vol.033 雨の日
八重山の南の方を通過していった台風の影響から雨の日が続いている。
外撮影などの予定が入っていなかったので、心置きなく「雨の日は良いな」と雨音をBGMに室内作業に没頭している。ここ数日は、ネガフィルムのスキャンデータからプリントを作るためのデータを作成する作業をしている。大判のプリントになる為1つ1つ埃を取り除く作業に永遠の時間を費やしている。気が遠くなるような作業ではあるけれど外が薄っすらと暗い雨模様だったことで心が落ち着き作業がはかどった。
昨年末に友人の紹介で、1973年頃に琉球大学の上村幸雄先生により石垣島の登野城で録音された「雨乞いのうた」につける映像を撮影した。
初めて「雨乞いのうた」を聴いたときはドキリとした。そこには切実な願いのような祈りが音に込められ広がっていた。
雨の中カメラを片手に歩きまわり雨音に耳を傾けた。長靴が砂を踏みつけるジャリという音と、辺りの草木や私のさす傘を打つ雨音が「雨乞いのうた」の掴みようのない祈りのメロディーに重なり合い身体を巡った。
干ばつの続いた時期は、さぞかし照りつく太陽が恨めしかったのだろうな、と想像してみた。所詮想像することしかできない私には「雨乞いのうた」に流れる祈りを理解するのは難しい。難しいながらにも色々と思考しながら雨音に自分を重ね撮影した。
現代人の私は、撮影の日には晴れて、ちょっと疲れた日や家作業の日には雨が降って欲しいと都合よく願う。天の神さまがいるのなら、きっとそんな私を鼻で笑っているのだろう。
さて、明日は撮影日、天気予報は雨。
【水野暁子 プロフィール】
写真家。竹富島暮らし。千葉県で生まれ、東京の郊外で育ち、13歳の時にアメリカへ家族で渡米。School of Visual Arts (N.Y.) を卒業後フリーランスの写真家として活動をスタート。1999年に祖父の出身地沖縄を訪問。亜熱帯の自然とそこに暮らす人々に魅せられてその年の冬、ニューヨークから竹富島に移住。現在子育てをしながら撮影活動中。八重山のローカル誌「月刊やいま」にて島の人々を撮影したポートレートシリーズ「南のひと」を連載中。