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労働条件明示のルールが変わります。 適切に対応しましょう!

令和5年3月30日厚生労働省より、労働条件明示についてののルールが、2024年4月より改定されることが発表されました。 現在の内容を踏まえた上で、2024年4月以降どのように変わるのかをしっかり把握して、スムーズに対応できるようにしましょう。

労働条件の明示義務とは

そもそも労働条件の明示とは何なんでしょうか?

労働条件の明示については労働基準法第15条及び労働基準法施行規則第5条に定められています。事業主が従業員を採用する際に、所定の項目を従業員に書面で明らかにしなければなりません。つまり、大事にな事はわかりやすく従業員に説明してね、ということです。正社員はもちろんですが、契約社員、パートさん及びアルバイトなど呼び名を問わず全ての従業員に明示する必要があります。このことを労働条件の明示義務と言っています。

明示する労働条件(2024年3月まで)

まず、現時点(2024年3月まで)で、従業員に明示しなければならない労働条件について説明します。

必ず明示しないといけないこと

  1. 労働契約の期間に関する事項

  2. 期間の定めがある契約を更新する場合の基準

  3. 就業の場所及び従業すべき業務に関する事項

  4. 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇などに関する事項

  5. 賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期に関する事項

  6. 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

  7. 昇給に関する事項

事業主は従業員に対して、下記の項目を明示しなければなりません。

上記のうち、「昇給に関する事項」以外は、必ず書面で従業員に明示することが求められています。

定めをした場合には明示しないといけない労働条件

事業主は以下の項目につき定めをした場合には、従業員に明示しなければなりません。

  • 退職金に関する事項

  • 賞与などに関する事項

  • 従業員に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項

  • 安全及び衛生に関する事項

  • 職業訓練に関する事項

  • 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項

  • 表彰及び制裁に関する事項

  • 休職に関する事項


労働条件明示の方法

1.~6.については、従業員にとって非常に重要な情報となるため、必ず書面で従業員に交付しないといけません。

ただし、従業員が希望した場合に限り、FAX、Eメール及びLINE等のSNSにて交付することが可能です。ただし、Eメール及びLINE等の場合は、出力して書面を作成できるものに限られます。

厚生労働省:「平成31年4月から、労働条件の明示がFAX・メール・SNS等でもできるようになります」

逆に言いますと、上記以外の項目にいては、法律上書面での交付が求められているわけではありません。しかし事業主と従業員の双方が、よく理解して業務を進めていくためにも、事後のトラブルを回避するためにも、できる限り書面ですべての労働条件を明示するようにしましょう。

2024年4月からの労働条件明示義務変更の内容

厚生労働省から発表されましました、2024年4月以降に変更となる労働条件明示についての内容を押さえていきましょう。

全ての従業員が対象となる変更内容

まず、正社員、パート、アルバイト等すべての従業員に明示が必要となる内容についてです。

■就業場所・業務内容の変更の範囲の明示

これまでも明示義務がありました、「雇入れ直後」の就業場所と業務内容に加えまして、「今後配置転換等で変わり得る」就業場所と業務内容(変更の範囲)についても明示が必要となります。

明示例: 就業の場所:雇入れ直後(東京本社) 変更の範囲(関東地区の本社および支店)

明示例: 業務の内容:雇入れ直後(営業)   変更の範囲(営業、総務、経理、商品開発)


全ての労働契約の契約締結時及び有期労働契約の更新のタイミングごとに明示が必要です。例えば、1年の有期契約の場合は、一番最初の契約時に変更の範囲の明示が必要なのはもちろんですが、1年後2年後に契約を更新する際にも、改めて明示する必要があります。

有期契約労働者が対象となる変更内容

■有期労働契約 更新上限の明示

有期契約労働者に対して、有期労働契約の通算契約期間または更新回数の上限の有無と、上限がある場合はその内容の明示が必要となります。

明示例:更新上限の有無(更新有り 通算契約期間5年まで)

また最初の契約の際には、契約更新の上限を設定していなかったのに新たに上限を設ける場合、または当初設定していた更新上限を、契約締結後に短縮する場合は、更新上限を新設・短縮する前に有期契約労働者に説明することが義務となります。

■無期転換申込機会の明示

無期転換申込権が発生する更新のタイミングで、無期転換を申込できる旨の明示が必要となります。つまり、初めて無期転換が発生する契約更新の際はもちろん、有期労働契約が満了した後も引き続き有期労働契約を更新する場合(無期転換権を行使しなかった場合)には、更新のたびに無期転換の申込みできる旨の明示が必要です。

明示例:本契約期間中に会社に対して期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の締結の申込みをしたときは、本契約期間の末日の翌日( 令和〇年〇月〇日)から、無期労働契約での雇用に転換することができる。

■無期転換後の労働条件の明示

無期転換した場合の労働条件につき、無期転換申込権が発生するタイミングごとに明示することが必要となります。

「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換後の賃金等の労働条件を決定するにあたって、他の通常の労働者(正社員や無期雇用フルタイム労働者等)とのバランスを考慮した事項(例えば、業務の内容、責任の程度、異動の有無・範囲など)について、有期契約労働者に説明するよう努めなければならないこととなります。こちらについては事業主の義務ではありません。しかし、無期転換する従業員が納得して気持ちよく仕事ができるよう、しっかり説明することが望ましいと言えます。

厚生労働省から出されているリーフレットも併せてご確認ください。

厚生労働省:「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります


また、ルール変更後の労働条件通知書の記入方法については、こちらもご参照ください。

厚生労働省:「モデル労働条件通知書」

無期転換ルールとは

無期転換ルールの内容

そもそも無期転換ルールとはどんなものなのでしょうか?

有期労働契約が5年を超えて更新された場合は、有期契約労働者(契約社員やアルバイトなどの名称を問わず、雇用期間が定められた従業員)の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるというものです。

出典:厚生労働省「無期転換ルールハンドブック」P1

労働契約法第18条により、条件を満たした有期契約労働者が期間の定めのない労働契約の締結の申込みをした場合、会社はその申込みを承諾したものとみなされます。つまり、会社は断ることができません。

無期転換することのメリット

有期契約労働者が無期転換することは、事業主・従業員双方にメリット出るケースも少なからずあると考えられます。

■事業主のメリット

会社の実務や事情等に精通する無期労働契約の社員を、比較的容易に獲得することができます。

有期労働契約から無期労働契約に転換することで、長期的な視点に立って従業員育成を実施することが可能になります。

■従業員のメリット

雇用の安定性に欠ける有期労働契約から無期労働契約に転換することで、安定的かつ意欲的に働くことができます。

長期的なキャリア形成を図ることが可能となります。


その他詳細については、厚生労働省「無期転換ルール ハンドブック」をご参照ください。

厚生労働省:「無期転換ルール ハンドブック」

まとめ

ご説明してきました通り、2024年4月から労働条件の明示についてのルールが変わります。

これは、就業内容や業務内容の変更によるトラブルの増加や、無期転換権がまだまだうまく活用されていないといった背景があるかと思います。労使の認識の相違をできる限りなくし、従業員の定着や会社の生産性向上につなげていきましょう。


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