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社労士的就業規則の作り方 12
鹿児島で社労士をしています原田です。
就業規則のことばかり考えて、眠れぬ「昼」を過ごしている方の一部に好評な就業規則の作り方です。
ここでは厚労省モデルを使って、社労士が就業規則に対してどうアプローチするかを案内しています。
第4章 労働時間、休憩及び休日 第24条
有給の時間単位付与について
(年次有給休暇の時間単位での付与 )
第24条 労働者代表との書面による協定に基づき、前条の年次有給休暇の日数のう ち、1年について5日の範囲で次により時間単位の年次有給休暇(以下「時間単位年休」という。)を付与する。
(1)時間単位年休付与の対象者は、すべての労働者とする。
(2)時間単位年休を取得する場合の、1日の年次有給休暇に相当する時間数は、以下のとおりとする。
① 所定労働時間が5 時間を超え6 時間以下の者…6時間
② 所定労働時間が6 時間を超え7 時間以下の者…7時間
③ 所定労働時間が7 時間を超え8 時間以下の者…8時間
(3)時間単位年休は1時間単位で付与する。
(4)本条の時間単位年休に支払われる賃金額は、所定労働時間労働した場合に支払 われる通常の賃金の1時間当たりの額に、取得した時間単位年休の時間数を乗じた額とする。
(5)上記以外の事項については、前条の年次有給休暇と同様とする。
年次有給休暇のうち、時間単位で付与する場合の規定です。
時間単位付与自体が、使用者の義務でも労働者の権利でもありませんので、双方が合意して協定を締結した場合に限定される規定です。
そのため、最初に労使協定に基づくものであることを明記しています。
法律上も5日に限定していることに留意する必要がありますし、1時間単位でなければ取得できません。また、5日の付与義務にも算定されません。
これらの縛りが無い場合に、どうなるかというと、
毎日自動的に10分取得させたことにして、年間所定労働日数が240日だとすると、2400分がいつのまにか消化されます。
2400分=40時間なので、1日8時間の所定労働時間の場合は、5日間が知らない間に消えるというインチキができるわけです。
これが1時間取得だと、所定労働時間を8時間→7時間にする時短によって、この部分を有給に充てると、240時間を有給に取ったことにすることができます。所定労働時間が8時間であれば、
240時間=24日なので、時短ですべて有給を消せるという悪意ある運用が可能になります。しれっと休憩時間が1時間増えてたりして、終業時間が1時間延長と合わせると、実態が何も変わらないまま、有給を全て消せる悪用ができます。
恐らくこれに事前に気付いたので、5日上限、1時間単位以下不可、5日付与義務に入れないという縛りをかけた上で、労使協定で定めるという用心までしてあるわけです。
この規定を入れる場合は、(2)に要注意です。
モデルの解説に書いている、所定の端数分は切り上げる考え方が採用されるので、短時間就労者がいる場合は、モデルのように記載するか、端数を切り上げるように記載している方が、違法な運用をさせないために望ましいでしょう。
産前産後休業について
(産前産後の休業)
第25条 6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産予定の女性労働者から請求があったときは、休業させる。
2 産後8週間を経過していない女性労働者は、就業させない。
3 前項の規定にかかわらず、産後6週間を経過した女性労働者から請求があった場合は、その者について医師が支障ないと認めた業務に就かせることがある。
労基法第65条の産前産後休業に関わる規定です。
この規定は、労基法上の最低基準のままなので、これ以上踏み込む話はありません。
産前産後休業や第27条の育児時間は、育児介護休業法ではなく、労働基準法の話なので、育児介護休業規定ではなく就業規則に記載しています。
個人的にもその方がいいと思います。
ここに挙げている部分は、社労士目線で作る時の話であり、モデル規則の解説に書いてあることには、あまり触れていません。併せて参照して理解することが必要です。
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