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社労士的就業規則の作り方 31
鹿児島で社労士をしています原田です。
就業規則の依頼は非常に多い中で、企業で作成したり、別の誰かが作成した就業規則を変更することも多いです。その時の時代背景や企業風土によっても異なりますし、以前は有効と思われたものが、後の裁判例等によって絶対に入れてはいけない条項になってしまったものが入っている規則もあります。
定期的に見直して、時代にあったものを作らないといけません。
ここでは厚労省モデルを使って、社労士が就業規則に対してどうアプローチするかを案内しています。
第10章 安全衛生及び災害補償 第61条~
ストレスチェック
(ストレスチェック)
第61条 労働者に対しては、毎年1回、定期に、医師、保健師等による心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を行う。
2 前項のストレスチェックの結果、ストレスが高く、面接指導が必要であると医師、保健師等が認めた労働者に対し、その者の申出により医師による面接指導を行う。
3 前項の面接指導の結果必要と認めるときは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等、必要な措置を命ずることがある。
50人以上の企業に実施を義務付けられているストレスチェックです。次の国会で「50人以上」を撤廃して全企業が義務対象になる予定なので、条項の追加が必要になる企業もあると思われます。
第1項について、義務付けられている対象は定期健康診断と同じで、常勤者の4分の3以上勤務する方なので、短時間アルバイト等を除外する場合は、定義で「労働者」や「従業員」を全従業員と定めている場合は、変更する必要があります。
実施者も医師や保健師等で、病院等で実施する場合は、人事権が無い方が行う必要があります。つまり医師1名で、保健師のいない小規模クリニックでは、外部委託の必要が出てくることになります。
実施の義務付けは事業主であり、労働者でないことにも注意です。
第2項、第3項では、高ストレスの診断が出た方に対する面接指導の実施と、その結果に対する企業の対応です。これも第60条の長時間労働者に対する面接指導と同じです。
長時間労働の場合は、長時間労働によって異常の所見が発生した可能性が高いと考えられますが、高ストレスは長時間労働・パワハラ・事業場の気温や時間帯等の職場環境だけでなく、個人的な金銭トラブルや家庭内不和等の個人的トラブルでも発生し、家庭内環境の大きなストレスは、職場以上に本人を追い詰めることもあるため、企業には慎重な対応が必要になる場合もあります。
情報の取り扱い
(労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱い)
第62条 事業者は労働者の心身の状態に関する情報を適正に取り扱う。
心身なので、心と身体に関する情報。企業が把握できる代表例は健康診断とストレスチェックでしょう。当然に重大な個人情報なので、漏洩防止は当然ですが、配置変更や労働時間短縮が必要な場合は、その部署の方への理解が必要になる場合もありますし、時には原因となった相手がいる場合には、懲戒を行う可能性もあります。
本人の意思もあるので、ケースバイケースで対応する必要があり、一律に取り扱う方法は正しいと言えないでしょう。そのため、「厳格な取り扱い」より「適正な取り扱い」がふさわしい条文だと感じます。
モデルのように別個にしないで、健康診断やストレスチェックや面談の条文に入れ込む方法でも可能でしょう。
安全衛生教育
(安全衛生教育)
第63条 労働者に対し、雇入れの際及び配置換え等により作業内容を変更した場合、その従事する業務に必要な安全及び衛生に関する教育を行う。
2 労働者は、安全衛生教育を受けた事項を遵守しなければならない。
こちらは従来からある配置転換等の教育義務です。特に作業現場で、重量物・高所作業・火器の使用・自動機械の使用・ヒヤリハット事案等の懸念材料をきちんと精査しておくことで、労働災害を極力防止する必要性もあります。
第1項は義務です。雇入れ時だけでなく、配置換えにも配慮しましょう。わかっているようでわかってないものです。
第2項は労働者に対する義務付けです。第1項で事業者に義務付けるだけでなく、労働者も教育を受けた部分をきちんと守る必要があります。
災害補償
(災害補償)
第64条 労働者が業務上の事由又は通勤により負傷し、疾病にかかり、又は死亡した場合は、労基法及び労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)に定めるところにより災害補償を行う。
この前提は、労働基準法から来ています。
(療養補償)
第七十五条 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
② 前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。
ここでは挙げませんが、療養の費用(=病院代等)だけでなく、休業・障害・死亡等に関しても、企業の賠償を定める法令が、労働基準法には定められているので、労働災害は企業にとって大きなリスクを抱えていることになります。
事業場での意図しない事故等で大きな被害が出ると、企業は即破綻になってしまうので、その対策として労災保険の加入も義務付けているのです。
条文としては、上記と同じか類似した内容で定める場合と、労基法の「企業の費用負担」を明示した上で、労災適用した場合には企業負担を免除するような書き方をする場合があります。
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