社労士的就業規則の作り方 22
鹿児島で社労士をしています原田です。
就業規則の作り方を一日千秋の思いで興味津々に待ち望んで、喜色満面に狂喜乱舞する皆様は、前程万里の将来が前途洋洋でしょう。
(ここは冗談で書いてますので真に受けないでください)
ここでは厚労省モデルを使って、社労士が就業規則に対してどうアプローチするかを案内しています。
第6章 賃金 第47条~
賃金の支払と控除
いきなり本文にいきます。
第1項は労働基準法の「賃金支払いの5原則」の通りです。
第2項については、令和4年11月28日に出された通達「基発1128第4号」によるもので、昭和50年基発112号を何度も修正して現在に至るものが根拠になっています。ここにこだわると、これだけで終わってしまうのでこれ以上しません。
預貯金と証券総合口座を書かないで、「金融機関の口座」にするとスッキリしますが、想定していないような金融機関が特別な口座を設ける可能性を考慮すれば、しっかり書いた方がいいかもしれません。
デジタル給与払い(電子マネー支払)も2023年に許可されましたが、誰が希望するのか意味不明です。ただし、グローバル企業で海外の口座を指定されたら送金手数料が異様に高いので、電子マネーにしたくなる気持ちは理解できます。
労働者の同意を取るとか、モデルに書いてある解説もきちんと確認しておきましょう。
第3項は控除です。①~③は法定で控除可能ですが、問題になるのは④の労使協定パターンです。
モデルの解説でも多数列挙されていますが、昼食代、自損事故の自己負担、過払い賃金の相殺、賃金の差押え等もあります。
労使協定を結んでいれば、何でも無制限に控除できるわけではないので、実際に控除する場合は、ケースバイケースで対応する必要があります。
労使協定で記載されている引くものだけを就業規則に書くことが原則ですが、過払い賃金の控除ぐらいは書いておきたい。
非常時払い
就業規則の中で、労働者が見過ごしがちで、使用者が見落としがちで、社労士が説明を怠りがちな非常時払いです。
労基法上の義務規定ですが、「いざというとき」しか発動しませんし、「既往の労働分」しか支払義務がないので、最大で1か月分ですし、そのほとんどは多額にはなりえません。
支払い義務があるのは、示す通りの限定列挙なので、理由が該当しない限り応じる必要はありません。
実際①~③での申し込みは滅多にありません。④の退職時は稀にあります。給与計算がかなり面倒になるので、お断りしたいのですが、払うのが法律です。
昇給
昇給も必須記載事項なので必ず書きますが、昇給の義務は無いので、内容はある程度自由になります。
昇給は奥深いテーマなので、多くの書籍が出ています。賃金テーブル、定時昇給、ベースアップ、評価制度を基本として、様々な雇用管理制度にも対応させる部分があります。特に近年は介護福祉業では必須ですし、助成金対応でも必要になったりします。
「昇給」と「昇格」は違うので、その部分も押さえておきましょう。
第1項では、昇給月を明示しています。「基準該当時に随時」という書き方で逃げたりすることもあります。また、「〇月」だけで日付を明示しない場合もあります。
場合によっては、その昇給月を移動できる文面を追加する場合もあります。
昇給は無いなら、無いと書きます。書いちゃうと前途真っ暗ですけど。
また、「ただし」以降の部分は必ず入れておきます。地震・火災等を含めて、会社の業績と関係なく何が起こるか分かりません。
第2項で、臨時に昇給する話を入れるのですが、「そんなことはあり得ない」というなら書きません。普通は入れてあります。
第3項の昇給額は、特に定めが無いなら文面通りですが、賃金テーブルがあって、定期昇給するなら号棒の引き上げの話をしますし、評価制度連動ならその話をします。
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