ連の中で破格の待遇と言えた。あのリュドミラ・パヴリチェンコが戦ったセヴァストポリ要塞を擁し、帰属をめぐる諸々の軋轢があったクリミア半島も、一九五四年にロシアからウクライナへ自主的に割譲された。  ロシア、ウクライナの友情は永遠に続くのだろうか、とセラフィマは思った。」

同志少女よ、敵を撃て


ただ、この本で両国の関係性やパワーバランスをわずかながらも理解できたのはよかったです。

難しかったポイント

・実戦配備された武器の固有名詞がたくさん出てくるけど「???」となる
・文を読んでいるうちに「どっちの話だっけ?」と混乱することも
・ふんわりとしか意味を理解してない単語が出てくるので、何度か調べながら読み進めた

登場人物ごとの感想

セラフィマ

狙撃兵となったのが18歳くらい。
一人称で語られるところも多いけれど、人物像や性格がはっきりとせず。
狙撃兵として最初は怖がるものの、殺害人数(スコア)を誇り、バーサーカーモードになって冷酷度が増していく。一番人間味が感じられなかった。
後半の後半、ようやくセラフィマという人物が感じ取れる展開になった。

イリーナ

狙撃兵見習いのスカウトと育成担当。
絶望の淵にある少女を軍隊に引き入れる冷酷な仮面を被った女性。

イリーナとセラフィマの関係は、
ヴァルキリーとエインフェリアだなぁ、と思いました。(ヴァルキリープロファイル好き)
話の中で、一番人間味を感じた。美女っていうのがいいね。

シャルロッタ

実は一番すごいんじゃないか?
元貴族のお人形な見た目、狙撃の腕がすごい、メンタル安定で、自立心がある。
最初の登場こそアレだけど、それ以降ドジを踏むでもなく、取り乱すでもなく、最後まで生き残る。タフと可憐が同居してる!

アヤ

天才は噛ませ犬だった。
ハイになって引き際間違って初陣で退場。

ヤーナ

ママ。慈愛の人。でも狙撃の腕はたつ。
ずーーーーっとこの本の中の良心。
そりゃあPTSDで苦しみますよ。

オリガ

ウクライナのコサック出身。
その素性は……でも、実はセラフィマを守ってくれる。なぜそうなるのかは???
怖いようでいて、腕も考え方も安定していて信頼できた人。

ターニャ

口悪ヘビースモーカー看護師。
看護師の鏡。いい人。

第六二軍第一三師団の面々

スターリングラードを死守していた人たち。
元はただの一般人で、家庭があり、勉学に励み、あたたかい日常を送っていたことを感じさせる方々。
ギリギリの環境でギリギリの生活してた割にはきっちりしていて、ユーモラス。

サンドラ

こうゆう人たちも、大戦下ではたくさんいたのでしょう。
「普通の人」だけど、要所要所で小賢しかった。

ハトゥナ

いやなやつ!
あっけなかったね。 

リュドミラ・パヴリチェンコ

実在の人物。
狙撃兵の高みを見た後を知る人。
実際には、戦争後大学に戻り研究をするも、PTSDが原因のアルコール中毒で50代で死去。
ある意味崇拝される人でも、こうして心は蝕まれていた……という無常。

ミハイル

イケメン描写が多いけど、結局はそういうやつだった!!

コミカライズされてます。
1話は無料公開されてるので、気になった方はチェックして見てください!






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