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「採用広報」ここ数年の変遷とナイルの取り組みをまとめてみた
こんにちは、ナイルのワタナベ(@spw63)です。「採用 Advent Calendar 2021」の7日目担当です。
先日登壇した、FUZE 2021「候補者視点で考える、“本質志向”の採用広報」のなかで使ったスライドが視聴者の方に反響良かったので、この記事ではそのスライドをベースに「ここ数年の採用広報の変遷」と、ナイルの採用広報の取り組みについてお話します。
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(引用:候補者視点で考える“本質志向”の採用広報とは|FUZE2021【Event Report】)
FUZE2021イベントレポートはこちら
当日の様子(Twitter)はこちら
前置き:誰に、何を伝えたいか
想定読者
採用広報に関わっている人事や広報の皆さん
伝えたいメッセージ
採用広報の取り組み方は会社によって違うし、フェーズが変われば取り組み方も変わる。トレンドや他社事例に踊らされずに、自社にマッチした取り組みを考え続けることが大事である、ということ。
話す内容
・時期ごとの採用広報の特徴
・時期ごとのナイルの取り組み紹介
期待しないでほしいこと・話さないこと
ぜったいうまくいく成功パターンの解説
留意点
・「採用広報」がバズワード化した2018年前後から直近までの変遷を便宜的に時代区分して説明しております。それ以前にも採用広報やっている会社はあったよねといった話は今回はおいておきます。
・記事中で特定の社名を挙げていますが、その企業の取り組みを分析・考察するものではなく、またその当時の一例として紹介しているので、現在では変わっている可能性があります。
事例企業の方へ
オープンな情報をもとに特徴的な例として挙げさせて頂きましたが、説明が間違っている、意図しない取り上げ方なので事例として使わないでほしい、といったことがあれば大変お手数ですが、ワタナベまでご連絡いただけますと幸いですm(_ _)m
前置きが長くなったので本題に入ります。
「採用広報」黎明期(-2018年)
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この時期の特徴
「プレイヤーがおらず、コンテンツ力で拡散できた時代」
まだ採用広報という概念が一般浸透しておらず、競合がほとんどいないため、コンテンツを作れば拡散されていて目立てていた時代。
コンテンツ
ベーシックな記事コンテンツがメイン。Wantedly内のフィードやSNSシェアによるコンテンツディストリビューションが効いていました。(当時はTwitterよりもFacebookでのシェアがメインだったように思います。)
代表的な事例
メルカリ社『メルカン』
採用オウンドメディアの草分け的存在。2016年5年に創刊されていますが、この当時はまだ採用文脈でオウンドメディアを運営している会社はほとんどなく、SEOやコンテンツマーケティング文脈でのオウンドメディア活用が盛り上がっていた時代です。
私は、当時Webコンサルタントとしてオウンドメディア支援に携わっていたので、「え!採用目的でオウンドメディアやるの!?」と衝撃をうけたのを覚えています。
メドレー社『私がメドレーに入社した理由』
当時、Wantedlyのストーリー記事は、部活動や社内イベントなど日常を切り取ったコンテンツが多かった記憶がありますが、そのなかでもメドレーさんは実直に求職者の方が知りたい情報をテーマに記事を作り続けていた印象です。
”総勢50名の社員の入社理由ブログを掲載しており、それ以外のコンテンツも含めて現在までに総計120万近いPVを獲得しています。 ”
ー FUZE2021イベントレポートからの引用
「私がメドレーに入社した理由」以外にも「週刊メドレー」「土曜日に読むメドレー」など7つのブログを運営していたそうです。1社の採用ブログで、連載7つ持っていて、120万PV集めるというのは、オウンドメディアを運営している方からしたら驚異ですね(笑)。
「採用広報」拡大期(2018年-2019年)
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この時期の特徴
「採用広報」「採用マーケティング」という言葉がバズった時期。
独自ドメインの採用オウンドメディア、noteやWantedlyを軸にした記事コンテンツの情報発信が当たり前に。また、企業や事業について数十枚のスライドを用いて説明する、採用ピッチ資料が話題になったのもこの頃です。
この頃に、実名顔出しでTwitterをやる人事が増えて、ソーシャルでの発信がより活性化していきました(たしかFacebookのアルゴリズムが変わって、企業の告知が拡散されづらくなり、人事がTwitterに流れてきた記憶があります。うろ覚えな記憶)。
コンテンツ
・記事(自社ドメインのオウンドメディア、note、Wantedlyなど)
・ピッチスライド(Speakerdeck/SlideShareなど)
Twitter・Facebookなどのソーシャルシェアによるディストリビューション。特に人事の、実名顔出しの個人アカウントTwitterによる発信増加。
代表的な事例
SmartHR社・ミラティブ社のピッチスライド
事業やプロダクト、組織カルチャーについての説明はもちろん。給与グレードについてもオープンにしたことで「ここまで公開するの!?」と話題に。ここらへんから、社外に情報をオープンにしていくのが当たり前になってきた印象です。
ナイルの取り組み
「ナイルのかだん」をリリースしたのもこの頃(2018年7月)です。当時は、私がWebコンサルから人事に異動したばかりで、採用業務と兼任しながら月1−2本の記事を作っていました。記事本数やPVは目標におかず、面接前辞退率や内定承諾率などの選考歩留まりが改善されるのかを目的に取り組んでいました。
「採用広報」浸透期(2019年-2020年)
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この時期の特徴
ブログ記事型のオウンドメディア運営はもはや当たり前に。記事以外にも、動画や音声、インフォグラフィックスなどコンテンツバリエーションが多様になってきたのもこの頃です。
特に大きかったのは2020年3月、コロナによって採用活動の前提が変わったこと。それまでのように来社して対面で会社の雰囲気を知ってもらうことが出来なくなり、オンラインでいかに会社のことを理解してもらうのかを各企業が考える必要がありました。
テキストだけではなく、動画や音声などより対面・リアルに近い情報が伝わるように、コンテンツもリッチ化していったと考えています。
コンテンツ例
・カルチャーデック
・issue採用
・オープン社内報
・その他You Tube動画やラジオコンテンツ
など、コンテンツバリエーションが多様に。
代表的な事例
SmartHR社『オープン社内報』
社内向けの情報を、社外に対してもオープンに発信。コロナウイルス感染症への対応やリモートワーク制度など、当時各社がどう対応するのか判断に迷うさなか、いち早く対応をきめて情報公開していた印象があります。
プレイド社『issue採用(現在クローズ)』『issue club』
募集ポジションではなく、issueありきでの採用募集。解決したい課題(issue)をオープンにし、難易度の高い課題解決にワクワクする人を惹き付ける取り組み。
ユーザベース社『Connect』
すぐに転職につなげようとするのではなく、雇用形態にとらわれず、企業に興味をもってくれる方とゆるく、中長期的につながる取り組み。
Ubie社『カルチャーガイド』
0→1フェーズの「開発」と、1→100フェーズの「拡張」で組織を分化し、ユニークな組織づくりをしているUbie社。独特なカルチャーだからこそ、目指す世界観や求める人物要件などを細く明文化し、社外にも公開することで、採用ミスマッチを防ぐことにもつながっているように見受けられます。
ナイルの取り組み
Twitter道場:現場主体でのTwitter発信。採用目的ではなく、コンサルタントや編集者のマーケティング力アップを目的に始めた取り組みでしたが、求職者の方から「社員のツイートみて共感しました」といった声をもらえるようになりました。
データドリブン:採用オウンドメディア、コーポレートサイト、採用サイト、ATSを連携して、サイト間の遷移データが取得可能になったのはこの頃。サイト間の遷移率や、LPスクロール率などのユーザーデータから、逆算した目標設定ができるように。
「採用広報」現在(2021年-)
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この時期の特徴
人事主体から、現場主体のスクラム型採用へ。
人事・広報主体ではなく、エンジニアやデザイナー、マーケターなど、現場主体での採用発信が当たり前に。発信者の主体が明確に変わったことが、ひとつ採用広報において大きな変化だと考えています。
コンテンツ
コンテンツの種類もいろいろ。情報発信(コンテンツディストリビューション)は全社員がやるのが当たり前に。
代表的な事例
具体的な企業事例というよりは、現場主体の発信を加速させたサービス2つの紹介です。
Meety『ウラ凸』
カジュアル面談を再定義したMeety。事業やプロダクト開発、組織づくりに個人のキャリアなど、現場社員起点でさまざまなテーマでのカジュアル面談が作られており、聞きたい話を選べる、社長やCTOなど直接話を聞きたい相手を選べるというのは、求職者起点な考え方のもと設計されています。
YOUTRUST
友人やその友人など、信頼でつながるキャリアSNS。脳内メモでのゆるい投稿は、一定クローズドなSNSだからこそできる、Twitter以上、note未満の絶妙なポジショニングをとっているように思います。
MeetyやYOUTRUSTに共通しているのは、社員による発信ハードルを下げたこと、社員のつながりを媒介として情報伝達できること、副業採用なども含めて、転職活動前ではあるが一定採用可能性の高い潜在層にリーチできるチャネルであること、あたりでしょうか。
ナイルの取り組み
採用マーケティングや採用広報の本格化。認知や露出量を計測するように。施策としては、KARTE for HRを使った接客、Google広告やTwitter広告によるコンテンツディストリビューションにチャレンジ(詳細な取り組み結果は、また別の機会でお話します)。
まとめ
以上、2018前後〜2021年現在までの採用広報の変遷についてまとめてみました。
「採用広報」の時代変遷
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ナイルの採用広報変遷
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改めて、色んな企業の事例を取り上げてきましたが、これが正解である!これをやればうまくいく!というものではありません。
自社の採用スタンスや、企業のフェーズ、世の中の流れによっても採用広報の在り方は変わっていきます。いつの時代も変わらずに考えるべきこととしては、常に求職者起点で考えること、トレンドに流されるのではなく目的志向をもって取り組むことです。
今回の記事が、採用広報に取り組んでいくうえでなにかヒントになれば幸いです。自分も、各社さんの取り組みに学びながら、今後も試行錯誤していきます。
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PR Tableさんのイベントにでます。『ナイルのかだん』の記事の作り方やKPIの変遷についてお話する予定です。少し遅いランチタイムのおともにぜひ参加していただけるとうれしいです。
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