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【手記】貴族世界に生かされた僕

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父親から両親の事は「お父様」「お母様」兄弟にすら敬語や丁寧語で話す事を強いられた。それなりに裕福な家庭であった。 車係、料理人、庭師、世話係、教育係など住み込みで多くの「他人」…
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#家族

天使の罪 -小児性愛者とアリス-(閲覧注意)

 ※この記事では、小児性愛者の被害者である僕の体験談を掲載しております。苦手な方は閲覧をお控えください。 はじめましての方には自己紹介を…。 ​ 若き紳士   恐らくもう時効であろう事を書き遺そうと思う。  御父様主催のパーティの時、実家に客を迎えての会食に、よく招かれる客の中に御父様にとって一番有益な人物が居た。若くして成功した実業家だ。  御父様より若く細身のスーツを纏った上品な風貌。チェスをすれば巧く負けてくれる優しい男だ。御父様は「一番失

自己紹介

 はじめまして。四条 Q.A 雅月(マサキ)と言います。職業は何でも無く、刺激を求めて何でもやる人。退屈な本名。…どうぞ、もう名前は忘れてください。  僕と家族   ミドルネームがありますが、たまたま産まれてしまったので英国生まれの日本人です。三兄弟の長男です。  何やら歴史のある旧くマナーや生活の全てに厳しい家の、期待の長男でした。お父様は、お母様に家事一切をしないように家事係に任せていました。親の"アクセサリー"として相応しい、常に美しく上品に生きる事を子供達は強い

お父様に支配された、僕の狭い世界

 お父様からの助言(躾)は絶対的に正しい、それが世間の常識で、誰もが同じように家庭で学ぶべき事である。…それが精神的虐待なのかは今でも疑問だ。兄弟達は皆「お父様」「お母様」と呼ぶ、家族の誰に対しても丁寧語、敬語で話す。 幼少期の世界  僕には特別に秀でた才能がなかった。興味の全く向かない習い事をたくさんやらされた。スケジュールの殆どはレッスンや宿題で埋まっていた。  興味をもった事、初めて「楽しそう」と思えた事は乗馬だった。馬に乗って高い位置から初めて"お父様"の頭頂部を

「ママ」と呼ばれたかった「お母様」

 僕は、幼少期から成人した今でもずっと両親を「お父様」「お母様」と呼ぶように、そして必ず敬語で話すように教育された。  マナーは全て雇われた教育係に習った。周りが流行りのヒーローやヒロインアニメを観る中、習い事の詰め込みで、そんな自由もなかった。当然、幼稚園や小学校ではクラスメイトと流行りの話題には馴染めず浮いていた。  両性具有でありながら、家柄の為に僕は「長男」となった。幼い頃に性別を合わせる手術だけは、お母様が必死にお父様を説得し止めさせたのだと大人になってから聞い

縁側の香り、桜色のテディベア

 春になると思い出す事がある。曾おばあ様の葬送、僕がとても幼い頃の話だ。  葬列で柩を抱えた人達の後ろについて幼い僕は早足で歩いてゆく。「あの箱の中で曾おばあ様が寝ている」それしか分からなかった。  周りの人達の多くは外国人で、彼らの会話も葬式も当時の自分にはさっぱり分からなかった。きらきらとしたステンドグラスを眺めていた。  敬虔なカトリック教徒であった彼女は、故郷英国で永い静寂を望んだ。緑が特別に美しい4月だった。確か墓地の近くの桜も咲いていた。僕は兵隊を初めて見た