天使の罪 -小児性愛者とアリス-(閲覧注意)
※この記事では、小児性愛者の被害者である僕の体験談を掲載しております。苦手な方は閲覧をお控えください。
はじめましての方には自己紹介を…。
若き紳士
恐らくもう時効であろう事を書き遺そうと思う。
御父様主催のパーティの時、実家に客を迎えての会食に、よく招かれる客の中に御父様にとって一番有益な人物が居た。若くして成功した実業家だ。
御父様より若く細身のスーツを纏った上品な風貌。チェスをすれば巧く負けてくれる優しい男だ。御父様は「一番失礼のないように」と家族にも家事係達にも皆に言った。
彼は僕を親しみを込めて「アリス君」と呼んだ。これは僕の名前の一部で、勿論本名な訳だが家族以外から呼ばれる事は滅多にない。
…そんな間柄を視ていた御父様は、彼のテーブルゲームの席へ僕を参加させ、彼の機嫌取りにした。お情けで勝つゲームばかりだったが、とても褒めてくれるので悪い気はしなかった。
憧れの「おとうさん」
ある日のパーティの終わり際、彼は御父様に「私はまだ迎えが来るまで時間があってね。せっかくだからアリス…雅月君の部屋で一緒に遊んでよいかな?」と御父様に許可を取って、僕の部屋に来た。
彼には、学び途中の教本や習い事など、全体的に僕に求められている学習の難易度への愚痴などを言えた相手だったように思う。好きなものを話したりもした。
「彼に御父様になって欲しかったんだ」と幼心にそう感じた。頭を優しく撫で抱き締めてくれる温かい人だった。
以来、彼は時間を見つけては遊びに来てくれた。御父様は彼が僕を気に入ったお陰で、僕と遊ぶ前にはよく仕事の話をして様々な、そして多くの利益を得ていた。
今にして思えば、御父様の役にも立ったのだなとつい錯覚してしまう。…そして幼少期の僕もまた、理想的な「おとうさん」を体験していた。そう信じていた。
紳士の歪み
彼は、小児性愛者で小児性犯罪者だった。
【小児性愛者(ペドフィリア)】
幼児・小児を対象とした性愛・性的嗜好。本来はペドフィリアは「性癖」ではなく、精神疾患と位置付けられ、いわゆる性癖である「ロリータコンプレックス(ロリコン)」とは異なる。
【小児性犯罪者(チャイルド・マレスター)】
子供にみだらなことをする人間のことを指す用語。日本語では児童性虐待者または小児性犯罪者などと訳される。
※ペドフィリアが医学的用語として多く用いられるのに対し、こちらは犯罪分析によく用いられる用語である
(Wikipediaより)
何度か訪れる間に少しずつ僕の服の下に温かで骨張った手が入り、肌に触れることが多くなった。家事係にも身体は拭いて貰っていたから、嫌な気持ちにはならなかった。
小さな僕をベッドに上がらせ「アリス君、服を脱いで、静かに私に抱きついていてね」と言われ、僕は何の疑問も持たず従った。
舐められたりした事はあったが、それ以上の身体的な被害は受けなかった。…ただ彼が満たされるまで僕は全裸だった。
彼もシャツ一枚になるまで脱ぎ、はだけた彼のシャツ越しでも人肌は温かく、そして熱く、彼の息苦しそうな時間を、僕は黙って抱きついていた。後々判ったのだが、シャツを脱がない理由はタトゥーが入っていたからだという。
照明を少し落としカーテンを閉じたベッドの上で、「アリス君は天使みたいだよ」「とても美しい」と何度も言われた。
幼くとも身体的に男性器も女性器も持つ僕の身体を「禁断の果実」にでも見えたのだろうか。舌の熱が、胸や腹や下半身を這いまわった。小さな子供の性器を、アイス棒の様に口に含み吸って頭を前後によく動かしていたのを覚えている。
毎回30分も経っていなかったと思う。片手は自分を慰めていた。まるで酸欠や発作のような荒い息使いに「大丈夫ですか?」と訊くと「優しいね、大丈夫だよ」と微笑んで頭を撫でてくれた。
秘密こそ甘美な蜜の味
御父様から貰えなかった温もりを子供ながら心も身体も、性的なものではなく毎回くすぐったくて好きだった。彼を「良い人」と思っていた。僕は出来損ないではなく、天使なのだと一瞬でも思わせてくれた。
そして「ご褒美」に沢山の紙袋、数万はするだろう高価な菓子をいくつも貰った。外国の本も貰った、読めるようになるのは数年先の話になる。
彼の"対象"から僕が外れた小学生の半ば頃まで「熱」と「ご褒美」が続いた。…それ以降は普通に話すだけになった。
秘密を抱えたまま。
理解しきれていない被害者
大人になるにつれて理解した、彼が何をしていたか、自分の無知は幼少期には仕方ないが、本来なら両親に助けを求めるべき被害者であったと。
…しかし、彼を責める気はない。一瞬でも歪だとしても、僕が見つけた優しい「おとうさん」の理想だったのだから。小児性愛者から受けた性的被害者であったと、自分の中でも半分呑み込めていない部分がある。
当時の光景は今でも鮮明に思い出せる。…払い退けて逃げていれば、抵抗していれば、と。今更の話だが、どうなっていたのかと思う。今は大嫌いな御父様の苦悩する姿でも拝めただろうか。
パートナーである"櫻"はもしかしたら当時の僕のような状態なのかもしれない。櫻の理想の中の「何か」が僕なのかもしれない、と。
御父様は僕を長男だと言い、周囲を騙していた。しかし彼だけは当時、身内と病院以外で僕がDSD(両性具有者)と知っていた人物であった。
これは御父様も御母様も、誰も知らない話。
嗚呼、願わくば僕が先に死んだ時
御父様にだけ
この"悪夢"が明かされますように。
…今日のお話は ここまで。
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