労使協定の作成・締結はお済みですか⁈(改正労働者派遣法)
いよいよ4月から、大企業と派遣事業主には「同一労働同一賃金」がはじまります。中小企業は1年の猶予があり、2021年4月からとなります。
「同一労働同一賃金」というと誤解を招きやすいところですが、「均等待遇・均衡待遇」ということです。
このたび施行される「同一労働同一賃金」はヨーロッパなどのような「同一価値労働同一賃金」とは異なり、「同一企業内」において「正規・非正規」の「不合理な格差」を解消しようとするものです。
この「同一労働同一賃金」の改正の一つに「改正労働者派遣法」があり、派遣法の30条の3に不合理な待遇の禁止等が盛り込まれました。この規定により、労働者派遣事業を行う事業主は、中小の規模は関係なく、この4月より対応が求められます。
派遣先均等・均衡方式or労使協定方式
派遣元事業主は、【派遣先均等・均衡方式】か【労使協定方式】のいずれかにより、派遣先の労働者と派遣労働者もしくは、派遣元の労働者と国が通知する賃金額等以上の賃金額としなければなりません。
【派遣先均等・均衡方式】:派遣先の労働者の賃金額等と比較
【労使協定方式】派遣者との労働者+国が通知する賃金額等と比較
また派遣先においては、派遣元に対して、派遣労働者が従事する業務ごとに比較対象労働者の賃金その他の待遇に関する情報その他厚生労働省令で定める情報を提供するこ
とが義務づけられました(改正派遣法26条)。
労使協定方式の内容は?
【労使協定の内容】
①対象となる派遣労働者の範囲
②賃金の構成
③賃金の決定方法
④賃金テーブル等
⑤時間外労働手当等
⑥通勤手当
⑦一般退職金
⑧退職金
⑨賃金の決定に当たっての評価
⑩賃金以外の待遇
⑪教育訓練
⑫その他
⑬有効期間
これらのことについて、労使協定を作成し締結しなければなりません。
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【通勤手当の支払が必要となる】
通勤手当を支給していない会社であっても、2020年4月以降は次のいずれかの方法により通勤手当を支給しなければなりません。
①実費支給により、「同等以上」を確保する
②一般の労働者の通勤手当に相当する額と「同等以上」を確保する(一般労働者の1時間当たりの通勤手当に相当する額は、時給換算で72円)
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【派遣労働者へも退職金の支給が必要となる!】
退職金については、現在、退職金制度がない会社もあると思います。しかし、2020年4月以降は、次のいずれかの方法を労使協定で定め、派遣労働者にも退職金を支給しなければなりません。
【退職金の支払方法】
①勤続年数などで算出する一般的な退職金制度として支給
②時給に上乗せする「退職金前払い」(6%加算)
③中小企業退職金共済制度への加入
退職金の支払方法はどちらを選択する⁈
この①と②を比較すると、①の方が支出は抑えられる可能性があります。
②の時給に6%を上乗せする方式となると、入社からすでに6%の前払い退職金を支払うこととなり、また残業代の基礎となるため、残業が見込まれる場合には、支出額が増えてきます。さらに、社会保険料まで加えてくると、かなりの額となってきます。
ただし、求人で新規募集する際には、時間当たりの金額が高く表示できるため、求人票等の見栄えはいいというメリットもありますので、シュミレーションを行ったうえで、自社の考え方に沿った方法を採用しましょう。
労使協定の届け出は必要?
労使協定の届出は必要ありません。ただし労働者派遣事業報告書に写しを添付する事になります。
また労使協定はを周知することが必要となります。
①書面の交付の方法
②次のいずれかによることを労働者が希望した場合における当該方法
・ファクシミリを利用してする送信の方法
・電子メール等の送信方法
③電子計算機に備えられたファイル、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ労働者が当該記録の内容を常時確認できる方法
④常時派遣元事業主の各事業所の見やすい場所に掲示し、又は備え付ける方法
いつまでに作成・締結しておくの?
労使協定方式での対応の場合、2020年3月までに以下の対応をすべて終わらせる必要があります。
☆労働者代表を選んで労使協定を締結し、その内容を周知すること
☆2020年4月時点で契約しているすべての派遣先から派遣先の従業員についての待遇情報(福利厚生施設の利用と教育訓練に関する情報)を受領すること
☆2020年4月時点で契約しているすべての派遣先について改正法に対応した派遣契約書を作成し直すか、変更契約書を作成すること
☆2020年4月以前に契約した派遣契約であっても、2020年4月1日をまたぐものについては、2020年3月までに上記の対応を終わらせる必要がありますので注意が必要です。
すでに派遣先から均等・均衡方式なのか、労使協定方式なのか、問い合わせを受けている派遣元事業主の方も多いと思います。
労使協定の作成・締結のみならず、派遣先への通知と新しい項目が追加された派遣契約書を作成し、派遣先と契約を締結しておく必要があります。さらに派遣元管理台帳等も項目が追加されています。
対応は待ったなしですから、まだお済みでない事業主の方、労使協定の作成の仕方が分からないといった事業主の方は、お早目にご相談ください。
社会保険労務士法人スペース 電話(0823)25-5015(平日9時~18時)