「パートタイマーや契約社員の不満を募らせないために、事業主がやるべきこと」
社会保険労務士の山地です。
前回に引き続き、今回も中小企業の同一労働・同一賃金のお話です。
これまで一般的にはパートタイマーや契約社員など、非正規雇用の人には賞与や退職金が支払われないなど、待遇に差がある企業が多かったと思います。しかし、来月からは中小企業でも正社員と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差は禁止されます。
普通に考えればこの待遇差を是正すれば、人件費が高騰します。従業員のうち、非正規雇用者が占める割合が高い企業ほど、負担も大きくなるでしょう。
人が辞めていく理由はいろいろありますが、なかでも「自分の働きが正当に評価されない」ゆえに賃金に正しく反映されないから辞める、というのも大きな理由のひとつです。
潜在的に従業員に不満を募らせて放置すれば、それはいつか爆発するものです。
一般的には退職という選択をする人が多いと思いますが、現代は個人でも気軽にネットで情報発信できます。
正社員には基本給の4か月分の賞与を支給しているのに、非正規雇用者には一律3万円の寸志しか支給しない、というようなことがあればネットで炎上しないとも限りません。
パートタイム・有期雇用労働法では、パートタイマーや契約社員などから説明を求められた場合は、待遇が異なる理由を説明することが来月から事業主に義務付けられます。
端的に言えば「説明を求められたら、義務が生じる」ので、説明を求められなければ説明しなくてもよいことになります。
ここで大事なことは「説明を求められなくても、あえてこちらから説明すること」です。
待遇差を解消すると言ってもそう容易なことではありません。すぐに一気に解消できる企業ばかりではないでしょう。
実際にどのような待遇差があるのか、どのような方法で、どのくらいの期間をかけて解消していくのか、という計画や道筋を一緒に示すことが大事です。
コミュニケーションの質と量が足りない人ほど辞めていきます。
会社としてどのように対応するつもりなのか、説明しなければ従業員にはわかりません。
同一労働・同一賃金と言っても、なんの対応もしない会社なのだと見限られ、従業員に去っていかれることがないように、誠意をもってキチンと説明しましょう。
待遇差の説明をするときは、コレを利用するのが便利だと思います。
奈良労働局 雇用均等法関係様式集
パートタイム労働法(パートタイム・有期雇用労働法)関係
5. (待遇差の内容や理由)説明書モデル様式(第14条第2項の説明書の例)
待遇差の解消に積極的に取り組み、非正規雇用者のモチベーションをアップして業績向上につなげてほしいと思います。o(^-^)o